♪知らない街を歩いてみたい、どこか遠くへ行きたい…… 人は『遠くへ行きたい』の歌詞のように、どこか知らない場所に行ってみたいものだと思います。しかし、遠くに行くのには時間もかかるし、交通手段も必要ですからなかなか希望通り遠くへはいけないものなのです。
自分の住まいから近場でも意外に足を踏み入れていない場所が結構あるのです。ちょっとした小道であったり路地であったり。たったそんな場所を通るのも新しい発見です。マドンナの映画で2000年制作とちょっと古いのですが『2番目に幸せなこと』で、ヨガのインストラクター扮するマドンナが、クラスを終えて筋肉痛をうったえる生徒に「今まで使っていない筋肉を使えておめでとう!」と言うシーンがあるのですが、その台詞の新鮮さに驚いたことがありました。
だから今まで使っていない…..と言うか見ていない風景をみることも『おめでとう』に値するのではないでしょうか。
私自身そう感じたのはごく最近アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンがニューヨークに住んでいた住まいがあることを知ったのです。ハーレム近くにワシントンハイツと呼ばれる地区があり、ドミニカ人とその子孫の多いスペイン語が飛び交う場所なのですが、今までなぜそこがワシントンハイツと名づけられているかも意識したことがありませんでした。
マンハッタンでこのような一軒屋が高台に建ち18世紀の建物が今も現存しているのです。
アメリカ独立戦争時の1776年にワシントンはイギリスが攻め込んでくることを予想してニューヨークへ移動します。この邸宅の裏側に渡り廊下風の家屋が続いていますが、その2階の狭い部屋がワシントンのベッドルームでした。ベッドルームの入り口にはプレートがあり説明がありました。
『1776年の9月14日から10月21日までジョージ・ワシントンはこのベッドルームを使用しました。10月に入りウエストチェスター(ニューヨークの郊外)に移りました。身の回りのものはこちらに置いていきましたが、7週間後に英国にマンハッタンを占拠されました』
この住まいはMorris-Jumel Mansionと呼ばれ入館料は5ドルと良心的な値段です。写真の玄関ドアから入るのですが、先ずノックします、そうすると初老の飾り気のない女性が無愛想にドアを開けてくれます。この無愛想さにも味があり、すぐさま「入館料は5ドルですから、ここで払ってくださね」とつっけんどんに言われます。
私自身ニューヨークの名所や美術館等は殆ど行ききっていると自負していましたが、まだまだ甘い、そしてマンハッタンはまだまだ奥が深い。
ニューヨークは観光都市です、そして観光地に人は集中しますが、私は入館者が一桁しかいなかったこの歴史的建造物をお訪ねになることをお薦めしたいです。マンハッタンでありながらこの一画はまったくそれを感じません。それになにより無愛想だけど、本当は心優しい邸宅番の女性と一期一会してみるのも旅の副産物になるのではないでしょうか。
Morris -Jumel Mansion
水・木・金・土・日 朝10時から夕方4時迄 (月・火は予約された人のみ) 入館料5ドル
65 Jumel Terrace, New York, NY 10032 Phone (212) 923-8008
画像: from flickr YAHOO!
http://www.flickr.com/photos/dockphotos/3721744307/sizes/m/in/photostream/