世の中やっぱりカネで動く? 売れそうなのに資金を集められなかったKickstarter製品3選

『Kickstarter』といえば、世界最大のクラウドファンディングサービスである。

このKickstarterの特徴は、「総取りかゼロか」という点だ。たとえば、資金調達キャンペーンの目標金額を1万ドルに設定する。それを期限内に世界中のユーザーから集めるわけだが、たとえ期限終了の時点で集まった投資が9,999ドルだとしても、それは「目標未達成」だから企画立案者は1ドルも受け取ることができない。

クラウドファンディングって、ものすげぇシビアな世界なのだ。

当然、Kickstarterに出展されるプロジェクトは成功するものよりも失敗するもののほうが多い。ところが、中には「どうしてこんな素晴らしい製品に資金が集まらないの?」というようなパターンも見受けられる。

というわけで、今回は「需要はありそうなのにウケなかった製品3選」をご紹介しよう。

1.リアルボクシングゲーム『Jabii』

「実際に身体を動かすコンピューターゲーム」というものは、ファミコン全盛期から存在した。

要は自らの肉体をコントローラーにするという発想である。Kickstarterに出展された『Jabii』も、そうしたコンセプトに基づいて開発されたゲームだ。

これは伸びるマジックハンドを使ったリアルボクシングゲーム。プレイヤーの動きとスマホアプリのキャラクターが連動するというものだ。マジックハンドのパンチが相手にヒットすれば、それに応じたダメージがキャラクターに加わる。

PR動画を見ても、結構面白そうだ。大人と子供の間で実力差が開かないゲームだから、親子で楽しむこともできる。そもそもこのJabiiは、外で遊ばない子供を見かねたお父さんが開発した製品だ。

これって、日本でも売れるんじゃね? そう思っていたら、キャンペーンの締め切り69時間前の時点で集まった資金は7万クローネ(約120万円)ほど。Jabiiの目標金額は、50万クローネ(約870万円)である。7分の1にも届いていない、ということだ。

これは恐らく、目標金額が高額過ぎたことが原因ではないか。Jabiiは2人分セットで701クローネ(約1万2,000円)という設定の出資枠を設けていて、これにはそこそこの数のユーザーが関心を示していた。

だが、結果的には失敗した。しかもよく見ると、製品の発送が来年7月からと表示されているではないか。今年ではない。製品の実用化までまるまる1年かかる、というわけだ。

開発にそれだけの時間が必要なら、クラウドファンディングではなくベンチャーキャピタルから融資を受けたほうがいい気がする。Jabiiは資金の調達元を間違えたのかもしれない。

2.愛犬の身体能力測定デバイス『Bringy』

さて、次にご紹介するのはペット用品である。

『Bringy』は愛犬の身体能力を測定するスマートボール。犬にとってボール遊びは運動の定番だが、ボールの中に電子機器を組み込むことによって犬の走行スピード、歩幅、ジャンプ力などを計測するというスグレモノだ。

LEDライト搭載で夜間は発行させることができ、さらにはシグナル音を鳴らすことも。もちろんそれらの操作は、スマホを介して行う。今の時代、どんなものでもスマホ連動が求められる。

これは流行る! と筆者は考えていた。アニマルシェルターを運営する知り合いにも意見を聞いてみたが、その際に「これはすごい。ぜひ買いたい!」という前向きな返事を得た。値段も45ドル(約5,100円)と、決して高価なものではない。

ところが、Bringyの目標金額7万6,000ドル(約860万円)に対し、集まったのは残り期限8日の時点で5,400ドル(約61万円)。10分の1以下だ。

PR動画の出来は決して悪くなく、出資者への発送は今年中。だがこの製品も、目標設定が高過ぎたのだろう。ユーザーは残り期限とパーセンテージでそのプロジェクトの良し悪しを判断する傾向があり、その視点からBringyは「人気のない製品」と思われた可能性がある。

もし目標金額を半額に抑えていたら、パーセンテージを示す緑の棒グラフはより見栄えよく伸びていた。そうした視覚効果というものは、決して馬鹿にはできないのだ。

3.新型レジャーボート『FINPO』

最後は海上のレジャー用品『FINPO』をご紹介しよう。

これは今までにない形のボートである。見た目はサーフボードのような形状だが、使用者は立ちながらFINPOを操作する。船体にあるバーをキコキコ動かせばFINPOが前進する、という仕組みだ。

上半身のフィットネスにもなるし、何よりこのボート自体の安定性は抜群、らしい。新しい海上レジャーとして、FINPOは広く受け入れられる可能性がある。

だがしかし、いかんせん資金が集まらない。

FINPOの目標金額は4万ユーロ(約510万円)だが、期限残り3日の時点の出資額はたったの22ユーロ(約2,800円)。しかもその22ユーロは、たったひとりのユーザーが募金のように投じたものだ。地球上の誰ひとりとして、製品入手に動いていないということである。

ただこれは、やむを得ないことだと筆者は考えている。原因は恐らく、製品価格だ。Kickstarterのキャンペーン向け価格でも、1,999ユーロ(約26万円)という設定である。

はっきり言って、高過ぎるぞ。それだけ金を取るんなら、小型の船外機くらいつけてくれ。

製品そのものは悪いものではないのだから、せめてもう少しプライズダウンの努力をするべきではと思ってしまう。いかがだろうか。

こうして「資金調達に失敗した製品」を並べてみると、クラウドファンディングの世界の「厳しさ」というものがよく分かる。

クラウドファンディングは、キャンペーン開始から3日で目標金額の20%を達成するかしないかが試金石になるという。だから、あまり目標金額を高くしてしまうと成功のチャンスを逃してしまうのだ。

製品の良さだけでは、クラウドファンディングで資金を調達することはできないという現実がある。

【参考・動画】
JABii – The Friendly Boxing Game-Kickstarterリンク
Bringy: a smart ball for smart dog owners-Kickstarterリンク
FINPO Waterglider-Kickstarterリンク

澤田 真一

フリーライター。澤田オフィス代表。主にASEAN経済情報などを各メディアで手がける。

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