『Twitter』上で話題沸騰となった、“サザエBOT”運営者の“なかのひとよ”初主催の展示会『ブラックボックス展』が、5月9日から6月17日の間、六本木のアートギャラリー“Art & Science Gallery Lab Axiom”で開催された。会期終了までは展示内容を原則「口外禁止」とされ、自身の感想を書き連ねた多くのツイートが、謎に謎を呼び大きく話題を呼んだ。最大5時間並んでも、入場直前に立ちはだかる「選別」によって入れない人も続出したという『ブラックボックス展』を実際に体験してきたのでレポートする。
そもそもサザエBOTって?
“サザエBOT”は、2061年にやってきた「未来人」と称する“なかのひとよ”が中の人を務めており、ウェブサービスを活用した多くの市民参加型イベントを実施している。炎上や批判も絶えない注目の存在である一方、オーストリアのメディアアート賞『Prix Ars Electronica 2016』で優秀賞に選出、『TEDxTokyo』をはじめとする国内外のカンファレンスにも登壇。
恐怖? 孤独? 安心感? 不可解な感想ツイートが展示内容を妄想させる
「その場に座り込む人がいた」「孤独と恐怖を味わったのは初めてで、でも不思議と安心感があった。」など、『ブラックボックス展』について、さまざまなツイートが投稿された。人によって書いていることがまったく異なる感想が、ひたすらに興味をそそる。
いざ『ブラックボックス展』へ! 余裕を持って臨んだが
開場時間よりも前に訪れたが、既に多くの人が並んでいた。最終日は最大5時間の待ち時間だったという。その混雑具合は、“なかのひとよ”のツイートで見ることができる。
<残り2日>
本日の #ブラックボックス展 も大変な混雑が予想されます。くれぐれも待機中に二列以上で並ぶ行為・騒ぐ行為はお控え下さい。なお、行列対策として本日もアルテマレベル・マイナーアップデートが行われます。これから並ぶ方は「濡れても良い格好」でのご来場をお勧め致します。 pic.twitter.com/C1xXUqkRjg— なかのひとよ (@Hitoyo_Nakano) 2017年6月16日
もともとは無料展示だったが、連日行列が続いたため最終週では1000円の入場料が取られたり、入口の前で大柄の男が、参加者が入場可能かどうかを決定する「選別」を行っていた。
「選別」をくぐり抜け、ついに展示会場の中へ
筆者はなんとか展示に入ることに成功。展示会場で内容を口外禁止とする誓約書にサインをして、2階の展示場所へ向かった。入口には黒いカーテンが垂れており、カーテンの前にはスマートフォンのカメラ部分に貼るための黒いシールが置いてあった。シールを貼り、カーテンをくぐった先の部屋は“まっくら”だった。
まっくらな中を突き進むと……?
目を凝らしても何も見えないため、壁を探すことにした。壁を見つけるまでに他の人と何度かぶつかってしまい、「すみません」と声をかけながらやっと壁を見つけ、展示会場の奥へ進んで行った。
壁を叩いてみたが特に何か展示物がかかっている様子もなく、不思議がっていたところ、入口から人が入ってきた。わずかに光が漏れ、展示会場の中が全て見えた。小さなギャラリーの中に人が動いているだけだった。そこでハッと気付いた。
展示物などない。つまり、『ブラックボックス展』は、名前のごとく「まっくらなだけ」だったのだ!
『ブラックボックス展』のカラクリ
黒いカーテンから出てきた後に、ネタバレをしてはいけないが、感想や嘘のネタバレなら書いてもよいと記載されたカードを渡された。
ツイートの内容が人それぞれだった理由は、このカードの指示があったからだ。みんなのツイートでどんな展示か気になり、列に並び、実際の展示を体験し、また体験者がツイートする……。そのループがどんどん大きくなり、まっくらなだけの展示に最大5時間もの行列を作った。“サザエBOT”の今まで起こしてきた珍事を思い返すと分かるように、我々は“ウェブ上の情報”にまんまと踊らされたのである。
最後に
今回の『ブラックボックス展』に対して賛否両論が巻き起こっているが、「なんでも検索して答えが分かる時代」だからこそ、この展示はとても意味のあるものではないだろうか。日々接している情報というものがどれだけ脆く、危ういものなのか、改めて考えさせるきっかけを“なかのひとよ”は気付かせてくれたと考える。
画像:『Twitter』より引用
https://twitter.com/Hitoyo_Nakano/status/875529210856587265
執筆:シジミ
※編集部注
この原稿は6月20日に執筆されたものです。