1972年に亡くなるまで”トロンプ・ルイユ(騙し絵)”を追求し続けたオランダ人画家、マウリッツ・エッシャー。没後50年近く経ちましたが、彼の描いた物理的に建築不可能な構造の建物などのトリックアートは今も多くのアーティストやクリエイターに影響を与え続けています。
2014年にiPadでの『Apple Game of the Year (アップル・ゲーム・オブ・ザ・イヤー)』と『Apple Design Awards(アップル・デザイン賞)』をダブル受賞した『Monument Valley(モニュメントバレー)』(以下、前作)も、エッシャーの影響を強く感じるパズルゲームです。トリックアート的ギミック(仕掛け)がステージ各所で待ち受けています。プレイヤーはハンドルを回して建物の角度を変えてみたり、スイッチを押したり、建物をスライドさせたりしながら各ステージをクリアしていきます。
“3000万ダウンロード”を記録した前作から3年。続編となる『Monument Valley 2(モニュメントバレー 2)』(以下、本作)が、先日行われたWWDC 2017におけるAppleの公式発表と同時にAppStoreにて配信開始となりました。価格は600円。Android版も近日配信予定とのこと。
前作では主人公の“Ida(アイダ)”が自分が誰なのかを探し求める孤独な旅路の物語でしたが、本作では母親の“Ro(ロー)”が娘にモニュメントバレーの神秘を教えていく母娘2人の物語となっています。登場人物が2人となったことで母と娘が協力してパズルを解いていく点が前作との大きな違いとなります。ステージによってはどちらか1人だけ操作可能だったり、2人同時操作が必要だったりします。インタフェース、操作性、アートデザインはミニマル(最小限)なものとなっていますが、キャラクターが2人になったことによるギミックの難易度上昇など、パズルのステージ設計は相変わらず綿密に練り込まれたものとなっています。
Monument Valley 2 – Official Release Trailer – out now(YouTube)
https://youtu.be/tW2KUxyq8Vg
パズルを解いていく基本操作ですが、画面をタップしての移動、画面をホールドして建物を回転、建物のスライドの3通りとなります。トリックアート的ギミックは前述の3通りの操作をすることで、突然新しい通路が開かれたりします。プレイヤーの直感的なひらめきも大事だったりします。日本のゲームにありがちな長々としたチュートリアルは用意されていませんが、ゲーム開始直後に非常にわかりやすいチュートリアルがあるので遊び方の基本を理解するのにとまどうことはないでしょう。
開発元はustwo Gamesですが、親会社のustwo(アストゥー)は、ロンドンで創業した後、ニューヨーク、シドニー、スウェーデンのマルメに拠点を拡大。現在では、社員の国籍が30か国にのぼる多国籍企業で、“ゲーム会社”ではなく自らを“デジタル・プロダクト・スタジオ”と名乗っています。平たく言えば、デジタルに特化した多国籍デザインスタジオということになるのでしょうか。伝統的な“ゲーム会社”の文法に縛られる必要性がないからこそ、世界中で高い評価を受けているアートデザイン、ギミック、キャラクターデザイン、インターフェイス、色彩美、効果音やBGMのサウンドなどが一体化した心地良い世界観を完成させることができたのかもしれません。
Monument Valley 2 – Behind the scenes – Part one(YouTube)
https://youtu.be/6gzygG3MTgk
日本語字幕はありませんが、上の動画では開発裏話を紹介しています。
パズルゲームが好きな人は勿論、トリックアート、ミニマルデザインなどに興味があれば楽しめるゲームアプリではないでしょうか。例えるなら“職人が丹精込めてネタを仕込んだ新鮮な江戸前寿司”のようなゲームアプリと言えるかもしれません。
Monument Valley 2 AppStore [リンク]
(C)2017 ustwo Games Ltd
※画像:
ustwo Press Kit
https://www.youtube.com/watch?v=oaqHdULqet0
※ソース:
ustwo Press Release
https://www.advertimes.com/20161216/article240861/