例えば”防犯カメラ”を”監視カメラ”と言われると、ちょっと聞いた印象が変わってきます。”防犯カメラ”だと我々を防犯してくれる心強い味方ですが、”監視カメラ”と言われると、なんだか監視されているようで敵のような気になってしまいます。
言い回しって大切ですよ。
”鈍感”でもそれを”大らか”とも言えますし、”肥満”でも”ふくよか”と言ってあげることもできますね。その後「女性は痩せすぎよりちょっとふくよかの方がいいよね…」なんて言ってあげると、女性の気分を良くすることもできるのです。
この言葉の言い回しがきちんと出来ると人間関係がスムースになるし、それゆえ人生でわずらわしい人との諍いを極力避けられます。
それで、先日『おぅ….』と心の中で感嘆の声をあげた張り紙を見つけたのです。それは我がアパートにあるジム入り口の掲示板に張られていたのですね。写真のジムは我がアパートのジムで、広いフロアーに他3つ部屋があります。高級アパートのジムは住人のため無料で開放されていますが、庶民的な住まいの我がアパートは使いたい人は年会費を支払って、メンバーシップカードを兼ねたカードキーを渡されます。そのカードキーでジムに出入りするのですが….
世の中には悪い奴がいるんですよ。ジムの会員にもなっていないのにジムのドアの前に立っていて、メンバーが来たら一緒に後をくっついてジムに入ってくるとか、酷い人は外からドンドンと大きな音でドアを叩くんですよ、ノックなんておとなしいものじゃないんです。最初の頃、私は反応して相手がメンバーでないのはわかっていても開けていましたが、内心不服でした、そんな親切ぶる自分が嫌でした。
程なくして、そんな無神経なドアのドンドンを無視するようになったのですが、ジム内の親切な方がそのドンドンに反応してドアを開けてあげているぅ!
国連に近い我がアパートはいたるところに”監視カメラ”があります。この場合は防犯より監視カメラの方が使い方は正しい気がしますが、その監視カメラに年会費も支払わずジムを使おうとする奴はしっかり映っているのです。でも、無神経なズルい奴はおかまいなし。
私はずっとイライラしていました。だって、ジムで運動を終えてドアを開けた瞬間に待ち人がいる!ドアを締め切る間に中にすんなり入ってしまう!こういうやり方もあるのだ、悪さをする奴はいろいろ考えておるぞと…..
さて、それを解決する告知を掲示板の張り紙に見つけたのですね。そこに書かれたタイトルは Security and Safety。
如何ですか?警備と安全を表題にして、「ノックをする人がいても、ドアは開けないでください。このジムはメンバーにそれぞれカードキーが貸与されています。それゆえカードキーのない者をジム内にいれることは警備上問題がありますし、安全性が保たれません。何か問題が生じたらロビーにご報告ください」とあります。
私なんて『会費も払わずして、人の目を盗んでジムに入り込もうとする不届き者、卑しい奴ら、許せん!』という気持ちが渦巻いていましたが、まさか張り紙にそんなことを書いていたら、なんと無粋なことでしょう。
芸能界でもずっと人気を保っている芸人、女優・俳優、またアナウンサーや、身近では職場や学校で人から一目を置かれる人たちって、結局、きちんとした言い回しが出来ている人たちなんですよね。人に嫌な印象を与えないし、勿論人を傷つけない、マイナス事項ですらそれをポジティブに転換できる語彙力。
言い回しというのは、いわゆる表現法でもあるのですが、何もええかっこしい的になるのでなく、相手によりよく伝える手段だと思うのですね。言い回しの極意は、角を削り表現法を丸くするものだと思うのです。
だって、ジムに年会費も支払わずに入ってくる者を”不届き者を排除する”と言ういい方でなく、ジムメンバーのための”警備強化と安全(防犯)”のため入れないでくださいなんて、とてもスタイリッシュ!
よし、言い回しをきちんとこなしてスタイリッシュな生き方を目指したいものです。
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