ソファーに体を預けて楽な体制で電話をしていた。しかし、会話の途中で話題が変わりあまりにも劇的だったので、天井をみつめながら口をポカ~ンと開けた状態で話を聞いていた。
電話相手の友人は黒人女性。ニューアークという隣のニュージャージー州に住む。この地の治安はあまりよろしくない。ニューヨークからだと電車一本で行ける。駅前は比較的開けており、パナソニックのアメリカ本社もニューアーク駅前にある。もともとパナソニックは同じニュージャージー州のシコーカスという場所に本社があったが、10数年前だろうかそこらあたりにニューアークに移転してきた。駅前は一般的な都市機能を兼ね備えているようにみえるが、メインストリートを10分程進むと、辺り一帯急激に地価が下がってくるのがわかるし、ビジネスマン風の人たちはいなくなる。
もし、私が政治家やコメンテイターであったりしたら、きっと叩かれるであることを書く。その点、無名人の自由さがありがたいのだが、これが本当のことなので現場の声として知っていただければと思うのだが、黒人居住区は治安が悪いとされていて全米の犯罪都市と言われる場所は黒人居住の比率が高いのだ。ニューアークも黒人の居住比率が高く、実際行ってみるとわかるのだが、住宅街の舗道のコンクリートが割れていたり、ゴミが落ちていたりと決して素敵ではない。
さて、友人と電話で話して驚いたことは、友人の男友達が落ち込んでいるという。ニューアーク住まいの友人の友人が最近銃で殺されたという。そしてその友人の友人はアメリカンフットボールを学生時代にしていたそうだが、部活の仲間が最近銃で自殺したという。実はその友人の友人も10年ほど前、ニューアークの銀行のATMで強盗に襲われ銃で発砲され視力を失い、写真で見る限りサングラスをしているので障害者には見えないが、事件以降光を失った。
アメリカって恐ろしいと思った。たまたま私の親友が黒人女性で、日本人社会と違う世界を友人を通して知らされたからわかることだが、もし、友人と知り合っていなければ、このような銃に関わる問題はまさに他人事でしかなかったかもしれない。
私自身はマンハッタンのミッドタウンの国連のすぐ近くに住んでいるので、治安はとても良いし、夜中に出歩くことはないが、もし出歩いたとしても犯罪に巻き込まれることは少ないと思う。国連近くには世界各国の領事館があるため警備も厳しく、イスラエル領事館が入っているビルの前には一人だけ入れるような昔の電話ボックスサイズの日本でいう交番のようなものもあり、国連近辺の治安は驚くほどに良い。今まで一度も危ない目に遭ったことはない。
だからこそニューアークに住む友人を訪ねることでアメリカを知ることが出来るし、また友人の友人の話を聞くことで、いかにアメリカの銃の犯罪が多いか、それが身近であるかがわかる。
アメリカってなんだか良いイメージがあると思う。確かにそうなのだけれど、日本から観光でアメリカに来る人たちには、観光地にしか目がないだろうから本当のアメリカを見る機会は少ないかもしれない。作家の曾野綾子氏が観光地を訪れるより、その国の恥部と言われるようなところを見る方がいいと言うようなことを仰った記事を目にした時、流石奥が深いと思った。
ニューアークの街から、違ったアメリカが見えてくる。ニューヨークからわざわざ1時間程時間を割いて行くような場所ではないかもしれない。しかし、もし機会があれば是非ニューヨークとニューアークの違いを見てほしい。まさに一字違いで大違いを体感するだろうし、ガイドブックに乗っていないアメリカを知ることになるだろう。それは綺麗な新品の星条旗はためくアメリカでなく、多少、ほつれのある星条旗がゆらめくアメリカのニューアークが見られるだろう。
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