ネットに流れる記事の信憑性やモラルが問われ、多くのキュレーションサイトを揺るがした『WELQ』の件を受け、『DeNA』は傘下の”キュレーションプラットフォームサービス”にあるキュレーションサイトの数々を公開停止にしました。
そして2016年12月7日をもって女性向け総合サイトである『MERY』の記事も非公開にする事を発表し、『MERY』のユーザー達に大きな衝撃を与えています。
これら一連の流れを受け、いくつかのキュレーションサイトが公開を停止する事態になっていますが、驚いた事にキュレーションサイトの元祖とも呼べる大御所は閉鎖しない意向を明確に打ち出しました。
「嘘です。ぶっちゃけ全然、驚いていません。」
あそこは”画像の盗用などに関するクレームもガン無視する”と噂の鬼畜サイトなので、最後まですっとぼけて金儲けに励むと予想していました。
多くのキュレーションサイトが自サイトの記事を見直す中、何故この大御所は動じる事なく、閉鎖どころか逆に茶番とも思える”新方針”を打ち出したのでしょうか?
それは徹底的に管理された”利用規約”で自己を守る手段が確立されているからだと、筆者は考えます。
利用規約とは?
某まとめサイトに限らず、多くのキュレーションサイトなどには利用規約があります。無論、これはキュレーションサイトに限らずブログサービスを提供している所でも執筆に関しては同様の規約があります。
その中には”法令に違反する行為”の禁止、”当社または第三者の権利(著作権、プライバシー権など)を侵害する行為”も当然禁止され盛り込まれています。
ここまでは日本の法律で定められているので”当たり前”の事なのですが、さらに続く規約の意味を良く考える必要があります
当社に対する補償
利用規約の中身は大抵が常識の範囲内、ある意味当たり障りのないルールが書いてあるのですが、さらっと重要な事も書いてある点に注目です。そこら辺をザックリ書くと
「利用者が法令または本規約に違反して本サービスを利用したことに起因して、当社が直接的、間接的に何らかの損害、損失または費用負担を被った場合、当社の請求にしたがって直ちに賠償、補償してね!」
みたいな事も書かれています。つまり”まとめ記事”に関してクレームやらトラブルがあっても管理者は責任は負わないどころか、逆に書いた人が”キュレーションサイトの社会的信用の損失”や相手への賠償金も含めて支払えって事です。
訴えられてもキュレーター(書いた人)を切り捨てるシステム
と、言う事が利用規約に書かれている以上、そのシステムを利用して記事を投稿した人間に責任が全てあるのです。つまり画像やイラストの引用(盗用)などで訴えられても責任は全て記事を投稿した人間にあります。
そんな事を了承した覚えはないと言っても無駄でして、大抵は記事を投稿する前に「利用規約に同意して記事を投稿しますか?」みたいな事が送信ボタン等に書かれていて、逃げ道は完全に塞がれています。
無論、管理監督者である側が責任ゼロでいられるかは裁判の頑張り方次第ですが、個人が普通の弁護士を雇って”管理責任”を問うた所で、金を持ってる企業が裁判を長引かせたりしたら金銭面で裁判が続けられず最終的に負けると思うので、ほぼ逃げ切り確定だと思います。
利用者が未成年の場合、親権者にも責任がある?
また利用規約には未成年の場合、親権者などの同意を得る必要があると書かれています。つまり、貴方のお子さんが”漫画のまとめ記事”などを投稿して出版社から画像の使用権などに関して訴えられた場合、親権者であろう親に損害を賠償する責任が生じる可能性があるのです。
「ネットにあるモノは全て無料!みんなの共有財産!!」
みたいな認識のネット全盛期に生まれた子供が”やらかしてしまう可能性”は非常に高く、著作権と言う言葉すら理解出来ない子供達が”訴えられる危険”に晒されていると言っても過言ではありません。
ここら辺は”親権者に責任を負わせる”のでは無く、普通は”20歳未満の利用を禁止する”のが正解だと思うのですが、その手のサイトに常識を求めても無駄ですので、利用する側が用心するしかないのが現状です。
キュレーションサイトって結局どうなの?
キュレーションサイトの著作権問題、記事の信憑性などに危うさを感じた『DeNA』は盗用記事や公序良俗に反すると思われる記事を削除したとの事ですが、その数は一説によると全記事の8割、つまり80%の記事が”適切ではない”とされ削除されたらしいです。
これが事実とするならば、多くの記事は違法に盗用された写真や文章を多用していた可能性が高く、キュレーションサイトがいかに黒に近いグレーなのかを表す結果だと言えます。
裏を返せば80%の記事は訴えられたら”危ない”ので、先手を打って削除しまくったとなり、業界最大手とも呼べる『DeNA』が下した決断は”企業イメージを守る為に正しい決断をした”って言うよりは、”マジやべぇからケツまくった”と解釈出来ます。
と、なると画像や文章の引用、もとい盗用を訴えれた場合”やり手の弁護士を使っても盗用した側は負ける可能性が高い”と判断したと思って間違いないでしょう。
『MERY』の様な”金の成る木”は残そうと頑張ってみたものの、結局はリスクを考えて”公開停止”との最終決断を下したのですから、ある意味『DeNA』は余裕の無い選択を選ばざるを得なかったって事です。
キュレーターの人達、貴方は大丈夫ですか?
「今まで引用(パクり)しまくったけど何も起きなかったから大丈夫!」
と考えている人は、もう一度『DeNA』が手を引いた理由を考えてみましょう。もしも相手が本気で訴訟に踏み切った場合、大企業ですら裁判で負ける可能性が高いから”金の成る木”を諦めたのです。
もしも訴えられても裁判で100%勝てるなら、顧問弁護士を抱える大企業が”金の成る木”を捨てるはずが有りません。
裁判で勝てばグレーも白だったって事例が出来て、大手をふってキュレーションサイトで儲ける事が出来ますし、企業イメージも損なわれませんからね。
今後のキュレーションサイトの在り方
まずキュレーションサイトの存在自体がどうなのって話ですよね。某キュレーションサイトは過去の記事に関しても”見直す計画はない”と開き直っています。
無論、今は無いけど将来的には見直すって可能性もあるので、今の段階で結論付けるのは早過ぎますが、100%著作権を侵害している画像を含む記事の投稿者にペナルティーも与えず、違法な記事を量産してネットに流し続ける”管理者”ってどうなの?って思った筆者です。
2017年中にはキュレーションの質を向上し、著作権者の利益保護を目指すと発表しているのに、今までの記事を見直す事もせず、新規に上がる記事も”画像の無断盗用したモノがチラホラある”って駄目過ぎますね。
これは明らかに時間を引き延ばして稼ぐだけ稼ぎ、最後は利用規約を盾にキュレーターの首を差し出して逃げる算段と思われ、とてもキュレーションサイトをクリーンにする姿勢とは思えません。『DeNA』と言うライバルが抜けた今、彼らにとってはビジネスチャンス到来なのでしょう。
と、言う訳で”オリジナルコンテンツこそ至高”と思っている筆者ですので、「キュレーションサイトは全部消えてどうぞ!」ってのが本音ですが、ネットの反応を見る限りは
「MERYが見れなくなるとか超ショック!」
みたいな声が多いのも事実です。彼女、彼らには記事のオリジナリティーや著作権よりも、自分が欲しい情報が無料で手に入ればそれで良いし、どうせならサイトをいくつも回るよりも”まとめサイト”を利用した方が楽だぞって事でしょう。
ここら辺は『YouTube』で違法にアップロードされている動画を見てしまうのと同じ感覚かもですね。
ここら辺を全て解決するのは難しく時間も掛かると思いますが、まさに「悪価は良貨を駆逐する」が現実味を帯びてきて、今やキュレーションサイト同士でパクり合う末期状態に一石を投じた『DeNA』の行動は、大きな変化点になると思うし、なって欲しいと思う筆者です。
2017年、キュレーションサイトはどうなるのでしょうか?