こんばんわ。
ドラマ評論家の成馬零一です。
若干遅れてしまいましたが、今回もまた前期のドラマ総括と、今期のドラマ予想について書いてみたいと思います。
なお、今回はほとんどのドラマ作品の、第一話が終了していますので、一話の感想込みで、これからの予想をしていきますので、ご参考ください。
まずは冬ドラマMVP作品の発表です。
2012年冬(1~3月)ドラマ 今期MVP
最後から二番目の恋 ☆☆☆☆☆
小泉今日子、中井貴一が主演の大人のドラマ。このクールのドラマの中では明らかに地味だが、見れば病みつきになるバカ美味いチャーハンのようなドラマ。脚本は『イグアナの娘』『ちゅらさん』『銭ゲバ』『おひさま』等々、様々な作風で知られる岡田惠和。チーフ演出は『流れ星』『それでも、生きてゆく』の宮本理江子。
『それでも、生きてゆく』でも評価が高かった演技に特化した長回しを多用する演出はより先鋭化されている。 特に第八話の終盤は必見。小泉今日子と中井貴一が延々と口ゲンカして、唐突に終わる展開は、ドラマの会話表現の極北。役者同士の演技を楽しみたい方にはおススメ。
2012年冬(1~3月)ドラマ 今期MVP 『最後から二番目の恋』について
長さ: 83:26
http://www.ustream.tv/recorded/21381879
—————————————————–
続いて、それ以外のドラマについて。
http://d.hatena.ne.jp/narima01/20120408
長くなるので、各感想は割愛。(興味のある方はユーストを聴いてください)その中で、MVPには漏れたが、『ドラマ 私のホストちゃん~しちにんのホスト~』が面白かった 。
少人数で運営するホストクラブ・ヴァニラのホストたちの姿を描いた作品なのだが、『放送禁止』で用いられたフェイクドキュメンタリーの手法を完全にギャグのネタとして使っていたのがまず驚いた。
元々モバゲーをドラマ化したものなのだが、ホームページでホストの人気投票を行っていて、その投票結果がドラマにも影響するという展開がAKB48全盛の芸能界に対するドラマとバラエティの側からのアンサーに思える。演出・構成は鈴木おさむ。鈴木は、今までいくつかドラマの脚本を担当しているが、彼の持つバラエティセンスがここまで生かされた作品はこれが初めてだろう。そして何といってもクラブのオーナー、甘王の存在感。彼を生み出しただけでもこのドラマの価値はあったと言える。
他には深夜にアイドルドラマが増加して、それぞれ楽しかったが、中でも『さばドル』には好感を持った。
あらゆることがチープなのに、最終話で渡辺麻友が「シンクロときめき」を歌うシーンは、アイドルにファンが求める夢を体現していたと思う。最後に鉄板だが『カーネーション』も面白かった。
月~金(昼ドラ)
・鈴子の恋 ☆☆☆☆
月曜日
・ステップ・ファザー・ステップ ☆☆
・ラッキーセブン ☆☆
火曜日
・ストロベリーナイト ☆☆
・ハングリー! ☆☆☆
・タイトロープの女 ☆☆☆
・本日は大安なり ☆☆
・ティーンコート ☆☆☆
・家族八景 ☆☆☆
・ドラマ わたしのホストちゃん ☆☆☆☆☆
水曜日
・相棒10 ☆☆☆
・ダーティーママ ☆☆
・数学女子学園 ☆☆☆
・そんなのアイドルじゃナイン ☆☆☆
・孤独のグルメ ☆☆☆
木曜日
・聖なる怪物たち ☆
・最高の人生の終わり方 エンディングプランナー ☆☆
・デカ黒川鈴木 ☆
金曜日
・恋愛ニート ☆
・13歳のハローワーク ☆☆
・白戸修の事件簿 ☆☆☆
・撮らないでください グラビアアイドル裏物語 ☆☆☆
・さばドル ☆☆☆☆
土曜日
・理想の息子 ☆☆☆☆
・ミューズの鏡 ☆☆☆
日曜日
・運命の人 ☆☆
・早海さんと呼ばれる日 ☆☆☆
・妄想捜査 ☆☆
———————————————————————-
続いて春の新作ドラマについての第一話終了時点の感想です。
2012年、春(4~6月)の新作ドラマについて(視聴前)
長さ: 91:58
http://www.ustream.tv/recorded/21663031
月曜日
・ハンチョウ~警視庁安積班~ ☆☆
人気ドラマの続編。今までの関係性をリセットして佐々木蔵之介以外は一新されているが、基本的にはいつものハンチョウ。比嘉愛未が好きなので☆一つおまけ。
・鍵のかかった部屋 ☆☆☆
大野智、戸田恵梨香主演のミステリードラマ。演出がライアーゲームの松山博昭のためか、音楽の使い方が派手。謎解きよりも登場人物のリアクション自体を楽しむドラマ。今期のミステリーモノの中ではレベルが高いが、よくできた『ガリレオ』としか言いようがないのも事実。
・放課後はミステリーとともに (放送前)
主演は川口春奈と速水もこみち。『謎解きはディナーのあとで』の原作者、東川篤哉の同名ミステリー小説のドラマ化。
川口春奈の可愛さが生きれば楽しめるのでは。
・スープカレー ☆☆☆☆
TEAM NACSの五人が出演するオムニバスドラマ。総監督に『踊る大捜査線』の本広克行を迎えて、それぞれテイストの違うドラマ(脚本・演出がそれぞれバラバラ)がシャッフルして展開されることで不思議な持ち味を獲得している。今後次第では面白くなるのでは。
火曜日
・リーガル・ハイ ☆☆☆☆
よくある題材だが、古沢良太の脚本と堺雅人の怪演で頭一つ面白くなっている。 堺演じる弁護士の喋り方が早口なのだが、それだけで頭の回転が速い人に見える。『ソーシャルネットワーク』以降って感じ。
演出は『ショムニ』とか『HERO』でやってたような漫画的ポップさに割り切ってて、ベタベタした要素が少ないのもいい。
・開拓者たち ☆☆☆☆
満島ひかり演じる農家の娘が満州に渡ることから始まる怒涛の隊がドラマ。元々、BSプレミアムで放送されていたものが地上波で放送されている。NHKでは定番になりつつあるプログレッシブカメラの映像がよくて、満州の広大な土地で生きる人々の姿を描けている。無理に新作を見て疲れたくない人はこれとNHK教育で放送されている海外ドラマ『glee/グリー』を見ていれば鉄板。
・37歳で医者になった僕~研修医純情物語~ ☆☆☆
草彅剛演じる37歳の研修医が、旧態依然とした大学病院の慣習を変えていく話。 主人公の有り方を正しいものとして描いていることが見やすさでもあり、単調さでもある。 こういう民間企業に居た人が閉鎖的なコミュニティを改革していくという話は、ある種の定番だが、そろそろ利点だけでなく、弊害についてもドラマの中くらいは考えていいのではないかと思う。
水曜日
・コドモ警察 ☆☆☆☆
主演は鈴木福を筆頭とする子役たち。刑事たちが敵組織の秘密兵器で子供化してしまったという設定のドラマで、子役が大人のように振る舞う姿が笑いのツボとなっているのだが、子役の持つグロテスクさが明け透けになっていて、笑えるというよりはちょっと怖い感じになってる。 諸星大二郎の『子供の王国』が好きな人ならおすすめ。
・Answer~警視庁検証捜査官 ☆☆
観月ありさ初の刑事ドラマ。主演の観月ありさが刑事役をどうやるのかなぁと思ってたら、観月ありさそのままだったので驚いた。この人にはオン/オフという概念がないのかもしれない。 逆に高岡早紀はどんな役をやっても含みがある。
・クレオパトラな女たち ☆☆☆☆
美容整形の話だが、整形を肯定してるようでしてないような宙ぶらりんなまま物語が進むため緊張感がある。もしかしたら脚本家の大石静は、整形全肯定で迷いなしなのかもしれないが、主人公の佐藤隆太が迷ってるまま話が進むため両義的にみえる。これって単純にテクニックの問題かもしれないけど、ドラマとしてはそれが引きになってて、見てる間、こっちの価値観も試されるから目が離せない。演出は岩本仁志。淡々と進んでくから、じっと見ちゃう。どうなるか読めないので、続きが気になる作品。
木曜日
・パパドル! ☆☆
中山美穂が主演をつとめた『ママはアイドル!』のリメイク的作品。今芸能界ネタをやろうと思ったら、どれだけちゃんと固有名詞を出せるかだと思うのだが、その意味でAKBに拮抗できるのはジャニーズしかないとは思うけど、そのデータベースギャグがAKBに較べると不徹底に見えて、あんまり錦戸亮である意味が出てないような気がした。 演出がダサいというか、コメディだからこんな感じでいいだろうって感じも辛かった。 『家族のうた』もそうだけど、こういう題材だからこそ、もっとポップでドライにやってほしい。
・Wの悲劇 (放送前)
夏樹静子の同名小説のドラマ化。薬師丸ひろ子主演の映画版が有名だが、あれはかなり大胆に原作処理されているので、ドラマ版がどうなるかはまだ未知数。武井咲、剛力彩芽、福田沙紀というオスカー三人娘が総出演という意味では楽しみ。
・テンペスト ☆☆☆
池永永一の同名小説のドラマ化。「NHK BSプレミアム」で放送されていたものが、地上波で現在放送中。 最初は映像がチープかなと思ったが、琉球王朝を舞台にした政治劇が面白いので引き込まれる。主人公の真鶴を演じる仲間由紀江はいつもの仲間だが、それが男装して宦官として王宮に潜地込んでいるという人工性にうまくあってる。対する高岡早紀演じる真牛が欲望のままにいきる毒婦なので、対比構造が生きている。
・カエルの王女さま ☆☆
日本版『glee/グリー』という、無茶な移植がうまくいくかどうかが評価の争点なんだろうが、今のところ、『カエルの王女さま』がうまく勝負を避けて、日本的ローカルコミュニティのドラマとして作っている。ただ、その結果『glee/グリー』にあった差別や異文化衝突を明るく描くというコンセプトが失われてしまったのは当然の帰結なのだが。あと選ぶ楽曲が優等生すぎる。もっと下世話な曲を使ってほしい。大島優子の存在は相変わらずおもしろい。
・たぶらかし~代行女優業・マキ~ ☆
谷村美月の無駄使い。要求された水準に対して健気に応える谷村美月は素晴らしいのだが……。脚本はともかく、演出がそれを生かす努力をしているのかは疑問が残る。大事故にならないで、うまく切り抜けてほしい。
金曜日
・もう一度君に、プロポーズ ☆☆☆
奥さんや記憶障害になって旦那のことを忘れてしまうドラマ。一話は設定についての説明で、今後どう転がるかでラブストーリーになるか不条理ドラマになるかわかれるだろう。女優としての和久井映見は最近、旦那とうまくいかないで鬱屈を抱える主婦役が多いので、このドラマもそのバリエーションの一つとして楽しんでいる。
・都市伝説の女 ☆☆
長澤まさみが世界で一番かわいくてエロいと思ってる人だけが、参加できるドラマ。 ドラマの内容自体は都市伝説をモチーフにした刑事ドラマ以上のものにはなってない。
・クローバー ☆☆☆☆
『SRサイタマノラッパー』シリーズの監督を務めた入江悠が発の連続ドラマを務める。原作は高橋ヒロシのヤンキー漫画。バカレアとは違って映像として見栄えのするケンカシーンをどう撮るかを模索しているのが面白い。また、SRにもあった、不良たちの世界の裏に社会性が見えるのが入江悠らしいと言える。要注目作。
・恋するメゾン。Rainbow Rose ☆
KARAのジヨンが主演するドラマ。父親が浮気して家を出たために、下宿屋を営むことになった家族の話。日本人の俳優が何人か参加しているので、日韓合作ということなのだろうが、もうちょっと何とかならないのかというくらい脚本がデタラメで、登場人物の感情の流れを追うことができない。かといってコメディとして面白いわけではないという困った作品。
・D×TOWN ☆☆
D-BOYSと六人の映画監督が組んで贈るドラマシリーズということで、第一弾として青山真治が監督を務める「スパイダーズなう」が放送中。残念ながら暗くて地味なドラマ以上のものにはなってないが、今後次第では化けるかも。
土曜日
・三毛猫ホームズの推理 ☆☆☆
原作が赤川次郎のミステリーだから突出した何かがあるわけじゃないけど、全体にある女性不信のムードが面白かった。あとはホームズの本体役としてのマツコ・デラックスがそのまんまだが、異形性がよくて、彼女?が多分、大宮エリーの心の声なのかなとか思った。 ドラマ自体に漂う相葉雅紀を愛でつつも、追い込む感じが、どう生きるかがポイントか。
・未来日記-ANOTHER:WORLD- ☆☆☆☆
前作の同名漫画や、先行して放送されたアニメに較べると、フックが弱いがそれはドラマ版が設定だけ借りたオリジナル作品をめざしているからだろう。その意味で一話が地味なのは仕方ない。問題は今後どれだけ飛躍できるか。ただ台詞がテーマ先行なのか、いちいち「未来」「未来」と連呼するのは辟易した。テーマに引っ張られてゲーム性が弱くなるのではないかと不安要素は多々あるが、今期の中では一番意欲的な作品に思える。
・私立バカレア高校 ☆☆☆
深夜枠で定番化しているヤンキードラマ枠だが、ケンカシーンがうまい。最後にAKBの女の子たちが登場したことで、ヤンキー漫画と少女マンガが混ざりあったような奇妙な違和感が出て次回に続く。一つの作品の中に別々の世界観が出てきて衝突するのだろうか。意外なダークホース。
・あっこと僕らが生きた夏 ☆
ドラッカー的要素を抜いた「もしドラ」。難病の女の子の物語と甲子園に行く高校球児の話がリンクするとなんだか悲壮なものがある。川島海荷は顔の情報量が多いなぁとあらためて思った。
日曜日
・ATARU ☆☆☆
海外ドラマのテイストを持ち込みつつ、日本のドラマに落とし込もうという意欲は買うけど、演出や映像が地味というか『SPEC』と思ったら『新参者』だったって感じ。中居正広演じるチョコザイの設定は良いけど、今の状態だとちょっと変わった科学捜査モノって位置づけかな。サヴァン症候群の人が知覚している世界の見せ方次第で面白くなるとは思う。
・家族のうた ☆☆
『マルモのおきて』の橋本芙美がプロデューサーの疑似家族モノ。90年代末に活躍して、今は落ち目のミュージシャンの話としてみるとユースケ・サンタマリアとかト―タス松本が出てるのが面白い。特にト―タス松本がいい味だしてる。子供のパートはまだ保留だが、最後に子供とおじいちゃんがセットで現れるのは面白かった。毎週子供が一人づつ増えればいいのに。 オダギリジョー演じる正義が完全にパターンにしかなってないのがもったいない。何か世間がこういうもんだろうって思ってるロックミュージシャン像を安直になぞってるだけにみえるので、今後、ズラしていってほしい。
・クロヒョウ2 ☆
人気ゲーム『龍が如く』をドラマ化した前作の続編。試みや世界観は面白いのだが、格闘をカッコよく見せる演出がイマイチ。この世界観自体は好きな人なら。
朝ドラ
梅ちゃん先生 ☆☆☆
前作『カーネーション』が突出していたため、必要以上にけなされる不幸な朝ドラ。そこら辺は主人公の梅子の境遇と被る部分もあるのかもしれない。 茨城県に建てられたセットを活用したロケーションの映像は広がりがあり、映像の見応えはある。あとは梅子が医者になってから、どれだけ作品の世界観を広げられるかだろう。今のところ、その準備段階としてはうまくいっている。
雑感
今回は一話を視聴しての雑感なのだが、全体的に見て、これは傑作と断言できる作品がなかった。☆でいうと4つまではあるけど、5つにするにはためらうものばかり、世評では高い『鍵のかかった部屋』『リーガル・ハイ』『ATARU』も魅力的な探偵役を描くところまでは上手くいっているが、付随するドラマがどうでもいいので、最後まで面白くなるかというと心配。 その中で、必ずしも完成度が高いわけではないが、化けそうなのが『未来日記-ANOTHER:WORLD-』。元々『ライアーゲーム』『ライフ』を輩出したフジの土曜11時枠の復活第一弾なので、全体的に若いムードがある。ここ数年、新人育成をまともにしているのはフジテレビだけなので、うまくこの枠が回れば、新しい流れになるのではないかと期待している。 『未来日記』も含めて今期は深夜ドラマの方が活気があり、全体の完成度はともかく、面白いものが見れるのではないかと期待している。
本命 未来日記-ANOTHER:WORLD-
対抗 クローバー
———————————————————————-
以上、このような感じになりました。
ドラマ感想は定期的にツイッター、BLOG、ユーストにUPしていますので
よかったらチェックしてみてください。
それでは成馬零一でした。