「オケ老人」、塾講師の感想文
タイトルを見た時、
「これは、パス!」
と思ったけど、時間があったので映画館に足を運んだ。
私は「超」のつくオンチだし、中学校3年生のときに通信簿をオール5にしようとしたら、音楽だけがどうしても駄目で
「自分は音楽がダメ」
というトラウマがある。もちろん、楽器などやったこともないし、興味もない。
「ヴァイオリンなど、金持ちの道楽!」
としか、考えていない。
それに、基本的に「落ちこぼれ軍団の奇跡」式のストーリーはウンザリなのだ。塾講師だけでなく、スポーツであれ、音楽であれ、現実の落ちこぼれの生徒を見た人は
「あいつらは、カス、クズ」
と、思う人も多い。実際、怠け者で、粗暴で、頭が悪くて、人に迷惑をかけまくる子が多いのだ。
この映画でさえ、コンサートが開けるまでには、若者の参加や、有名フランス人指揮者の応援などがなければ、無理だった。
つぶれかけた電気店も、結局はライバル店の一角を借りるだけに終わった。
現実には「落ちこぼれ軍団の奇跡」などという夢物語は、ありえないんだよ。
ただ、さすがに一流アーチストの言葉らしく
「音楽好きな人に音楽を諦めさせるようなやり方は間違っている」
は、心に刺さった。本当にそうなのだ。
どちらかというと、私は悪役が演じていたスタンスに共感するし、そういう生き方をしている。
二流、三流の演技や演奏を見たい人など、いない。そんなチケットは売れない。
ただ、人間は複雑。「技術」だけでは人は動かない。
私は、英検1級や通訳ガイドの国家試験に合格した英語講師だ。ところが、実際の授業の8割は数学なんだよ。専門の勉強などしたことがない。「数学Ⅲ」なんて、勉強したことがなかったし。
40代から始めた。ゼロからの出発。高校生と一緒に京大模試を10回受けた。恥ずかしいことが多かった。
ところが、そういう一歩一歩の積み重ねから出た言葉や指導が生徒の心に響くみたい。
この映画は、一見の価値ありです。