SMAPがとうとう解散することになった。解散騒動は元々、ジャニーズ事務所のメリー喜多川副社長とSMAPチーフマネジャーだった飯島三智女史の対立が発端。対立といっても、メリーが一方的に飯島の功績を嫌って遠ざけていたのを、実娘であるジュリーとの派閥対立として週刊文春が面白インタビュー取材を敢行した際に、メリーがブチ切れたところから、噂レベルの話が実力行使の様相を呈していった。
ここで、飯島苛めを見かねたメンバーは事務所の一斉退社を検討したが、木村拓哉だけが頑として事務所残留を譲らず、メンバー間に深刻な亀裂が生じたと報道されている。ここでタイトルにある「1人の女」はメリーでもジュリーでも飯島でもない。木村に最初から二択の迷いを与えなかった強い力を与え続けた存在、妻である工藤静香のことを指している。
事務所の宝だった木村とすんなりできちゃった婚ができた工藤は、どう考えてもメリーの許可がなければ現在の地位を築いていない。それだけ結婚前に工藤はメリーに魂を売ることを誓わされたであろうことは、過去のジャニーズの行状から察して想像に難くない。
今回、解散決定に際しても木村家族とメリー・ジュリーが同じハワイで休暇中というのが、絆の強さをうかがわせるし、「寝耳に水」「欠席裁判」という印象操作をうかがわせるシチュエーションである。そもそも、メリーや木村が知らないところで解散発表するなんてことはありえないわけだから、発表時点でハワイにいること自体が、策略に満ちていると少し考えれば合点の行く厭らしさであり、狡さである。
ビートルズやBOφWYもまた、1人の女の存在が、メンバー間に決定的な亀裂をもたらし解散に至った。その過程は全く異なるが、いずれもメンバー1人の判断を狂わせ、他のメンバーに許せないという感情を生み出したという点で共通している。
ビートルズは、ジョン・レノンがオノヨーコをレコーディングスタジオなどメンバーだけの空間だった仕事場にまで帯同するようになり、他のメンバーから拒否反応が出たことで、ジョン・レノンは己の道を歩み始めてしまう。
BOφWYの解散理由は未だに確定されていないが、ドラムの高橋まことが自伝本で語ったところでは、布袋寅泰が当時付き合っていた(後に結婚し離婚)山下久美子のツアーにベースの松井常松と高橋も帯同させようと誘い、高橋が仁義を斬るためにボーカルの氷室京介に事情を伝えたところ、氷室が解散を決めたという。氷室は布袋について「子どもみたいなところがある」と評していたことがあり、後に今井美樹と不倫の挙句に離婚し、再婚した顛末を見ても、楽曲を提供した女性に入れあげてしまう癖があり、人気絶頂を迎えていたBOφWYは、バンドとしての高みに到達した瞬間に幕を下ろすことになった。
ビートルズもBOφWYもロックバンドである点でアイドルグループであるSMAPとは一線を画すものの、一世を風靡し時代の寵児となった人気グループという点では共通する。いずれも、天下を取ったその状態で解散する点も共通する。だからこそ伝説として歴史に名を刻むことができるという意味では、結果的に正しいタイミングなのかもしれないが、ファンにとっては苦痛に違いない。
守るべき女性を見出し、メンバーの1人がメンバーよりもその女性を優先する。そこから生じる歪み。人の価値観は年齢とともに変化していく。愛する人を見つけ、やがて結婚し、家族ができ、命に代えても守りたいものができていく過程で、優先順位は当然に変わっていく。若かりし頃に誓い合った仲間との絆も、自らの家族ができればそちらを優先し、波乱よりも安定、冒険よりも安住、ハイリスクよりもローリスクを選択する。
変化のチューニング速度はそれぞれ異なり、人によっては「あいつは変わっちまった」、人によっては「先々の自分たちを見定めろ」と相手の判断に疑問を投げかける。女性の存在が果たして、グループにとって最善の終わりを選択させたのか、或いは最悪の結末をもたらしたのか。それは歴史の評価に委ねるしかないが、当事者だけでなくファンや社会に癒えることのない傷を残すことは確かである。
しこりを残したまま袂を分かち、それぞれの道を歩み始める。おそらくいずれのグループも、メンバーの誰一人として心から納得して解散していない点でも同じではないだろうか。
ビートルズはその後、それぞれの才能をソロアーティストとしても発揮し活躍を続け、BOφWYもまた個々に輝きを放つ。それは、作曲を手掛ける才能がもたらした確かな実力に依るものであり、SMAPのメンバー全員が今後、同様に活躍できるか否かは個々の才能如何によるであろう。いずれにしろ、SMAPというブランドだけで獲得できた時代は終わりを迎える。