幾千の旅の思い出とともに! 品川で『青春18きっぷ』ポスター展開催中

  by プレヤード  Tags :  

私が初めて『青春18きっぷ』を使って旅に出たのは、高校一年の夏休みだった。
高校になってできた友達三人で、妙高高原、金沢、上諏訪と回っての三泊四日の旅だった。

それ以降、何度となく『青春18きっぷ』のお世話にはなっている。
時には一人で、時には友人と、思い出せないほどの旅の記憶が、この切符には刻み込まれている。

そんな『青春18きっぷ』のポスターを集めた展示会が、品川のキヤノンオープンギャラリーで開催されているとのことで、見に行ってきた。

中へ入ると、いきなり懐かしいポスターが出迎えてくれる。
確かに見覚えがある。今から26年前、1990年冬のポスターである。

それ以前にもポスターはあったようだが、この年からアートディレクターの込山富秀氏が手がけるようになり、あの独特の雰囲気を持ったポスターの歴史が始まるのである。

それ以降、年代順に古いものから最近のものへとの流れで展示されている。
『青春18きっぷ』が発売されるのは、年に3回(春・夏・冬)なので、実に70枚以上のポスターが展示されていることになる。

各々のポスターには、撮影時のエピソードなどが添えられており、それを読むと、一枚の写真を撮るのに、どれほどの苦労があったかがわかる。
まずは日本全国のどの線区の写真にするかを決め、ロケハンをし、(人が入る写真の場合は)モデルを準備し、そしてシャッターチャンスを待つ。

一日に数本しか走っていない列車を入れるなら、その一瞬を待つしかない。また、天候によってその表情はくるくる変わる。何しろ自然を相手にしているだけに、時には何日も待たされることもあったという。
そんな背景を知った上で見ると、また改めて、その美しさに感動を覚えるのである。

そうして順番に見ていくと、時代に応じてさまざまな取り組みをしていることもわかる。
1992年からの3年間は、『アラーキー』こと、写真家の荒木経惟が撮影を担当。モデルには当時アイドルであった木内美歩、井出薫、Melodyの田中有紀美などを起用し、少女の輝きと、旅情をマッチさせた独自の世界観をもったポスターが作られている。
(尚、この作品群は後に『旅少女』という写真集にまとめられた)

1996年と1997年には、写真ではなくイラストが使われいる。
当時から人気漫画家であった、桜沢エリカなどが、実際に旅行に行き、その思い出を描いたものだった。

そして、改めて見ていって感じるのは、キャッチコピーの秀逸さである。

「自分の部屋で、人生なんて考えられるか?」「『決められたレール』は、無いほうがいい」「窓を開けると、列車の中まで春になった」

使われた写真に合わせてつけられているのだが、普遍的な思いや、現場の情景が浮かぶような言葉がつづられている。
読んでいるだけで「ああ!旅に出たい!」という気持ちになってしまう。

そんなコピーも、近年には時勢を反映したものも出てくる。
2011年夏、震災の影響で、多くの地域で節電が叫ばれていた時は「家の冷房を消して涼しい日本へ旅に出た」
twitterが広まっていった2012年夏は「『きれいだなぁ』誰も聞いていないつぶやきも、いいものです」
恐らくこれからも、いろいろなコピーが生まれてくるのだろう。

一通りの展示を見終わって、自分が旅をしてきたような感覚を味わった。
それも、日本中の路線を巡った距離的な旅だけでなく、ポスターが作られ、そして自分も生きてきた“時間的”な旅もである。

最近は、忙しさにかまけ、ゆっくり電車に乗ることも少なくなった。
時には、こんなポスターの展示を眺め、旅の思い出にひたるのも悪くないだろう。

そして、一通り見終わった時、改めて思うことだろう。
「ああ!旅がしたいなぁ」と。

■東京写真月間2016 特別企画展:
 「青春18きっぷ」ポスター紀行-あの一枚が、あなたを旅人にした。-

 6月21日(火)まで、キヤノンオープンギャラリー1・2(品川)で開催
 http://cweb.canon.jp/gallery/archive/18-ticket/index.html

アイドル&美少女系ライター。 アイドルファン歴ももう30年。新旧問わずアイドルの魅力や素晴らしさを伝えていければと思っています。 モットーは「生涯一アイドルヲタ」「人生で大切なことはアイドルから学んだ」。 夢は、世の中の「アイドル」と呼ばれる人たち全てが幸せになることです。

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