とある田舎町で、8年前に誘拐事件に巻き込まれた僕(みーくん)と御園マユ(まーちゃん)
二人は、感動の再会を果たし、晴れて同棲生活を始めるのだが……
※本レビューでは、作品の内容にはあまり触れません。
みなさんが、ご覧になってこそのみーまーです。きっと、すべてを読み終えたあと、今までとは違った視点が得られていることでしょう。
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みーくんのことが大好きなまーちゃん。
まーちゃんのことが大好きなみーくん。
二人はバカップルと言えるほどに愛し合っています。
嘘みたいに。壊れたみたいに。
みーくんのこと以外見えないまーちゃん。だって、みーくんは絶対に自分を裏切らない。
理想の存在だから。
いつだって、私を分かってくれる。私の欲しいものをくれる。
だから、大好き。
でも、それ以外のものは嫌い。
みーくん以外の異性とは話したくもないし、自分の思ってるみーくんじゃないみーくんは嫌い。
だって、みーくんはみーくんなんだから。
まーちゃんのことが大好きなみーくん。
彼女のことが本当に大好きだから、なんでもできる。だって、彼女のためだから。
まーちゃんのこととなるとどんなわがままでも聞いてしまって甘やかしすぎているけれど、それも好きだから。
でもね、自分の名前はちょっと嫌い。だって、そんなものあるか分からないから。
自分のこともちょっと嫌いかもしれない。
だけど、せっかくあの真っ白な病棟を飛び出して、まーちゃんと一緒になれたんだから、彼女のためになんでもしないとね。ちょっと、やりすぎちゃって人を殺したりもするけれど、でも、僕だって、誘拐されたんだ。凄惨なものを見せられたんだ。
少しくらい狂ってしまってる方が人間として正しいよね。
まーちゃんはみーくんのことが好きすぎて、やっぱりどこかおかしいし、みーくんもまーちゃんのことが好きすぎてどこかおかしい。
でも、そんな二人には、世間の人たちよりもむしろ冷静さと常識が備わっていて。
だけど、それを実行するかは別だけどね。
未だ裕福に育ったから、まーちゃんは上品な所作の下でみーくんにわがままを言っちゃうし、みーくんはそれを叶えちゃうけど。
だって、叶えないと彼女が僕をみーくんと認識してくれないんだよ。
違う違うなんて言われて暴れられるなんて、まっぴらだ。
僕が傷つくのはいいよ。
でも、彼女がそんな猟奇的なことをしなければならない状況に陥ることを僕は許せない。
8年前の事件の真相は。
本当の二人の関係は。
これからの二人の行く末は。
そんな二人の青春ラブストーリー(嘘だけど)なんてね。
世界は二人を中心に回っている。
いや、他にも人はいる。
だけど、彼らにはその姿は見えないのだ。
そんな彼らに私は憧憬を覚えずにいられない。
―少し、読んでみたくなりませんか。
春、出会いの季節です。
すべてがうまくいっているときに、微笑みながら木陰で読書するなんてかっこいいじゃありませんか?
すべてがうまくいかないときに、真夜中のカフェバーで物語の中に没入する。いいじゃありませんか。
楽しすぎるからといって、こちらの世界に帰ってこられなくなりませんよう。