「いやー、実は月極駐車場の“月極”のこと、“ゲッキョク”だと思ってたよ~」とか「駐車場を経営している“月極株式会社”だと思ってた」なんて、大人になった今ではたまーに耳にする笑い話かもしれない。
こうした“月極”にまつわる話は、都市伝説とまで言われているようだ。
もちろん“月極”は“げっきょく”ではなく“つきぎめ”であり、その意味も「ひと月ごとに決める」ということであるが、では、どうして“月決め”でないのだろうか。
まずは文字の意味を調べてみる。
“極める”は、普通に読めば「きわめる」だ。
意味は小学館『大辞泉』によると、
1 (極める)これより先はないというところまで行き着く。
2 (極める・窮める)極点に達した状態になる。この上もない程度までそうなる。
3 (極める)残るところなく尽くす。
4 (究める・窮める)深く研究して、すっかり明らかにする。
5 終わらせる。
6 決める。定める。
と説明されており、1~5あたりは、みなさんのよく知るところだろう。
ところが、よく見ると6番目に「決める。定める。」と出てくる。
実際は、江戸時代から第二次大戦ごろまで、日本では“極める”を「きめる」とも読み、「きめる、とりきめる、約束」という意味で使ってきたそうなのである。
式亭三馬の『浮世風呂』の中にも「極まったものだ」「極めておきませう」という文章があり、「きめる」と読ませている。
夏目漱石の小説『それから』では、「仕様がない。覚悟を極めましょう。」というセリフがあり、やはり「きめましょう」と読む。
“月極”も、現代であれば“月決め”という字があてられたであろうが、そうした昔からの名残で“月極”となったようである。
というわけで、“月極”は巨大な駐車場チェーンでもなく“ゲッキョク”でもなく、きちんと昔から使われてきた言葉だったのである。
外来語、和製英語、ギャル文字……今の“日本語”は、さまざまな文化を取り入れ、変化し続けている。
これから新しく作り出される言葉もたくさんあるだろう。
しかし、昔から使われてきた言葉の意味や使い方を調べてみると、それまで何の変哲もないと思っていた当たり前の“日本語”に新しい発見がある。“月極”のように何らかの形で残していってほしいものだ。