小保方晴子氏手記刊行の影で STAP細胞の特許が出願されていた?

  by 松沢直樹  Tags :  

「リケジョ」とマスコミがもてはやした小保方晴子氏。
細胞を弱い酸で刺激することによって、幹細胞(将来、どのような部位や臓器の細胞にもなりうる可能性を持った細胞)が作れると主張し、STAP細胞という名称で論文を公表しました。もし、事実なら失った体の一部をもう一度復元する再生医療をはじめ、現代医学では治療が困難な病気も治すことができる可能性が出てきます。そのため、理化学研究所を通じて発表されたSTAP細胞の論文は注目を集めました。

しかしながら、専門家の間では、不明な点があると指摘が相次ぎました。また、論文の不当な引用が認められることが発覚し、STAP細胞が本当に小保方氏の主張する方法で再現できるのか、理化学研究所が指定した状態の監視の下で実験が行われることとなりました。

その際のことが、手記『あの日』(講談社)では、生々しく綴られていて、話題になってますね。

結局STAP細胞は、小保方氏の主張する方法では再現が見られませんでした。小保方氏は、論文の捏造を指摘され、理化学研究所を2014年12月に自主退職しただけでなく、2015年の2月10日に解雇処分。さらに早稲田大学から授与された博士号を剥奪されています。加えて、理化学研究所は他の研究者が実験中の細胞を盗んだとして刑事告訴する動きもあるといいます。

しかしながら、他方で、一連のSTAP細胞研究についてはいまだに疑問を唱える人もいます。
もし、小保方氏が意図的に実験結果を偽造していたとしたら、いわば実験の監査役に当たっていた若山輝彦山梨大学教授がなぜ、捏造を見抜けなかったのか。不正が入り込む余地がある中で研究が進められていなかったのか。そのことに、キーマンたちが疑問を呈しなかったことも不自然な気がします。
いずれにせよ、STAP細胞は捏造という結論に落ち着いてしまっています。

しかしながら、なぜかSTAP細胞に関する特許が出願されているんですね。

特開2015-198644「未分化細胞から分化細胞および/または分化細胞の産生物を取得する方法」という特許ですね。
2015年1月29日に出願され、審査請求はかけられていないようです(特許権は出願の後に審査を受けて、オリジナルの発明と判断された場合特許が与えられます)。

特許の出願書類には、どのような問題を解決するために、新しい方法を発明したかを書く欄があります。それがこれですね。

難しいですが、臓器や生体組織に、未分化な細胞を簡単にいれ、分化させたりするっていう技術のようですね。つまり失われたり機能が低下した臓器を復活させるなんてことが可能になるってことなんでしょうけど。たしかにSTAP細胞の研究の趣旨に沿った内容です。

この特許出願書、よく見てみると奇妙なんです。

特許出願の書類には、どういうことに対して独占したいか、つまりどういうことについて特許を与えてもらいたいかについて記載する請求項というセクションがあります。請求項の5を見ると、こう書いてありますね。

幹細胞が、ES細胞、クローンES細胞、間葉系幹細胞、iPS細胞およびSTAP細胞からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項4に記載の方法。

これってどういうことなんでしょう。STAP細胞ってないことが証明されたんじゃ?

この特許って、小保方氏が理化学研究所を自主退職した2014年12月以降に出願されてるんですよね。
てことは、理化学研究所が存在しないと結論づけたSTAP細胞について、なぜ特許が申請されているんでしょう?

あの一連の論文盗用疑惑が起きる前に特許出願がなされたのなら、STAP細胞という新たなものが出てきたから、その技術を流用して特許をとろうという考えが出ても不思議ではありません。あれだけバッシングを喰らい、小保方氏が自主退職した後にSTAP細胞の存在を認めている特許が出されているというのは、どうも不自然です。

今回出版された小保方氏の『あの日』には確信的なことは書かれていないようですが、STAP細胞の存在も含めて、まだ全ての事実が開示されていないような気がするのは私だけでしょうか。

※画像は特許庁データベースより

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長