結婚には結婚指輪、婚約には婚約指輪(エンゲージリング)。これは常識。
しかし、最近はプロポーズ専用の指輪と言うものがあるらしい。
プロポーズをしたことがない記者にはよくわからないので、早速取材した。
やってきたのは、日本で一番地価が高い銀座にある「銀座ダイヤモンドシライシ」。
さぞ高価なプロポーズ専用リングを見せられるのだろう。恐れおののきながら店内へ。
写真は中央が婚約指輪で、左右が男女の結婚指輪。
なんとなく婚約指輪の石が小ぶりでが地味に見える。婚約指輪といえば立爪のでっかいダイヤが入ったごっついやつと思い込んでいたが、最近はそうでもないらしい。種明かしは後でする。
まず、プロポーズしようとする男性は石を決めなければならない。
石はもちろん本物を選ぶが、そこは予算に合わせて。写真のダイヤは0.408カラットのもので655000円。概ね給料の3か月分といったところか。引っ掛けて落としてしまわないだろうかと、冷や冷やしながらの撮影だった。
そして、プロポーズ専用の「スマイルプロポーズリング」(以下プロポーズリングという)を買う。税込み15750円。
写真は撮影用に裏向きにセットしてあるので、石はケースの下に潜っていて見えない。
どういうことかというと、アジャスターがついていて、どんなサイズでもOKという代物。
だから、相手の指輪のサイズを聞く必要もなければ探る必要もない。
この15750円のプロポーズリングに、石を留めて準備完了。
金環食のような見事な輝きは本物の証だ。
ちなみに、このBOXもプロポーズ専用でさほど大きくなく、ポケットに入れても目立たないような厚さになっている。
そして、プロポーズが成功したとする。
そうなると、彼女はリングをはめて、こういう画になる。
本日のモデルは美容・ファッションライターで、高校生の時から読者モデルを務める磯部奈央さん。
プロポーズを受けてくれたのはいいが、指輪そのものの素材はシルバーで15750円。これではいけない。
彼女と店を再度訪ねて、好きなデザインのリングを決めてもらうのだが、その際に使用済みのプロポーズリングは思い出とともに、キュービックジルコニア(CZ)を留めて、記念品となり贈呈(返却)される。
写真は様々なカラーバリエーションのCZ。
磯部さんにはプロポーズリングの裏側を向けてもらい撮影。アジャスターがついているので実質サイズフリー。
こうして、好きなデザインのリングをお店で決めていく。
磯部さんにも様々なリングを将来のために試してもらった。
その間に記者は原大輔営業企画部長に話を聞いた。
--なぜ、このようなリングを発売されたのですか?
「実は、男性の方がプロポーズの際に悩まれる原因の一つは、サイズがわからないということだったのです。サプライズ・プロポーズをするためには絶対に悟られてはいけないので、結局サイズがわからず途方に暮れる方は意外と多いのです。だからと言って適当に選んでもしサイズ違いだとすると大変なことになります。そこで、とりあえずプロポーズの時だけ使用できるリングを開発しようと思ったのです」
--でもサイズだけでしたら、どんなことをしてでもわかりますよね?私だったらファッションリングのサイズを聞いて買ってあげますけどね
「(笑)記者さんのような達者な方はそれでもいいのかもしれませんが、実はもう一つ重要な悩みがありまして、それはデザインなのです。もし、彼女がデザインを気に入ってくれなかったらどうしようというお悩みです」
--プロポーズを受ける相手からだったらどんなデザインだっていいじゃないですかね?そんなの軟弱だと思いますよ!
そこへ磯部さんが遠慮がちに物言いをつける。
「えー、それはそうですけど、せっかくもらうのであれば、一生ものですから自分の好きなデザインにしたいなと思いますけど…」
(写真は左・ブーケと、右・セントグレア)
原さんが仲裁に入る。
「まぁ、ですから、そういうことが起こらないように、とりあえず専用リングでプロポーズをして、彼女の好きなデザインでエンゲージリングを作ってもらえば、と思ったのです。もしかして記者さん、九州の方ですか?」
--いかにも!私は九州人です!
「やはりそうですか。私も生まれは違いますが、九州人の血が流れているんですよ。実を言いますと、デザインに関しては私も当初は同意見だったのです。ですから九州の方には受け入れられにくいかな?と思っていたのですが、やはりそうなんですかね?(笑)」
記者は決して九州人の代表ではないので、九州の名誉のために断っておくが、口では硬いことを言っても実は情熱的なロマンチストが多いのも九州人。直接関係はないが、国鉄から分割民営化されたJR九州のコーポレートカラーが赤なのは「九州の情熱」を表していることからもお分かりいただけるだろう。
--でも、石はあらかじめ本物を買うのですから、彼女が選ぶのはリングだけですよね?そうなると、そんなにべらぼうな値段のリングはないでしょうから、安心して”好きなのを選べ!”と言えますね
「モデルの磯部さんにはあまり聞かれたくない話ですが、実はそうなんです。ダイヤはそれこそ給料1か月分から年収クラスまでありますから、好きなのを選べと言ってしまって、とんでもないものを選択されてしまうというリスクは回避できますね。リングはせいぜい10万円ちょいですから」
サプライズ大好きの今の若い人たちには、最適で合理的な方法なのかもしれない。
ところで、婚約指輪の石が小ぶりで地味だと前述したが、その種明かしをする。
磯部さんが2つのリングをはめているが、これは婚約指輪と結婚指輪のセットリング仕様になっている。もちろん普段は結婚指輪だけだが、セットで身に着けることにより「それなりの場」に出ても見栄えがいいようにデザインされている。
立爪のでかいリングは、婚約指輪として結婚後はタンスの奥にしまっておくものから、普段使いもできるオシャレなものに変わってきているということなのか。
これから結婚を考える男性諸氏は、こういう方法もあることを知っておけば、サイズやデザインを気にすることなく、サプライズを考えることだけに専念するできそうだ。
モデル 磯部奈央
※写真はすべて記者撮影