【犬】意外と知られていないドッグランの使い方

 ドッグランで愛犬を思いっきり走らせてあげたい!そう思う愛犬家は多いですよね。しかしドッグランを巡ってのトラブルは常に起こっていて、止むことがありません。トラブルの多くは犬同士の喧嘩や攻撃行動が挙げられます。中には大型犬と小型犬が喧嘩を起こし、小型犬が重症を負うや、死亡事故も起こっています。こうしたトラブルを起こさないようにするためには、どうすべきなのでしょうか。
 本日は、ドッグランを快適に、安全に使う方法をご紹介いたします。

散歩の代用としてドッグランを使わない

 散歩の代わりとして、ドッグランに来てしまうと、犬は溜まっているエネルギーを全てドッグランで発散することになります。こうなると、ドッグランに入った瞬間からエネルギーを爆発させ、興奮度はマックスに。ここに他の犬がいると、興奮はピークに達し、一触即発といった状況を作り出してしまいます。なので、ドッグランに来る前には充分に散歩をして、エネルギーを発散させてからドッグランに入るようにしましょう。きっちりとエネルギーの発散がされていれば、些細な事では興奮しなくなります。どの道、散歩だけでは充分な運動にはなりませんから、余ったエネルギーをドッグランで存分に晴らすことができます。もちろん、これには日頃の散歩も、しっかりと行っている事が大前提となります。

呼び戻しの訓練ができていないなら、ドッグランに入るのはNG

 愛犬がいかなる状況においても、飼主が「オイデ!」や「コイ」と言えば、愛犬は飼主の元に戻ってくる。これを”呼び戻し”と言います。このトレーニングが完璧にできないのなら、しっかりとトレーニングをしてからドッグランに行くようにしましょう。公園の広い場所でロングリードを使って呼び戻しのトレーニングをします。最初は1m程度の距離から始めて、徐々に距離を広げていきます。呼び戻しができれば、喧嘩になりそうになったら直ぐに呼び戻すことで、トラブルを回避できます。このような訓練は災害時などに避難する時にも有効に働きます。しっかりと呼び戻しのトレーニングを行なうことは、愛犬の命を守るためにも重要な事です。

入場の際の儀式

 ドッグランには必ずゲートが設置されています。既に他の犬がいるようなら、ゲートを通る前に柵の手前で待機します。すると他の犬が、あなたの愛犬の存在に気づき、こちらに近寄ってきます。柵越しに犬同士を合わせて、両者が興奮しないことを確認します。ここで、どちらかの犬が興奮して吠える、または攻撃するような行動を見せたら、その場で犬が落ち着くまで待機しましょう。柵があるので誰も怪我はしないはずです。数分待っても状況が変わらないようなら、その日は諦めて帰りましょう。
 先にドッグランに入っていた犬が柵から離れて行ったら、挨拶が終了したサインです。ここで静かに中に入ります。くれぐれも柵越しに挨拶をしている最中には中に入れないようにしましょう。ドッグランに先にいる犬は、その場所の占有者です。後から入って来る犬は、よそ者として扱われます。なので、この挨拶も無しに犬をいきなりドッグランに入れると、先にいた犬達からすれば、縄張りを荒らされた状態です。そして、入れられた方の犬も、突然に他者の縄張りに放りこまれた状態です。これでは両者が混乱して当然と言えるでしょう。必ず、先住者を尊重して、犬同士の挨拶を行ってから中に入るようにしましょう。

ドッグランに入れたら監視の目を

 犬に限って”絶対”という事はあり得ません。不測の事態は必ず起きます。なので、愛犬がドッグランの中にいる時は、常に周囲の犬達と愛犬を見守っていてください。そして、もし何か起こりそうになったら素早く呼び戻して愛犬の安全を確保します。未然に防ぐ事が事故防止の鉄則です。そのためには犬達が発するサインを読みとる技術も必要になります。
 また、犬のボディランゲージを勉強してから、ドッグランに行く事をお勧めします。犬達がフリーな状態で、どのようなボディランゲージを発しているのかを観察するにはドッグランほど最適な環境はありません。

飼主は一箇所に留まらずに常に動くこと

 犬と共にドッグランに入ったら、飼主は頻繁に歩いてドッグラン内を移動します。これには犬の注意をこちらに惹きつけておくことで、トラブルを避ける意味があります。愛犬が仲良くなった他の犬と遊んでいる時などは、少し離れた場所で見守ります。しかし遊びが終わって、愛犬が移動し始めたら、飼主も歩きます。逆に飼主が一箇所に留まっていると、愛犬はあなたの存在を一時的に忘れてしまい、飼主に注意を向けなくなりがちです。こうなっていると、何かトラブルに遭遇した際、呼び戻しが困難になります。
 また日頃から、ドッグラン内で愛犬と飼主との距離が離れている時などは、呼び戻しを行います。こうすることで、呼び戻しトレーニングは更に強化されます。愛犬が戻ってきたら、笑顔で褒めて、また愛犬を自由にさせます。

ドッグランは使い方が大切

 ドッグランでのトラブルの原因のほとんどは犬にはなく、飼主の判断ミスによるものです。飼主が犬社会のルールを知り、また犬のボディランゲージなどのサインを知っていれば、ほとんどのケースでトラブルは回避できます。大型犬を擁護するわけではありませんが、ドッグラン内で大型犬が小型犬を襲うなどの、よくあるトラブルは一見すると、襲った大型犬が悪者になりがちです。しかし、実際は犬社会のルールを無視した飼主の行動が引き起こすトラブルであって、全て大型犬の責任にするのは無理があります。もちろん大型犬の飼主は、トラブルに遭遇した際の対処の方法をきちんと想定しておく必要があります。また大型犬でも小型犬でも、飼主は愛犬の行動をきちんとコントロールする責任があります。もしドッグラン内で喧嘩が起こり、噛み付いているようなら、飼主は命がけで、そこに飛び込み、喧嘩を止めさせます。このように喧嘩が発展している状況では飼主の声など届きませんから、力づくででも犬を引き離すしかありません。こうならないようにトラブルは未然に防げるようにしたいものです。
 愛犬や他の犬の安全のためにも、日頃から充分な散歩やトレーニングを行ない、ドッグランを楽しく安全に利用してくださいね。

TOP画像は筆者がドッグラン内で撮影した物。

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner