パソコンをもっと使いこなしたいという人は結構いる。
ぼくもそのうちの一人。
たとえ目が見えなくても、パソコンを使ってもっといろいろなことをしたい。
そのためには、ある程度リスクをとってパソコンを操作していかなくてはならない。
ぼくは以前サウンド編集がしたくて、ちょうどよいソフトウェアを探していた時期がある。
普通の人なら適当にぐぐって、使えそうなソフトウェアを探してインストールすればすむ。
ところが、ぼくのような全盲の視覚障害者の場合にはそう簡単にはいかない。
なぜなら、ぼくのような目の見えない人間がパソコンを使うときというのは、パソコンの画面読み上げソフトである通称スクリーンリーダーと呼ばれるソフトウェアをインストールして使う。
しかしこのスクリーンリーダーというのがくせもので、パソコンの画面なら全て読み上げるというものではなく、アプリケーションによっては読み上げなかったりする。
こんなふうに書くと、たくさんあるソフトウェアの中で一部のアプリケーションが読み上げない感じがするが、現実はその逆で、一部のアプリケーションしか読み上げない。
当然画面を読み上げないソフトウェアは使えない。
したがって、スクリーンリーダーを使ってパソコン操作をがんばったとしても、一部のソフトウェアしか使えないという悲しい現実があるのだ。
もちろんサウンド編集ソフトだって例外ではないというか、その性質上、スクリーンリーダーで使えるものはほとんどない。
でも、たとえ全盲のスクリーンリーダーユーザーだったとしても、サウンド編集とかしたいじゃないですか。
そのためには知名度に関係なく、とにかくスクリーンリーダーで使えそうなサウンド編集ソフトかどうかを確かめる必要がある。
運良く別のスクリーンリーダーユーザーが、サウンド編集ソフト関連のレビューを載せていればよいのだが…。
同じソフトでもバージョンが違ったりすると、スクリーンリーダーの読み上げ具合や操作方法なども変わってくるので、なかなか難しい。
やはり一番よい方法は、実際に自分のパソコンにインストールしてみて、その使用感を確かめることである。
そうなると当然、複数のサウンド編集ソフトを自分のパソコンにインストールして実際に使ってみることになる。
そうして仮に10本のソフトを試して、スクリーンリーダーでも使えそうなソフトを数本見つけ出したとする。
まさに努力が実を結んだ瞬間である。
でも実はこの後が問題で、スクリーンリーダーで使えなかったソフトは不要なのでパソコンから削除したい。
うまくアンインストールできればよいのだが、中にはうまくいかないものもある。
こんなことを何度も繰り返していると、だんだんパソコンの中が散らかってきたり動作が重くなってきたりする。
まぁこんなことをしなかったとしても、経験上ウィンドウズパソコンを同じ環境で使い続けているとだんだん動きが遅くなってくる。
それに誤って、スクリーンリーダー未対応のソフトをインストールしてしまったこともある。
ぼくは昔、インターネットエクスプローラのバージョンが上がったので、はりきってアップグレードしてみたらスクリーンリーダーで読み上げなくなって使えなくなったことがある。
そんなわけで、全盲のスクリーンリーダーユーザーというのは綱渡り状態でパソコンを使っているのだ。
こんな現実がありながらも、それでもなおパソコンを使いこなしたいと願うのは、やはりパソコンやインターネットが便利だからである。
写真は筆者撮影のものを使用しました。