『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』で松本人志が、タクシーの運転手に怒り心頭だったエピソードを話した。要はお嬢ちゃんのことでお世話になっている方と会食をし、帰りもタクシーでその方の自宅まで送るように松本人志がタクシーの運転手に1,000円くらいで行ける距離とわかっていても3,000円を手渡したとのこと。
タクシーに乗った松本人志の知人が多めに渡したタクシー代のおつりをもらおうとタクシーの運転手に「お返ししたいので」と要求すると、タクシー運転手は「さっきの人にもらったのであなたには渡せない」と言ったことに対して怒りを表して「どういう了見しているの」「いやぁ…なんかもうね。嫌になってくるわ…。悲しくなる」とテレビ番組で言ってしまったのだ。
この番組を実際見ていて、松本人志の言い分はよくわかったし、全く持って正しいとも思っていたが、ネットニュースで取り上げられるようになって、一寸考え方が変わった。
例えばこの状況がニューヨークであれば、確実にこのタクシー運転手のようにおつりを後部座席のお客さんには渡さないだろう。日本のタクシー運転手はマナーもよいし、お金にも綺麗に対処するような印象を受ける。このような状況が例えばロンドンであった場合はどうだろう?パリは?香港は?いろいろ考えていくうちに、もし松本人志がちょっとだけ大人になったとしたら、もっと大人の対応が出来たのではないかと思い始めた。
タクシーの運転手からしてみれば大スターの松本人志から多めの3,000円を手渡され「ちゃんと送ってくださいね」と言われれば、それは心づけも入ったものと受け取られる可能性が大なのだ。また、知人の方もお釣りをもらってそれを返すことも実際面倒なことである。松本人志はお釣りの2,000円強などは返してもらう必要などないのである。
タクシー運転手に「どういう了見をしているの」と公共の電波で毒づくより、本来は1,000円くらいで行ける距離と予めわかっているのなら、2,000円程をタクシー運転手に手渡し「よろしくお願いします。お釣りはどうぞとっておいてください」とその場で一言いえば、知人の方もお釣りを返さなければいけないと言う余計な煩わさしさから解放される。
松本人志自身がきちんとした指示をタクシー運転手に出さずに、自分の希望的観測でものを判断したのがちょっと甘かったかな?と言う印象。確かに仰ることは間違っていないが、人のとり方十人十色。ましてや大金持ちの松本人志から3,000円を渡されたら、チップと思う気持ちはきっとタクシー運転手ならあると思う。
キチンと多めのお金を渡して、釣りはいらぬと言っておけば、知人の方もお釣りで余計な心配もすることなく、誰も気分を害することはなかったのだ。松本人志の言い分は実に理解する。しかし、一流の芸人の作法としてはちょっといただけない。やしきたかじんなどはワンメーターでも一万円を渡していたそうだ。
ワンメーター一万円の歌手と比べるのも申し訳ないが、松本人志のような大物芸人がタクシーの運転手に多めに差し出したタクシー代のお釣りをネコババしたかのような発言を自身のテレビ番組で言うのもチョットおかしいし、またそれを告げ口する知人もアレ?だし、支払元の松本人志の3,000円のお釣りを例え返すという気持でも戻してもらおうとするのも解せないし、それにタクシー運転手も乗客からお釣りを返してくださいと言われたら、返したくなければ「チップとして頂戴していると思います」と言えば、お互い気まずいだろうがそれでテレビでさらされることもないだろう。それにお金に固執せずにお釣りが欲しいと言う後部座席の人に残念と思いつつも渡せばよかったのだ。
このタクシーお釣りに関する登場人物の、三者三様、ひとりひとりがすべてずれている気がしてならないし、こんな個人的なことをテレビで話す松本人志がいかにイエスマンに囲まれているかがわかるような気がする。楽屋話のレベルの話は、テレビですべきではないし、立場の弱いタクシー運転手をテレビを通してやっつけたことは後味の悪さしか残らないような気がしている。