11日、日本生化学学会の専門誌「ジャーナルオブ・バイオ・ケミストリー」は、自然科学研究機構基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の野田昌晴教授らが、インシュリン受容体の働きを妨げる酵素を特定したと発表しました。インスリン注射が必要な糖尿病患者の治療について、さらに効果が高い治療法が期待できるのではないかとして、注目を集めています。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。様々な原因がありますが、血液中に余剰の糖分があふれるようになる糖尿病の患者さんのうち、定期的にインスリン注射を行わなければならないケースがありますが、注射したインスリンが効きにくくなることが確認されていました。
インスリンが効果を現しにくくなる理由として、インシュリン受容体の働きがなんらかの理由で鈍くなることがわかっています。
インスリンがインスリン受容体に結びつきにくくなる酵素があることは特定されていましたが、具体的な特定はなされていませんでした。
野田教授らは、ヒトやサルの細胞を使って、R3RPTPという酵素が、インスリン受容体にインスリンが結びつくことを妨げていることを確認。
R3RPTPを欠損させたマウスを人工的に作り、ブドウ糖を注射したところ、正常なマウスに比べて血糖値の低下が30パーセント速くなったことと報告しています。
このことから、R3RPTPの作用を妨げることで、少ないインスリンでも効果的な糖尿病のコントロールが可能になり、効果的な糖尿病治療薬の開発が可能になるとのことです。
糖尿病の原因は実に様々ですので、今回の発見は非常に有意義だと思います。とはいえ、肥満によって引き起こされやすくなる成人型糖尿病は、食生活を中心に、長期的な自己改善が必要なのは変わらないようですね。
※写真はイメージ 足成から http://www.ashinari.com/2009/04/26-017743.php