フランスのカンヌで開かれていた主要20カ国・地域(G20)首脳会議が4日に閉幕しました。何と言っても今回の話題の中心はギリシャ危機に端を発した欧州通貨危機の問題で、日本的には円高対策なども議題にしたかったようですが、どこかに行ってしまったというところでしょうか。
円高の原因の1つが、欧州通貨危機である以上、日本としても人ごとではないので、私もいつになく、今回のG20については、注目していたのですが、ギリシャのパパンドレウ首相がいきなり突然国民投票を打ち出したこともあり、どうしてもそこしか話題にならなかったようです。
さてこうした状況を受けていろいろマスコミが今回のG20を総括しております。せめて英語圏のもの位は自分で調べてまとめようかとも思ったのですが、日本経済新聞がいろいろな国の報道をまとめてくておりましたので、それを下に引用させていただきます(「『G20は何もせず閉幕』 海外メディア、厳しい論調」)。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は5日付で「G20はほとんど何も提示せず閉幕した」と題する記事を配信し「欧州の指導者は深まる債務危機との戦いを進展させることに失敗した」と指摘。「イタリアの資金繰りが行き詰まると欧州では停止不能な(市場の)メルトダウン(溶融)が起こる」などと警告した。
英ガーディアン(電子版)も5日付で「G20の失敗でグローバルな景気後退が一段と近づいた」との見出しで「不機嫌な空気に覆われたサミットは、困窮国向けの新味のある金融支援で合意できなかった」などと解説した。
英フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は5日付社説で「世界で最も有力な指導者らもギリシャ・イタリア両首相の行動を前に無力だった」と断じた。
さて日本における報道ですが、テレビなどでよく耳にしたのが「ヨーロッパ以外の国はほとんど蚊帳の外に置かれた形となりました。」という表現で、言い得て妙かと思ってしまいました(『テレビ朝日』「G20終え帰国の途へ 総理、国際会議で存在感は…」)。
特にいつの間にか消費税の引き上げを国際公約にしてしまったことや、銀行の自費資本比率の引き上げを欧州が決めたまま受け入れたことなどから、野田首相らは何をしに行って、何をしてきたのかという感じの報道が目立ちます(『中日新聞』「G20会合 危機はまだ目の前に」)。
さてこうした状況と全く正反対の立場から報道がなされているのが中国で、『人民日報』では「胡锦涛主席欧洲之行圆满成功 维护我国重大利益」(胡錦涛主席欧州行きは円満に成功し、我が国の重大利益を守る)では、これでもかという具合に彼の成果を強調しております。
とても全部を訳すのはばかばかしいので、一部にとどめておきますが、世界経済・貿易問題では、内需拡大に努め、世界経済の成長に貢献したことを紹介したり、貿易保護主義に反対し、各方面の高い関心と評価を得たそうです。
他にも南南問題の解決のために、最貧国に対して関税を撤廃する政策を発表し賞賛を浴びたし、中国が欧州の債務危機に関して欧州を支持し、経済復興のために努力をしてきたことについて、関係国から積極的な反応があったとしております。
これ以外にも外国人の発言を引用して中国を賞賛するといういつもの手法も使われております(「国际舆论解读G20峰会:中国展示负责任大国形象」)。ただ、これまで何度も見てきたように平気で翻訳をごまかし自国に有利な様に報道する国ですから、どこまで本当の発言かは不明です。
こうした報道になった背景の1つには、今回の欧州通過危機を通じて、欧州に恩を売るとともに、中国の存在感を世界にアピールできるチャンスと思っていたのが、蓋を開けてみれば、欧州のゴタゴタで何も決まらず、支援の表明もとてもできる状態ではなく、いらだちが募ったということもあるのではないかと思っております。