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風来坊力也の旅日記
今でも胸が熱い、この熱が冷めぬ内に記しておく。
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2015年1月2日、横浜から鹿児島まで2400kmヒッチハイクの旅の途中、軍歌を大音量で流す巨大なバスと出会う。
それは通称「右翼戦車」と呼ばれる街宣活動を行う車だった。
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真っ赤な車体に黄金の菊の紋。
中にはもちろん怖そうな方々が大勢乗り込んでいた。
普通の人は声を掛けない、危険を察し避けて通るだろう。
自分は普通より少しズレているのかもしれない。
目の前の巨大な街宣車に一目惚れしてしまった。
乗りたい、この巨大な街宣車に乗れたら幸せ。
ふらふらっと近付いて撮影をしていると、当然の事ながら怒られた。
「なんじゃごラあ!!」
ああ…怖い、足が震える。
逃げ出したかったが、こんなチャンスは2度と無いだろうと思い
「街宣車に乗せて頂けないでしょうか!」
直球でたのみこむ。
悲壮な覚悟が伝わったのだろうか
「普段は駄目だが…よし分かった、乗れ!」
まさかの答えだった、街宣車のヒッチハイクに成功してしまった。
この奇跡は自分にとって一生の宝物になったのだった。
それが4ヶ月前の出来事。
その出会いから会長の瀧さんと交流を持つ事が出来た。
今回のお話も瀧会長からの提案だった。
「5月3日に都内で街宣活動をするから来るか?」
夢のようなお話、当然飛びついた。
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5月3日、朝5時からスタンバイする。
海老名サービスエリアで待っていると街宣車が大音量でやってきた。
久しぶりの再開、胸が踊る。
本日は憲法記念日、全国から大勢の右翼団体が東京に集結するらしい。
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久々の街宣車、ピリっとした空気に身が引き締まる。
皆、特攻服を身にまとい臨戦体制だった。
一路、東京へ出発。
まずは上野公園だ。
大音量で軍歌が流れ目の前の車がどんどん道をあけていく。
ゴールデンウィークの大渋滞、モーゼの様に道が開きスイスイ進んでいく。
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上野公園に到着。
先日ホームレス生活を行った上野公園、鈴木さんに見つかったらビックリされるだろうな。
他の団体の戦車も多数並ぶ、ここで街宣活動が行われるのだ。
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周りには機動隊、パトカーがズラリと並ぶ。
そんなものは物ともせず街宣活動が始まる。
ドスの効いた声が上野に高らかに響き渡る。
今の日本における様々な問題を提議。
日本を良くしたい、美しい国を作りたい、そんな思いが伝わってくる。
周りの熱が増すにつれ、自分も熱いものが込み上げてきた。
ダメ元でマイクをお借り出来ないか聞いてみる。
カンペの通り読めば良いとマイクを譲って頂いた。
初めての街宣活動、とにかく全力でやってみよう。
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「シュプレヒコール!シュプレヒコール!」
上野の町に声が響く。
これは…たまらん!!!
血が滾るとはこの事か!!
全力で街宣活動をやり切る。
ほとんど何を言っていたのか覚えていない。
最後の「叩き潰せええ!!」のフレーズだけは覚えていた。
マイクを置くと瀧会長が駆け寄って来た。
ヤバイ…調子に乗ってやり過ぎただろうか?
怒られるかと思ったがそうではなかった。
「やるやないか」と、褒められた。
必死さが伝わり結構良かったらしい。
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会長から仲間の証の金バッヂを頂く。
これがめちゃくちゃ嬉しかった。
褒められた事よりも何よりも、仲間と認めて貰えた事がたまらなく嬉しくなった。
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その後、街宣活動は朝日新聞社、国会議事堂、自民党本部と場所を移し、声高に日本の抱える闇を白日に晒す。
難しい話は分からないが「筋の通らない曖昧さから目をそむけるな」
そう言っているように聞こえた。
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途中警官隊とぶつかる瞬間もあり肝を冷やす。
車中すごく穏やかで、ラジコン飛行機が趣味の優しいおじいちゃん。
この人キレたら1番ヤバかった。
街宣車に乗り込みアクセルをふかし警官隊に突っ込もうとする。
流石に全員で止めた。
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最後は靖国神社で英霊にご挨拶。
礼節を教わる。
2度礼、2度手を叩き、1度頭を下げる。
鳥居を潜る際も前を向き一礼、帰りも振り返り一礼。
昔から大切に受け継がれてきた作法もまた守るべき美しい日本なのだ。
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今日は貴重な体験をさせて頂いた。
右翼の活動に飛び込んでみて初めて分かる事もあった。
右翼団体に対する誤解をひとつ解いておきたい。
彼らは誰一人、力をひけらかす事はしなかった。
武勇伝を語り、威圧的に他人を説教する事もしない。
それが恰好悪い事をよく知っているからだ。
厳しさはある、それは導くための厳しさ。
自分を優位に立たせる為の厳しさはではない、そこには思いやりと優しさがあった。
本物の「男」の集団。
こういう男になってみたいと心から思った。
18歳で団体に属しているタクちゃんと話をする。
一方的に皆の男らしさに痺れた話をしてしまったのだが、タクちゃんも同じ思いだったので嬉しかった。
この活動でお金が貰えるわけではない、にも関わらずタクちゃんは今後もこの活動を続けたいと語った。
その気持ちがよく分かる。
この熱を共有すれば誰でも同じ気持ちになるだろう。
少なくとも自分は街宣活動を通じ最高の一体感を得た。
ひとつの目標に全員で立ち向かい同じ信念を突き通す。
ブレることの無い魂の共有がとても心地良いのだ。
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「また参加してもいいですか?」
瀧会長は何も言わなかった。
そのかわり、頭の上で大きな丸を作って見せてくれた。
次に会える日が待ち遠しい。
力也