国立生育医療研究センター 赤ちゃんに毎日保湿剤でアトピー減と発表

  by 松沢直樹  Tags :  

国立生育医療研究センター斉藤博久所長らのグループは、生後間もないアトピーの症状が出ていない赤ちゃんに、毎日保湿剤を塗ると、アトピー性皮膚炎になるリスクを30パーセント減らすことができたとする研究成果を発表しました。

アトピー生皮膚炎は、遺伝的な素因として症状を起こしやすい体質を受け継ぐ人がいることがわかっています。研究では、家族の中でアトピー性皮膚炎になったことがある家族がいる赤ちゃん118人を、無作為に半分に分けました。

半分のグループには、薬局で売られている市販の保湿剤を全身に塗り、もう半分のグループには、皮膚の乾燥している部分にワセリンをぬるだけのケアを行いました。

8ヶ月後に追跡調査を行ったところ、全身に保湿剤を塗った赤ちゃんのうちアトピー性皮膚炎になったのは19人でした。
他方で、乾燥した部分にワセリンを塗った赤ちゃんは28人でした。このことから、全身に保湿剤を塗った赤ちゃんは、アトピー性皮膚炎の発症を32パーセント抑えることができたとしています。

特定の方法で、アトピー生皮膚炎発症のリスクを回避する方法があることがわかったのは、これが初めてとされています。同研究センターの大家幸弘医長は、かゆみや炎症が出てからでは遅いので、皮膚が健康な状態のうちから行うことが重要だと指摘しています。

また、健康な皮膚の状態であっても、保湿剤に含まれる特定の物質に対して、皮膚が炎症を起こすことは容易に考えられます。保湿剤使用時に、万が一炎症が起きたり、子供がかゆがったりするようなら、すぐに使用を中止し、かかりつけの皮膚科医や小児科医に相談するのが重要です。

ともあれ、ふだんからの保湿ケアが、アトピー性皮膚炎の発症予防に寄与する可能性がわかったのは大きいです。お子さんのアトピー性皮膚炎を心配される親御さんは、お風呂などで清潔にさせることと保湿ケアを意識したいですね。

写真は 足成 http://www.ashinari.com/ より

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長