高市早苗総務大臣や稲田朋美自民党政調会長、西田昌司参議院議員らがネオナチを標榜する政治組織・国家社会主義日本労働者党(NSJAP)の代表者と2011年に写真を撮影していた問題は、高市氏がかつて土屋正忠衆議院議員(当時は武蔵野市長)らと共に『ヒトラー選挙戦略』(イスラエル大使館の抗議を受けて発売から2か月で絶版)の推薦文を書いていたことなどと合わせて国内外でセンセーショナルに報じられています。
一連の報道を受けて高市氏らはNSJAPの代表者と写真を撮影したことは認めながらも「雑誌取材でアシスタントとして来ていた人物であり思想信条などは知らなかった」と釈明しました。ところが、その取材を受けた雑誌が今年7月までオークラ出版から刊行されていた『撃論』であることが明らかになったことが新たな波紋を広げています。
この『撃論』は2006年に発刊した後、不定期の『撃論ムック』シリーズを経て2011年から今年7月まで刊行されていましたが、西尾幹二電気通信大学名誉教授が当初の原発推進から福島第一原発事故を契機に脱原発へ転換したことを中傷する中川八洋筑波大学名誉教授の寄稿掲載をめぐって西尾氏から抗議を受けたことを理由に廃刊となりました。高市氏らが取材を受けたのは廃刊の契機となった中川氏の寄稿が掲載された2011年10月の第3号ですが、NSJAP代表者が(高市氏らが言うところの「アシスタント」として)参加していたにしてはあまりにも不自然な形跡が当のNSJAPのサイト内に見出されます。
「撃論 NSJAP」を検索してみると、驚くべきことに最上位でヒットするのはNSJAPサイト内の“「保守」を銭儲けのネタにする破廉恥漢”と題する『撃論』をワック・マガジンズ発行の『WiLL』と比較して「コピー製品よろしく、このwillの表紙をパクリwillの購買力に乗っかろうとしている」と非難する文章で、その矛先は『撃論』の編集作業を行っていた編集プロダクションの清談社に向けられています。この文章ではオークラ出版は清談社から『撃論』の編集権を取り上げて西村幸祐氏(チャンネル桜コメンテーター)が編集長を務めていた『撃論ムック』シリーズ時代に立ち返れと締めくくっています。
このことから、高市氏らが取材を受けた前後から『撃論』の編集・発行サイドと『撃論ムック』シリーズ時代は親密な関係にあったNSJAP代表者の間で何らかの確執があったものと思われますが、どちらにしても高市氏らが主張するような「雑誌取材でアシスタントとして来ていた人物」と言うような関係にはこの当時からなかったことがうかがえます。
また、現在は廃刊しているとは言え『撃論ムック』シリーズ時代から在日特権を許さない市民の会(在特会)関係者が頻繁に寄稿やインタビュー記事で登場するなど『撃論』の内容自体も在特会を始め国内外で非難が高まっている極右勢力に親和的な内容でした。そのような雑誌から好意的に取り上げられる人物を要職に就けること自体が対外的なイメージの悪化を招いていることに関して、当事者はもとより任命権者の責任に発展するのは時間の問題でしょう。
画像:国家社会主義日本労働者党サイト内『「保守」を銭儲けのネタにする破廉恥漢』のページ
http://www.nsjap.com/jp/kiji/09.html