全猫好きにおすすめしたい 東京農大の猫についての企画展

  by 辛酸なめ子  Tags :  

猫好きの人は必見かもしれない、企画展「猫のすゝめ」が東京農業大学で開催。入場無料というのも素晴らしいです。会場は、世田谷区の東京農業大学「食と農」の博物館。東京農大といえば秋篠宮様が客員教授をされているやんごとない学舎です。この博物館もきれいで立派な建物でした。

会場に入ると、あいさつの言葉の中に「猫は最も小さなネコ科動物であるが、最高傑作なのだ」というレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉が引用されていて、猫好きとして賛同させられます。まず展示されているのは「猫種図鑑」。アメリカン・カールからスコティッシュ・フォールド、スフィンクス、アビシニアン、メイン・クーン、ベンガルなど20種の純血腫の写真が並んでいて圧巻です。でも本当に身近で可愛いのは雑種の猫たちかもしれません……。

「猫の行動から気持ちを知る」「猫のからだの仕組み」という猫入門的な展示も。暗いところで瞳孔が大きくなってよく見える目、音のする方向に動かせる感度がいい耳、瞬発力やジャンプ力に優れた脚など、どの部位をとっても人間より優れている気がしてなりません。一見タプタプしている猫のお腹は「ルーズスキン」と呼ばれて、内臓を守る、俊敏な動きをする、保温効果などのさまざまな役割があるとか。人間のメタボ腹や、タプタプしたお腹なんてなんの役にも立たないのに、やはり猫は素晴らしいです。かつて愛猫のお腹を触って、太ってると指摘をしたら「ニャー!」と抗議していた意味がわかりました。

展示によると、猫と人間が関わりはじめたのは約9500年前、農耕が始まった頃にさかのぼるそうです。穀物を荒らすネズミ退治に重宝されました。文明が発達し、古代エジプトでは猫が神格化。日本に猫が伝わったのは約2000年前、弥生時代という説があり、やはりネズミ対策だと言われています。現代の飼い猫はネズミなんか食べさせられることなく、快適な環境で専用フードやちゅーるなどを与えられ、役割といえば人間を癒すことに変化しています。

猫の行動についての展示では「グルーミング」「ふみふみ」「香箱座り」「ネコハラ」「せまいところが好き」などがかわいい写真と共に紹介。猫が仕事を邪魔してくる「ネコハラ」は、江戸時代の猫の足跡がついた文書でも確認できます。

ネコ科の祖先は、2500万年前に北米で誕生したと考えられています。現在は世界に2亜科、14属、40種の野生のネコ科動物が生息。ただ、現存する40種のネコたちの75%は絶滅の危機にあるそうです。地球からネコ科動物がいなくなったら、地球の生態系や波動が保たれなくなってしまいます。会場にはライオンやピューマなどのネコ科動物の剥製が展示されていて、生き物として完璧な体を拝むことができます。

ツシマヤマネコの動画も展示。対馬だけに生息する野生のネコ科動物で、国の天然記念物に指定。絶滅の恐れが高い種で、数も少ないのでこうやって映像で動く姿を見られるのは貴重です。どこかカメラを意識している目線の2頭が戯れ合う姿がかわいいです。

東京農大の動物行動学研究室の学術的な展示も興味深いです。「猫との触れ合いが人にもたらす生理・心理的効果」についての研究によると、猫を撫でているとき、人間の脳(前頭前皮質)の働きが活発になるそうです。さらに、猫に「お手」をさせて、成功した人、上手くいかなかった人の脳の活動を比べると、意外にも「上手くいかなかった人の脳は活発に動く」ことが判明。猫の適度なツンデレ具合が人間の脳を活性化させるようです。言うことを聞いてくれないのも人間の脳にはプラスで、あえてそういう行動を取ってくれているのかもしれません。

「猫の味覚のふしぎ」についても、興味深い遺伝子研究が紹介されていました。甘味は人間だけでなく、ウサギやイヌなども好きな味ですが。猫やトラ、ライオンなどネコ科動物は甘味を感じるセンサーを持っていないことが遺伝子研究によって判明。猫にとって最も必要な栄養素はタンパク質で、甘味を感知する必要はないそうです。人間などスイーツに依存しがちなのに、猫はストイックで、ますます崇高な生き物に思えます。

海外の猫研究も紹介されていました。「猫の寝方は左巻き?右巻き?」というテーマで、2025年にイタリアやドイツの研究者が論文を発表。飼い猫の睡眠姿勢について調べたら、約6割が左巻きで寝ていたそうです。猫は目覚めた時に左視野を通じて敵を素早く察知し、右脳の働きによって危機回避するからでは、と推察。ただ、そのときの気分で好きな寝方で寝ている、という意見も……。猫についてはいくら研究してもし足りません。

東京農大の動物行動学研究室についての紹介コーナーも。身近にいる動物たちについて日々研究しているそうですが、なんと厚木キャンパスの研究室は猫カフェのような空間で、現在6頭の猫たちが、研究のお手伝いをしているそうです。猫好きなら、生まれ変わったら入りたい学科です。

改めて猫へのリスペクトが高まる展示でした。人間はこうして猫の研究をしたり展示を開催したりしていますが、猫の方はそんなに人間に興味がないと思われます。片思いだからこそ常に猫を追い求めたくなってしまうのかもしれません

企画展「猫のすゝめ」
2026年4月24日(金)~2026年8月30日(日)
9:30 – 16:30
休館日:月曜日、祝日、大学が定めた日
入場料:無料
主催:東京農業大学「食と農」の博物館

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。