[©︎原子力市民委員会「見ればわかる 知れば変わる 福島原発事故15年の現在地(以下からオンラインでご一読ください)」]
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2026年3月11日で東日本大地震から約15年が経った。その当日、籠谷大学政策学部教授の大島堅一氏(CCNE座長)をオーガナイザーに据え「図解レポート」『見ればわかる 知れば変わる 福島原発事故15年の現在地』原子力市民委員会(CCNE)著の発刊の発表記者会見が開かれた。
本書は小中高大学生から社会人向けに書かれた「図解」で福島原発を巡る多岐にわたるテーマから執筆された啓発本である。
構成は第1章から第3章立てになっており、第1章を福島大学共生システム理工学類教授の後藤 忍氏(CCNE福島原発事故部会部会長)が「福島原発事故の現在地」を主題に。
第2章は法政大学社会学部教授の茅野恒秀氏(CCNE政策調査部会共同部会長)が「エネルギー・原子力政策」を。
第3章は国際環境NGO「FoE Japan」理事(気候変動・エネルギー担当)の吉田明子氏(CCNE政策調査部会共同部会長)は「脱原発社会の展望」を各章についての説明をした。
日本政府は、原発事故から15年経った今でもその教訓を顧みず、逆に原発の「最大限活用」に舵を切ってしまった。原発のリスクやコスト、核廃棄物、気候変動などの問題はどうなっているのか?世界のエネルギー動向の中で、日本の未来を拓くエネルギーの選択や意思決定はどうあればよいのか?
原発事故を直接知らない世代にもどうしても「知って欲しい」という共著者の魂のこもった珠玉の一冊が幕をあける。
第1章だけ3つのセクションに大きく分けられており、<1>原発事故の状況<2>被害の状況<3>復興と教訓継承の現実との構成だ。
<1(1〜3)>をさらに5項目に細分化した福島第一原発がどうなっているのか?汚染状況、廃炉の今後の見通しとは?プラントそのもの汚染などを包括。
<2>不可視化される「放射線被ばくによる健康影響」、「増え続ける震災関連死」、「事故処理作業員の被ばく」、「損害賠償」を取り上げた。
<3>「復興と教訓継承の現実」では「復興財政の現実」や「被災自治体」、「移住者」その姿はいかなるものか。結語に今後に向けて「福島の事故が国際機関も含めてどう扱われているのか」。締めに提起した「教訓の記憶と継承」を改めて重視する。
後藤氏は第1章を「教訓の記憶と継承」に焦点をあてた編纂にしており「公的な教材や伝承施設」では、福島第一原発事故の本質的な教訓を伝えていないとする。2018年版刊行の現「文部科学省」の副読本では内容的に後退した。2020年頃から公的な伝承施設の開所なども相次いでいる。
第2章「エネルギー・原子力政策」は(10項目)からなる。茅野氏は次のように説明した。2013年に原子力市民委員会が創設されてから3つの包括的な脱原子力会議で報告書をまとめた。15年経った時点で、現在地を改めて確認したい。合理性とリアリティーなき原発は今、私たちが直視しなければならない。この15年間、非常に無責任な報道になっている。行政や協力団体は無論のこと、市区町村に住む市民ら一人一人が責任をしっかり受け止めてきたのか。15年に際し、そのようなことは改め自省も込めて第2章を紐解いていく。(2)「安全審査」今も続く原子力「安全神話」と「無責任体制」の問題状況を図解で表記。いわゆる「新規制基準」が世界最高水準と喧伝されているが、そうは見えない。老朽化、大地震への対策、水素爆発など、危険性の解消など重大な欠陥が残されたままだ。また深刻なのは「原子力規制委員会」が「基準適合」というのは必ずしも安全を補強するものではないと表明。地域での住民は「安全だ」ということを立証する責任は訴訟を起こした住民だけに負わされ、客観的な規制概念のあり方に問題があった。(3)は「避難計画」があるのに住民を守らない。住民を被ばくから守る指針を取っていないことを問題提起する。2024年に指針の改定が行われ屋内で退避するとしてあるが、能登半島の現実を見ると、果たしてそれが現実性があるのか否か根本的な問題提起をしている。
吉田氏は第3章「脱原発社会の展望」を(7項目)の解説を担当した。
(5)「再エネを中心とした柔軟な電力システムへ」を取り上げ、「再エネは『不安定だ』というのは古い考え方だ。世界では再エネを50%以上、すでに組み込んでいる」と指摘した。国全体で使っている。原子力を止め、脱原発をし、3年前に脱原発し現在再エネ60%になっているドイツ、電力需給はこのようになっている。夏は昼間の太陽光を、そして冬は風力を活用している。太陽光の間を化石燃料、他国との融通で埋めている形になっている。変動する再エネを最大限活用することによって電力需給は柔軟性を中心に据えた考え方だ。原発、化石燃料をベースロードとして使うという今の日本政府の方向性は全く逆行するものである。また 6)「地域主導の分散型エネルギー社会へ」では化石燃料や原発を中心とした社会はやはり中央集権型、一局集中型。これを地域分散型の社会に変えていかなければならないと吉田氏は主張する。
<質疑応答>
Q)(2)本書の内容概説には見られなかった視点からあえて質疑させて頂きます。「介護保険災害臨時特例補助金」について、令和8年においても10分の8に相当する額を特別調整交付金の対象として交付する予定を国は政策にし、東日本大震災により被災した被保険者の利用者負担などの減免措置に対する財政支援の延長は果たして十分だといえるのか?
A)「介護保険」のこともだが、様々な減免措置というものが、どんどんどんどんカットされてきている。2026年度末にかなり大きな切れ目になると思う。どういうことか?「もう15年経ったんだからいいよね」っていう形で進められようとしている。それはやはり原発事故の被災と通常の自然災害による被災。大きな違いがある。復興に非常に時間がかかるし、難しい。非常に長期間かかるという状況を原子力災害はもたらす。それに対して今の政府の政策対応は認識として引き続いて追いついていない。避難者に対する支援不足だし、被災者に対する様々な税制の支援も追いついていない。住宅などもだ。災害対策法の2年間で終わるという懸念が払拭されていないことが非常に大きな問題だと思う。
本書は複雑に絡み合う福島原子力発電所事故の問題点を網羅してあるが、著者を代表して吉田氏によれば原発事故から15年が経ち、高校生や大学生の世代が原発事故を震災も含めて当時、幼少期だったという人も含めて増加傾向にある。また高校生以下の世代についてはほとんど記憶がない。そういう人たちが「原発事故」を知ろうとした時に、まとまった情報が欲しいというのが本書の企画趣旨の一つだった。再エネについてメリット、デメリットもあるが、コストや不安定さのデメリットだと見られていた。特に再エネ、エネルギー問題についての情報が非常に古い。その企画趣旨から「こうすれば原発を無くせる」「原発のない世界は今とこれからで創れる」と分かりやすくかみ砕いて概説した。日本人の国民性から原発賠償訴訟などで闘うわずかな市民というよりは次世代が受け継ぐべき「原発・再エネ」のエネルギー問題を皆さんのその目でご一読いただく契機になれば幸いだ。

