シリーズ9年ぶりの新作である『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』が11月7日に発売された。リメイクを含め過去のシリーズを手がけたアルファドリームが倒産し、アクワイアが新たに開発することとなった今作は、かつてのシリーズに関わったスタッフが開発に携わっていることも話題だ。
今年6月の「ニンテンドーダイレクト」で初めてお披露目となった際には、この奇跡のシリーズ復活に心躍ったものだ。そして実際にプレイし、「完全新作」としてこれ以上のない仕上がりに改めて驚かされた。
まずはゲームのボリュームだ。リメイク含め過去のシリーズはすべて携帯ゲーム機でリリースされており、クリアまでに必要なプレイ時間は10時間から20時間といったところ。本作ではサブエピソードもあり、プレイスタイルにもよるが、クリアまでだいたい40時間ほどかかる。据え置き型ゲーム機向けの“大作RPG”と呼ぶのに十分な仕上がりとなっている。
▲アニメーションもド派手に進化!
▲サブエピソードも充実。冒険を有利に進められる報酬ももらえるので、忙しくても飛ばしづらい……
もちろん「それなら腰を据えてやらねば」と気負う必要はない。本作は「クリアまで時間がかかる」と言うより、どちらかと言えば「気づいたらあっという間に時間が過ぎている」タイプのゲームだ。
それほどまでにワクワクする要素が満載である。まず本作の舞台となる「コネクタルランド」について。こちらは「キノコ王国」の隣国だった「マメーリア王国」(『マリオ&ルイージRPG』第1作目の舞台)などとも違う、完全なる異世界だ。新キャラもたくさん登場するし、これまでマリオ作品では見たことのない敵キャラも続々と出てくる。
▲竜巻のようなものに飲み込まれ、異世界へと飛ばされるマリオ&ルイージ
▲異世界で出会う新たなキャラクター、コネッタ
もちろん、キノピオやピーチ姫といったお馴染みの面々や、あの懐かしいキャラたちまで出てくる場面もあるので、往年のファンの心もぐっとつかんでくれる。
▲これも過去のシリーズに登場したキャラクター……に、よく似た岩礁だ
また、ここでマリオ&ルイージ兄弟に与えられた使命は、大海原へバラバラに散らばってしまった島々を巡り、元あった通りの一つの大陸として結びつけていくこと。つまり本作は、これまでのアクションゲームやRPGの「マリオ」シリーズとも違う。最初からデーン!と大きく広がる大地の上を進んでいくのではない。何があるかわからない大海原で点々と見つかる島々を少しずつ結び、やがて大きな大地を自ら作っていくような楽しみがある。
▲中央の「コネクタルツリー」が枯れ、バラバラになった「コネクタルランド」
▲コネッタが育てた新たな「コネクタル」ツリーの力を使えば、島同士をつなげることができる
▲旅を案内してくれる新キャラ・タップー。豚の鼻のように見えるのは、実は目らしい
食事で例えるなら、コース料理よりもバイキングやビュッフェ形式に近い。ただ「どれを選んでも、何から先に挑んでも良い」ということではなく、少しずつつながっていく海流に沿って進んでいくため、ある程度の道筋は決まっている。しかし「2つある島の、どちらから先に行くか」など、ストーリーの中でいくつか分岐点が存在することで、少しだけ物語の展開も変わる部分があることが驚きだった。
▲冒険の拠点となる「船島」は海流に沿って進んでいく
▲攻略を進めればどんどん島がつながり「船島」も賑やかに
中でも筆者が判断に迷ったのは、「敵地へ潜入するために、ピーチ姫が攫(さら)われ役となるか、ルイージが攫われ役となるか」の選択を迫られるシーンだ。ピーチ姫は「攫われ慣れている」と言うが、それでも本来は守るべきヒロイン。しかしルイージが攫われるとなると、助け出すまでの間はマリオひとりで冒険しなければならなくなり、バトルも上級者向けになってしまう。
▲潜入させるのはピーチ姫か、ルイージか
何より気になったのは、それぞれを選んだ際にどう物語の展開が変わるかだ。筆者はここだけすぐにでも見比べたくなり、決断の前にセーブデータを分けるという手間をかけて両方楽しんだ。しかしすべての分岐を楽しむなら、先に一度クリアして2周目をプレイする方が効率的にもよいだろう。「一度のプレイですべてをやり込もうと気負う必要はない」ということも、この分岐という要素が教えてくれている気がする。再び食事に例えるなら”味変”するような感覚で、周回プレイ時には別の分岐を楽しめばよいのだ。
▲ルイージを潜入させると、マリオひとりでこの量の敵と戦うことに
また「マリオ」のRPGシリーズといえば、戦闘中のアクションコマンドも非常に重要だ。タイミングよくボタンを押せば敵に大ダメージを与えられたり、敵の攻撃を完全に防いだり、逆に反撃を食らわせることもできる。シリーズを通して、アクション好きな筆者にとってはこれが毎回気持ちよかった。それが今作では映像がダイナミックになっていることもあり、より中毒性の高いものになっていると感じた。
▲アクションを成功させて敵に大ダメージ! マリオの身長もありえないほど伸びている
逆にアクションが苦手なプレイヤーにとってはどうか。過去作では「ストーリーが面白いからプレイしていたが、終盤はアクションがきつくてやめてしまった」という意見もSNSでちらほら目にした。なかなかアクションがキマらずストレスに感じるユーザーもいるかもしれないが、今作ではそうした苦手なプレイヤー向けの救済措置も充実している。
特にバトル中に接続する「バトルプラグ」という新要素では、カウンター攻撃がしやすくなったり、HPが減ったら自動的にアイテムを消費して回復してくれたりするものなど、バトルの助けになるサポートがさまざまだ。
▲カウンター攻撃がしやすくなる「らくらくカウンター」をセット
▲敵の攻撃の際、ハンマーが大きくなって反撃しやすくなる
もちろん、アクションコマンドでExcellentを出すことで、さらなる追加ダメージを与えたり敵を「めまわし」状態にするなど、バトル上級者が大きな恩恵が受けられるものもある。使用回数に限りはあるが、ゼロになってもしばらくバトルを重ねることで再び使えるようになるので、いろいろ試して自分に合ったバトルプラグの組み合わせを選ぶのも楽しみのひとつとなっている。
他にも胸躍るBGMや、心温まるストーリーなど紹介しきれない魅力がたっぷりあるが、ルイージファンとして、「ルイージセンス」だけは最後に言及させていただこう。これはストーリー中やボスバトル中でルイージが突然閃き、難所を乗り越えたり、ボスに大ダメージを与える攻撃を繰り出してくれたりする新要素だ。
▲冒険の最中に突然ルイージが閃く、「ルイージセンス」
「閃く」と言っても、ルイージがいきなりインテリキャラに転身するわけではない。「強引すぎる!」「いや、失敗では!?」とツッコミを入れたくなるような、実にルイージらしく微笑ましいものばかりだ。
▲隙間を突破しようとするルイージ。細身を生かした「閃き」……と言うより、強引?
▲特定のボスとの戦闘中に使える「ルイージセンス」も。ここで使うと……?
「マリオ&ルイージRPG」シリーズの魅力は、やはりルイージのそうした、ちょっとおマヌケにも感じる可愛らしさにこそある。そしてマリオも、どんなときも嫌な顔をせずそれに付き合ってくれるし、兄弟の絆をどのシーンでも味わえるのが「ブラザーシップ!」をタイトルに冠したこの一作である。
▲嗚呼、美しき兄弟愛……尊みがすごい
マリオ兄弟のファンはもちろん、これまでマリオのRPGシリーズに触れてこなかった方や苦手意識を持っていた方も、そんな『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』をぜひご賞味あれ。
(文/平原学)