これを中華と呼ぶには無理筋な不思議な創作料理の数々!CINAの夏限定コースで暑さを吹き飛ばせ

  by 古川 智規  Tags :  

恵比寿にあるモダンチャイニーズレストランのCINAで夏限定のコースメニューが登場したとのことで、早速食べに行った。中華料理をどのようにいじろうと、中華は中華と思い込んでいた記者だが見事に裏切られた。コース以外の食べておくべきメニューも2品紹介するので、手始めにランチから挑戦していただきたい。

同店は四川料理を基本とした創作中華料理がメインだ。よって花椒を使用したしびれる料理や火鍋には定評がある。麻辣香鍋(マーラーシャングォ)コースは期間も数量も限定のもので、メニューを読んだだけではピンとこない。そこが楽しくもある。想像したものと同じものはほぼ出てこないと思っていい。

まずは「セロリと紅芯大根のCINAサラダ」からスタートだが、「枝豆の紹興酒漬け」「トリュフ&ビーフン」「CINA風精進から揚げ」「鉢鉢鶏 四川よだれ鶏」までを並べてもらった。

「セロリと紅芯大根のCINAサラダ」は中華料理にしてはあっさりとしていて、素材の味を重視した落ち着いたスタートだ。

「枝豆の紹興酒漬け」は普通の枝豆とは全く異なる味わいで紹興酒によるコクとうま味が凝縮されてお酒が進む。「トリュフ&ビーフン」もサラダと同様に淡い味だがトリュフの主張があるので、説明されなくてもすぐにそれとわかる高級食材だ。「CINA風精進から揚げ」はスルメのようにも豚肉のようにも見えるが、実はシイタケだ。口で噛んでいくと確かにシイタケの出汁がじんわりとあふれるが、食感は肉系のそれなのでお酒もいいがごはんが欲しい。「鉢鉢鶏 四川よだれ鶏」はおなじみのよだれ鶏だが、花椒がきいていてしびれが来る。しかし辛いことによるしびれとは異なり山椒系のものなので刺激はすぐに収まる。

続いて「季節の春巻き」はトウモロコシたっぷりの春巻きだ。スイートコーンからにじみ出る自然の甘さはほっとさせられる。ヒトが本来求めている甘みとはこういうものなのかもしれないと改めて感じる逸品だ。

さて、ここでメインの「麻辣香鍋」の具材一式が登場する。中身は「天使の海老」「帆立」「大山鶏」「加藤ポーク」、10種の季節野菜として、パプリカ・キクラゲ・蓮根・アスパラ・ヤングコーン・オクラ・マコモ茸・丹波しめじ・ジャガイモ・葉ニンニクが入っている。

これを目の前で調理してくれるのだが、これでもかと入った唐辛子で食べてもいないのに辛い。これは相当の覚悟が必要そうだ。しかも鍋と言いつつスープはほとんどなく、唐辛子で炒めているだけのようにも見える。もちろん具材から出る水分があるので、炒めているのとも違うし、煮込んでいるわけでもない不思議な鍋料理だ。どうやら重慶の名物料理からヒントを得たらしい。

中華麺以外の食材を入れ終わり丁寧に作られた「麻辣香鍋」はいかにもという香りと色で主張してくる。

皿に取り分けるとスープはなく、煮物のような感じだ。ごはんを注文して食べてみると不思議なことに、辛いといえば辛いが丁寧に調理して唐辛子をつぶしていないのでそれほど感じない。むしろ花椒のしびれの方が強いくらいだ。よって汗が噴き出ることはなく、美味しい辛さだけをいただくまさに「美味しいとこ取り」の料理だ。

食べ終わると少量のスープを注いで中華麺を投入して締めの「何か」を作ってくれる。このスープは唐辛子のエキスを十分にもらって、中華麺に吸われた後になくなる。

皿に取り分けられた中華麺は汁なしラーメンか焼きそばのような、やはり曖昧な麺としか言いようがないが、辛さやうま味が十分すぎるほどしみ込んだ、麺そのものので鍋全体を味わうものだった。

最後は4種類から選択するデザートだ。この選択も迷う。しかし凍頂烏龍茶に反応した記者は凍頂烏龍茶プリンにした。凍頂烏龍茶は台湾を代表する烏龍茶だ。

これをプリンにすると、日本で好まれるほうじ茶プリンよりも濃厚で味わい深いものが出来上がる。これだけは思った通りの味で甘いのだが男性でもほっとするプリンだ。

舌にのせてじっくりと茶葉を味わっていると、緑茶も製茶も紅茶も同じ茶葉なんだということがよくわかる、デザートでも素材の味を大切にしたほっこりプリンだった。
これでコースは終了だ。時間をかけて少量ずつ多くの種類の料理を食べるので、お腹いっぱいになる。最後にランチでも食べていただきたい美味しすぎるメニューを2品紹介する。

番外編

記者は「中華料理店はチャーハンが美味しければ何を食べても美味しい」と思っている。そこで「蟹と濃厚卵のカニ玉チャーハン」を食べてみた。カニも卵も一級品だが、大切なのは焼きめし部分だ。
カニ玉が乗っていてもパラっとした飯は中華料理の基本だ。具でも味付けでもなく、水で炊くごはんを炒めることは実は難しい。美味しく食べることができる「蟹と濃厚卵のカニ玉チャーハン」は高級食材をふんだんに使っているが、基本を押さえたチャーハンとしてランチで本物を味わっていただきたい。

「イベリコ豚とフレッシュベリーの黒スブタ」と書かれていたのだが、出てきたのは豚肉だけ。野菜も賛否あるがパイナップルもない。イベリコ豚はブランド肉だが、ブドウから作られるバルサミコ酢ではなく、黒酢をベースとしてベリーを加えたもので酢豚を作っている。肉はかりっと焼き上げられ、そこにベリー黒酢が濃厚な肉の味を封じ込めている。これ一皿で丼飯を軽く食べることができるほど完成された料理なので、近くにあればランチで週一で通っているだろう。ランチのご飯はお代わり自由なのでまさにどんぶり飯OKだ。
少し変わった中華料理だったが、特に辛さだけを強調しているわけではないので、美味しく食べて暑気を吹き飛ばす原動力にしたい力の出る中華だった。

※写真はすべて記者撮影

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