「昔の西成」はこうだった!あいりん地区に住んでみたらどうなったか?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

私も家庭を持ち、子供も増え、今では危ない潜入取材を避けるようになった。

それにしても、様々なヤバいところに住んでみた経験をガジェット通信でもいくつかご紹介したのだが、

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一番コワい体験をしたのは、当時バックパッカーなどの外国人観光客などがまったくいなかった頃の「昔の西成」。あいりん地区や釜ヶ崎などと呼ばれる労働者の街のことだ。あのころはいつ暴動が起こるかわからないというようなピリピリムードが漂っていて、とにかくコワかった。

今回は筆者が潜入取材として一度日雇い労働者の街・西成のマンションに住んだ経験をもとに、そのとき起こった騒動の数々を“実録ルポ”として綴っていきたいと思う。

兄ちゃん、処方薬売るバイトせえへんか

当時、筆者は31歳。潜入ライターとしてバリバリの現役だったわけだ。そこで、当時お世話になっていた某雑誌の編集部から依頼で、《衝撃! 現役ライターが実際に西成に住んでみた!》という記事を書くことになった。

とはいえ、どこかに「アメリカのスラムじゃあるまいし、そんなにコワいわけないやろ」という少しナメた認識があったのは否めない。

敷金礼金0円、家賃+管理費19,000円という激安マンションと近所のバーの仕事をネタ元から紹介してもらい、最長1週間の取材に出かける。しかし、取材当日、西成区萩之茶屋にある三角公園の今では見る影もない露店を覗いてみると、盗撮した海賊版ビデオやビニ本、注射器、片方だけの靴が売られていて、唖然としてしまう。

さらに、当時の萩之茶屋のコンビニには《トイレに注射器を捨てないでください! 詰まって困ります!》という張り紙が……。

「これは、尋常じゃない雰囲気の街だぞ……」

労働者の街・西成初体験の自分としては、そのカルチャーショックたるやハンパなかった。そのとき、突然声をかけられる。

「なぁ、兄ちゃん、あんなぁ、仕事ないんやったら病院からの処方薬売るバイトせえへんか?」

ヒ、ヒィィィ!! なんだこのオヤジは! ここは、そんなもんまで売ってるのかよ! 筆者はその場を飛び退って、逃げ出した。数百メートル走り、その場でワナワナと腰砕けし、勇んでやってきたことをこのときに後悔。しかし、後悔先に立たず。潜入取材するしかない。そう決意して、短期入居するマンションにむかった。

畳の間から小さい〇〇〇〇がいっぱい出てくる

しばしの間入居する雨だれだらけのマンションは、新世界をぬけたあたりにマンモス団地のようにそびえたっていた。多くのベランダに吊るされたシワシワのモモヒキ。高齢者が多いのだろうか、マンションのエントランスには《即日融資》《年金融資》などのチラシが張り巡らされていた。

タグ文字のいたずら書きが目立つステンレス製の郵便ポストが並び、ことごとく破壊されている。う、ううん……なかなかパンチがあるなぁ……。もう“異世界”やないか……。

今では見かけることが少なくなった黒く丸いエレベーターのボタンを押すと、途中で止まるのではないかというような異音が「ゴウン!」と鳴り響き、目的の5階へ。

マンションのカギも当時でもすぐにピッキングされそうなピンタンブラー錠。中はブラウン管テレビと冷蔵庫が置かれたがらりとした6畳間だった。下着4枚と上着を2枚、シャツ4枚、携帯電話、ノートPCが入ったバッグを置き、所持金を確かめる。すると、モゾモゾという音がどこからともなく聞こえてきた。なんや、なんや! コワい、コワい!

部屋のいたるところを確認すると、畳のすき間が蠢いていた。そう、小さな子供のゴキブリだ! 部屋に入ったために足で押されたのか、それが逃げ出すように這い出てくる。ギャア~!!

とにかく泣きながらバッグの中にあったエアロパーツのパンフレットでゴキブリを潰しまくる。そのうえで、畳のすき間に体重をかけて畳の中で皆殺しにした。あぁぁ、これからどうなるんやろか……。近所で買った缶チューハイを飲みながら、また姿を現すかもしれない子ゴキブリに怯えながら、その部屋でひとりその夜を過ごした。

違法ギャンブルスタジオ、通称・ドームに潜入

次の日、とりあえず街を散策。まぁ、職にあぶれた労働者が路上で酒盛りをしていたり、「ハレルヤ」と合唱しながら炊き出しに並ぶ連中がいたりと街は騒々しい。

ブランチは、バラックのような店『きらく』で、豚フワ(肺)の入ったホルモンうどんをズルズルと日本酒で胃に流し込む。食欲はないが、人間食べないと生きてはいけない。

ホルモン中華そばを啜り込んでいると、隣では50がらみの男たちが、賭場の話をしていた。

どうも、三角公園に隣接するマンションの3棟の1階をつないだ『福助』という賭場があるらしい。男たちの後をつけていく。まるで、男たちの連れ合いのようにそっと中に入ると、巨大なワンフロアにその日のレースをモニタリングしたテレビが複数台掲げられていた。なんじゃここは!

そこは通称・ドームと呼ばれるサテライトスタジオで、競輪・競馬のヤミ券が買えるようだった。ペン型カメラを向けいたるところを撮影。2口200円からの購入が可能で、最大2万円までかけることが可能なようだ。配当は公営ギャンブル場のオッズ通りで、胴元は“テラ銭”として掛け金25%を徴収しているようだった。

周囲を見渡すと、お客はどうも日雇い労働者や生活保護者などが多そう。後でわかったことだが、生活保護費支給の月初め以外は、客は明らかに目減りして、カレーライスやおにぎりなどが無料提供される。ギャンブルのルールがわからない筆者は、その実情を目の当たりにして、夜にバイトで入るバーへとむかった。ここ西成の住人のことをさらに知るために、ネタ元に紹介してもらったバーである。

マンションからの〇〇〇〇、そのときホームレスたちは?

この日、バーでは近くのスナックで働く品のないケバい女に誘われたが、断って帰路についた。

部屋で缶チューハイを開け、一気にあおる。やっぱりむさくるしい部屋だ。この雰囲気、「誰か死んだことくらいあるんじゃないのか?」と思っていると、

【ゴンッ!】

ベランダ側から鈍く大きな衝撃音があった。急いで音があったベランダに出て確認すると、手すりに凹み。階下には、足が折れ曲がった女が倒れている。なんだ、どういうことだ? ああ、女の飛び降り自殺だ。恐らくは上から落ちて、この部屋のベランダの手すりに一度バウンドして、下に落ちたということなのか。

様子を窺っていると、近くで酒盛りをしていたホームレスたちが女の死体ににじり寄っている。なにをする気だ?

男たちは、女のスカートをたくし上げたり、死体を撫でたりしている。なにやってる!?!! もう、西成は嫌だ! 我慢の限界!!! 次の日、筆者は荷物をまとめてその部屋を出た。

―― ここまでは、あくまで過去の西成で起こった話。今では大阪府と市の努力の賜物で、西成はクリーンなイメージに塗り替えられつつある。あのころ労働者の街だった西成・萩之茶屋に、当時の面影はほぼない。

新世界や西成の簡易宿泊施設など、今や安全で安くて楽しい街を拠点に観光などを楽しんでほしい。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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