阿波踊りに大歩危、小歩危、鳴門の渦潮、吉野川……数多くの名物と長い歴史をほこる徳島県。しかし観光の面では『都道府県の魅力度ランキング2017』(ブランド総合研究所調べ)ではワースト2、2016年度『都道府県別延べ宿泊者数』(観光庁調べ)ではなんと最下位を記録してしまう地味っぷりだ。
450年前には天下人と称された戦国大名・三好長慶を輩出し、ある意味で日本の中心だった徳島がなぜ!? 観光客が寄り付かないからと言って徳島に魅力がないわけではないはずだ。今回、県のご協力を得て11月9日から10日にかけて僕、中将タカノリが徳島各地を巡りその実態を調査してきた。
僕が徳島をじっくり訪れるのは約十年ぶり。縁もゆかりもなければこれと言った思い入れもない。ただ、関西のTV各局の受信エリアなので、番組やCMを介して知ってくれてる人がいればいいなとかすかな期待をこめて神戸淡路鳴門自動車道を渡った。
まず初めに訪れたのは県北東部の鳴門市は『漁協食堂うずしお』。
北灘漁業協同組合が運営する道の駅にあり、獲りたての魚介類や農作物を販売するショップ『さかな市』が併設されている。
こちらでいただいたのは『すだちぶり』。潮の流れの速いこの近海で養殖したぶりはよく身が締まって元々評判がいいのだが、さらに徳島名産すだちを添加したエサを与えヘルシーに育てたのものがすだちぶり。一般のぶりにくらべビタミンEの含有量が3~4倍にもなり、酸化しにくく鮮度の持ちがいいらしい。
すだちぶり刺身の定食は刺身にごはん、小鉢2つ、漬物、わかめたっぷりの味噌汁がついてくる。
僕はあまり刺身とごはんを食べ合わせるのが好きではない。しかし、このすだちぶりは生臭みがなく、後味がすっきりしているのでごはんに非常によく合う。醤油をつけずに口に入れても大丈夫なくらいだ。
どことなくすだちを思わせる澄んだ印象だが、それゆえに余計な脂っこさや臭いに邪魔されずぶりがもつ旨みを純粋に味わえる。今回はお昼時なのでアルコールは遠慮したが、日本酒、特に熱燗にはうってつけだろうと思う。
漁協食堂うずしお
【所在地】
徳島県鳴門市北灘町宿毛谷字相ヶ谷23
【電話番号】
088-682-0037
【営業時間】
10:00~20:00
【定休日】
無休
【ホームページ】
http://www.jf-kitanada.com/
続けて向かったのは鳴門市中心部にほど近い『THE NARUTO BASE』。
県内の農家、畜産家と連携して徳島の物産を発信するために2016年に設けられた飲食、直売、加工の複合施設だ。
発信とか複合とか書くと堅苦しいが、お店自体は内装、外装ともにすっきりしたデザインでなんともお洒落。ロードサイドで広い駐車場も備わっているので、常に地元の人や観光客でにぎわっている。
こちらでいただいたのが『鳴門金時ぜんざい』。
すだちをきかせて砂糖煮されたブランドさつまいもがごろっと入ったぜんざいで、フレンチ出身のシェフが徳島らしさにこだわりつつも舌の肥えた現代人の感覚をとらえようと開発した逸品スイーツだ。
隠し味にエスプレッソコーヒーが入っているので、甘党じゃない人にも嬉しい引き締まった味わい。食べる直前に和三盆を振りかけるのがお店おススメの食べ方だが、優しく上品な甘みが加わってなおよし。白玉もいわゆる団子ではなく、地元の豆腐を使ったもの。口に含めばとろけるほどやわらかく、軽い。
ぜんざいのいなたいイメージを、見た目は崩すことなく味の組み立てという面でくつがえした個人的ヒット商品だった。観光客にとっては徳島市までの通過地点になってしまいやすい鳴門だが、これを味わうためだけに立ち寄る価値アリだ。
THE NARUTO BASE
(レストランとしては『FARM to TABLE』)【所在地】
徳島県鳴門市撫養町黒崎松島125
【電話番号】
088-602-8882
【営業時間】
レストラン11:00~23:00
産直店舗11:00~19:00
【定休日】
無休
【ホームページ】
http://www.qoopa-market.jp/fs/qpm01/c/top
鳴門市でお腹いっぱいになった後は県最南端の太平洋側へ移動。
途中、食後の運動がてら阿南市の猫スポット『お松大権現』を散策し……
海や山をながめつつ車にゆられること二時間少々、海陽町に到着した。
海陽町は海運を通して古来より関西との結びつきが強く、田舎ではあるが文化の蓄積がある地域だ。また豊かな自然に恵まれた”メシのうまい”地域としても知られている。
この日の晩餐の地に選んだのは『笑舌(ごち)』。
古民家風の内装で、地元の食材にこだわった地元で人気の和風居酒屋だ。
いろんなものをいただいたが、特筆したいものは『海賊焼き』。
水揚げが少ないため一般にはあまり知られていないが、味は車エビにも勝ると言われる足赤エビはじめ、サザエ、はまぐりなど旬の海の幸を豪快に七輪で焼いてゆく。
エビは軽く焼くだけで皮ごとパリパリと食べられる。身もふっくらとしてキメが細かくて美味いが、頭のミソの美味さは格別。濃厚な、ねっとりした旨みが口内に広がったところにここらの地酒を流し込めば気分はもうビバ徳島。
貝類もつゆと一緒にほおばり、酒を飲めば即席酒蒸しだ。とにかく美味い!
魚を焼きたければキンメがおススメ。
頬の周辺の肉、目の周辺のゼラチンの上品で鮮やかな味わい……ついばんでいると永遠に酒がすすんでしまう。
海賊焼きはただ焼くだけのシンプルな料理と思いがちだ。実際そんな店もあるだろう。
しかし今回いただいたものは、素材が新鮮であることはもちろん、よく見るとそれぞれに適切な下ごしらえがほどこしてあることがわかった。徳島の海の恵みを、最善の形で口に運ぶために考え抜かれた料理こそがこの笑舌の海賊焼きなのだ。笑舌を訪れずして海賊焼きを語るなかれ。
ついつい海賊焼きのことばかり書きすぎたが、こちらではかの究極のグルメ漫画『美味しんぼ』でもとり上げられた郷土食『ボウゼの姿寿司』や地の『ウナギの白焼き』などさまざまな郷土の逸品がいただける。
徳島南部に足を運ぶならぜひ訪れていただきたいお店だ。
笑舌(ごち)
【所在地】
徳島県海部郡海陽町奥浦字町内133-1
【電話番号】
0884-73-4016
【営業時間】
18:00~22:00
【定休日】
月曜
いきなり徳島の底力を見せつけられた徳島グルメツアー1日目。
お腹いっぱい、肝臓もアルコールいっぱいになった体を『ホテル リビエラししくい』で休めた。いいものばっかり食べてるのと、温泉がいいのとで気持ち悪くなることもなく朝まで熟睡させていただけた。
2日目もB級グルメを中心にこれまた凄いメニューの数々をいただいたが、すでに長文になってしまったのでそちらは『これで魅力度ワースト2位!?徳島県の山海グルメを味わい尽くすレポート2日目』をご覧になっていただきたい。乞うご期待。