日本においては、患者さんから治療を求められた場合、医師は正当な理由がなければ治療を拒んではならないと医師法第19条第1項で決められています(応召義務といいます)。
とはいえ、お医者さんがそばにいない場合はどうにもなりませんよね。もっとも困るのは、航空機の中や、船舶などの中で急病人が発生した場合。
ドラマなどでCAが「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」と尋ねてまわるシーンを見たことがいるかもしれません。
実際のところ、航空機の内部は気圧の関係などもあって、急病人(傷病者)は、1分1秒を争う状態に陥ることが珍しくありません。
最低限の治療ができる医療キットが航空機内に搭載することを義務付けている航空会社も多いですが、実際は医師が迅速に診断を行って、出発した空港に引き返したり、近くの空港に緊急着陸して、病院へ搬送しなければいけないことも多いです。
こういった場合も、医師が機内にいるかどうかで、生死を分けることになりかねません、
航空機の乗客の中に医師がいるかを把握するために、日本航空と日本医師会は、医師免許を持つ乗客にあらかじめ登録してもらう「JAL DOCTOR登録制度」を開始すると発表。
本来、医師国家試験に合格して厚生労働大臣から授与される医師免許証は、卒業証書のような大きさのため、ほとんどの医師が持ち歩くことはありません。また、顔写真が登録されていないため、医師免許を偽造して無資格診療が行われてしまうケースが時折摘発されることがあります。
日本医師会は、医師であることを簡便に証明するために、電子認証が可能な医師資格証を発行しています。
医師資格証明書は、運転免許証程度の大きさ。生年月日はもちろん、医師国家試験に合格した際に厚生労働省から付与される医籍登録番号も記載されますので、すぐに医師であるかが確認できます。
悪用対策のためか、電子認証機能は2年、医師資格証は6年間有効とされています。とはいえ、急な傷病者(患者)が発生した場合に、医師であることを確認しやすくなるのは間違いありません。
日本航空は、この医師資格証明書に着目。
JAL DOCTOR登録制度に参加できるのは、事前に医師資格証を持つJALマイレージバンク会員が対象。事前に登録した医師の乗客の座席位置が把握できるなどのシステムとなっており、傷病者(急病人)が発生した場合でも、他のお客の混乱を招かず、迅速な対応が可能となります。
どれだけのお医者さんが協力してくれるかといった問題はありますが、こういった制度は歓迎したいですね。
※写真は 日本医師会電子認証センター 医師資格証の案内のページ http://www.jmaca.med.or.jp/guide/qualification.html より引用