最近のマンガ界とインターネット、特にSNSは切っても切れない関係だ。
それまで「アンケート至上主義」と言われていた読者アンケートでの連載継続を決めるシステムもネットの評判や単行本の初週の売り上げの数字で左右されるようになってきた。
そんな中、1週間ほど前から単行本の売り上げを一気に伸ばしたマンガがある。
それが今回紹介する『クロエの流儀』だ。
『クロエの流儀』ってどんなマンガ？
『クロエの流儀』とは今井大輔のマンガ作品である
碧眼美少女ＪＫ、日出ずる国を一刀両断！
日本の高校に通うフランス出身女子、クロエ。
可憐なビジュアルを裏切る殿様口調でリスペクトするは、潔き日本文化なり…！
日常の何気なくも引っ掛かる瞬間を、遠慮無用で斬る！
異色のサムライ女子高生ショート、ついに待望の単行本化！
(日本文芸社紹介文より)
現在このマンガがツイッターを中心に話題となり、書店などでは売り切れが続出しているとのこと
今回は筆者が極秘に入手したこのマンガをぶった斬っていこうとする。
(以下はネタバレになる可能性があるので読後の方、ネタバレOKの方はどうぞ)
率直な感想
率直な感想だが、読んでて不愉快になる。
マンガは平均7〜8ページのショート集となっておりテンポよく読みやすいが
作者が言いたいことをそのままキャラクターに言わせているようで解釈の面白みがない
1話ならまだしもこの巻に収録されているのは20話と詰まっている。しかし話のリズム、主人公が言いたいことは大体同じなので途中で飽きる。
社会でよくある理不尽、正しいとされている屁理屈を屁理屈で返しているだけなので問題解決を何ひとつとしていない。それはマンガ作品、言ってしまえば文字作品としては最低な行いである。
マンガという娯楽作品に正しさや論理を求めるのもナンセンスではあるがこれはあくまで「商業作品」である。そんなに何か言いたいことがあるのなら同人もしくはチラシの裏にでも描いていただきたい。
(あくまで個人の感想です)
とまぁ『クロエの流儀』に出てきそうなセリフを感想にしてみたが、個人的にはこの作品は面白いとは思えなかった。しかしこの作品の売り上げは確実に伸びている。その原因はどこにあるのか真面目に分析していこう
『クロエの流儀』が売れた理由ってなんなの？
『クロエの流儀』がウケたかはさておき、なぜこの作品の単行本が売れたのか、そこを知る必要がある。
この作品が人々に大きく見られるようになったのは単行本収録14話「成人」という話の一部が成人式の日にTwitter上にアップされ、それが人々の目に留まり一気に拡散された。
正直この拡散はステマではないにしても、この作品そのものがTwitterなどで拡散されやすく、それも狙って描いたものだと見受けられる。
Twitterに拡散されるマンガとは
「頑張るぞい」を筆頭にネットから有名になったマンガは現代のネット社会では少なくない事例である。
その多くの特徴を挙げると
背景がない
できるだけ大ゴマを使う
キャラクターの線が細い、少ない
言葉もツイッターサイズ(140文字以内)
これらの特徴がネットから有名になったマンガに多くある特徴である
そこに『クロエの流儀』は
言って欲しかったセリフ
を足したことによってツイッターユーザーに気に入られたようだ。
自分が言いたくても言えなかったこと、ネットに書いたら叩かれそう、もしくは叩かれたことを胸を張って吐きすてるクロエに人々は「共感」したのだろう。
しかし冷静になって読んでみるとクロエが振り回しているのは言葉の刀ではなく、ただのブーメランであること、そこで読者の意見が分かれる。しかしそれは悪いわけではなくむしろ良いことである。読者全員が同じ感想を持つマンガに何の魅力があるのだろうか。
『クロエの流儀』というマンガは一つの火種としてネットでの議論の場を作ってくれたのかもしれない。
まとめ
ざっくりな内容となったが『クロエの流儀』如何だっただろうか
作者に怒られそうなことや、他の反感を買いそうなことも多々書いたが個人的には満足したものが書けた。
これから先のマンガ界はネットのユーザーにまず興味を引かせ単行本を買わせる商法が増えていくのだろうか。
しかしその方法は間違ってはいない。今や何十という漫画が一斉に発売されるなか、自分の作品を買ってもらうための立派な戦術だ。
自分の言いたいことも言えずに伝えたいことも伝えられずに終わっていくマンガはこれまで何十何百とある。
マンガ界、いや現在のエンタメカルチャー、メディアの世界は戦場である。どうやって生き抜いていこうかそこから考えなくてはならない
その作品が本当に面白いかは別として
ちなみに個人的な感想を書いたりするのはライターとしてご法度です
