芸人に対する『顔ファン』って何でしょうね?

ジャニーズや俳優、ミュージシャンなどそれぞれにファンはついているものです。

特にテレビなどのメディアに出ている方たちには、芸能人はもちろんのことですがときにアスリートやその他文化人や著名人など、どのようなジャンルの方にも何らかの形でファンは存在するものなのです。

そういった中でときどきささやかれる単語、そしてファン同士でもいさかいの元となってしまう単語それが『顔ファン』です。

顔ファンとは、その語のとおり顔のファンということです。つまり、その方がどのようなジャンルの方であろうと、顔が好きだからファンであるということです。

それって当たり前じゃん?っていう気もしなくはないですね。
アイドルや俳優なんて顔ありきのようなところはありますし、ときに熱狂的な人気を博しているスポーツ選手などもおられますが、本当にその方のプレイスタイルや強さなどが好きという方だけが必ずしもファンではないであろうということは何となく予想がつきます。

そして、例えばアイドルのダンスだったり俳優の演技だったりスポーツ選手のプレイだったりミュージシャンの音楽だったり、もともとその方が属しているジャンルについて好きだという方と、いわゆる顔ファンとの間には、えてして溝ができることがあります。
特に、その方が属するジャンルが顔と特に関係ないものであればあるほどそうなる傾向にあるわけです。

人気のスポーツ選手のプレイがただ見たいというファンの隣で顔ファンが「キャーッ」と黄色い声援を上げていればプレイのファンは顔をしかめますし、ミュージシャンの音楽が聴きたいのにちょっと彼らがいい顔をしたらやっぱり顔ファンが「キャーッ」って言って曲の邪魔をされた音楽ファンは敬遠する、など。
こうした場面は意外と多く見られるものなのです。

さて、そんな中で注目したいのは、『お笑い芸人の顔ファン』です。

人気の高いお笑い芸人にも、ときにそうでもない芸人にも顔ファンは存在します。確実に存在します。
中にはアイドル的扱いを受け、中高生女子に高い人気を誇り、劇場の出番の後には楽屋口に長蛇の出待ちの列ができる芸人もたくさんいます。

冒頭に貼った画像は、先日発表された『よしもと男前ランキング2015』について報じたサイトのスクショですが、このとおり「芸人を顔でランキングする」ということが特によしもとの芸人では当たり前のこととなっています。
この事務所は、芸人のアイドル売りという戦略にもよく出ますから、その動きはあってしかるべきではあるのですが…。

今回男前1位に輝いたパンサー・向井さんは、もちろん芸人としての才も買われて人気が出ているわけですが、何と言っても見る者を平和にさせるファニーフェイスが大きな特徴であることは確かです。
実際、世の中の向井さんファンからは「むーちゃん(向井さん)面白い」よりも「むーちゃん可愛い」という声の方がよく聞かれるくらいです。

さて、ここで考えるべきは、

それでいいのか

ということなわけです。

特に否定するわけではないのですが、「顔が好き」という視点は、お笑いを見るにおいても1枚のフィルターをかけてしまう可能性はあり得ることです。

芸人とは面白い人たちであるということがもともと第一の条件ですから、面白くなければ意味がないともいえます。
にもかかわらず、ときに顔が好きということと、面白くて好きということの線引きがあいまいになることもえてして起こってしまうと考えられるのです。

つまり、顔が好き=芸人として好き=面白い人だから好き
という無意識のすり替えが起こりうるのではないかということです。

もちろん、この視点の違いについて分別がついている場合は問題ないですが、ときに本当にそれを混同してしまい、「私が好きな○○さんは世界一面白い」という勘違いを顔ファンが起こしてしまっている傾向もなきにしもあらずなのです。

具体的な例として、あくまで結果を見たのみの見解で挙げますが、2013年・2014年のTHE MANZAIにおけるチーモンチョーチュウについて。
チーモンチョーチュウはボケの白井さん・ツッコミの菊地さん2人ともそれぞれに男前で、個人としてもコンビとしても人気が高く、2013年(決勝進出・Aブロックで千鳥に敗れる)・2014年(ワイルドカード進出・決勝ならず)とも国民の優勝予想では1位を獲得しています。
この結果にあれ?と思った方は少なくないのではないでしょうか。
2013年の決勝には、優勝したウーマンラッシュアワーや、今年こそ優勝と目されていた千鳥など強豪がそろっていましたし、2014年は決勝進出者の厚い壁に阻まれてワイルドカード出場止まりという結果となっています。
つまり、(筆者は個人的に好きですが)チーモンチョーチュウの実力自体は、他の強い芸人を凌駕するには及ばないと見ることができるわけです。
にもかかわらず、なぜ連続で「この人たちが優勝する!」と予想した人数を一番獲得できたのでしょうか。

ここには、あの『顔ファン』の存在が見え隠れしていると考えられます。
実際に2013年のTHE MANZAIにおいてこのコンビが紹介されるとき、10代女性から圧倒的支持を得ているという旨のナレーションがあったと記憶しています。
それだけで判断するのも尚早ではないかとも思えますが、この国民票と実際の結果を照らし合わせると、やはり「チーモンの顔ファンが“彼らが一番だ”と勘違いしている」という仮説に辿りついてしまうのです。

このねじれの図式は、必ずしも否定すべきものではないかもしれませんが、やはり順当ではない動きとして見てしまうことは止められず、何だか座りの悪い感覚に陥らざるを得ません。
とはいえ、よしもとのように実際にイケメンを前面に押し出す戦略を取っているパターンもありますし、そこに乗っかった方を責めるのもお門違いであることは確かです。

そんな中、本当に面白いって何だろうということをぶれさせない視点とは、お笑いを愛する視聴者としてはしっかりと持っておかないといけないのだと感じる今日この頃です。

※画像はマイナビニュース2015年3月3日「よしもと男前ランキング、パンサー・向井が1位 ブサイクはシソンヌ長谷川」記事のスクリーンショット 
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/03/119/

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