今飛ぶ鳥を落とす勢い、いや走り回るネコに噛みつく勢いで話題になっているバンド『キュウソネコカミ』。
名前を聞いたことならあるけど、という方も徐々に増えているのではないでしょうか。
最近は数多くの音楽フェスにも出演、地上波の朝のバラエティ番組にも話題に取り上げられるようになってきました。
彼らは2009年結成、精力的にライブ活動を行っているうちにビクターエンタテインメントに拾われ、2014年にメジャーデビューした、まだまだ若手の5人組バンドです。
メジャーレーベルからデビューしたにもかかわらず、2015年3月現在も未だに彼らの拠点である兵庫県・西宮市に居座って全国を飛び回っているという地元大好きバンドでもあります。
いわく「“キュウソ日和ってんな”って言われたくない」とのこと。
どこまで本気か冗談かはさておき。
彼らを語るときに特にクローズアップされるのは、その独特の歌詞世界。
例えば、
周りにいるムカつく奴らをディスりまくるがどこか笑える歌詞が話題となり、どのフェスに出演しても入場規制を連発している。
(日刊アメーバニュース2014年07月02日記事「キュウソネコカミ,グドモ,パスピエ,etc…、FaRaoで今知っておくべき『カタカナ名ロックバンドチャンネル』開設!」より引用 http://news.ameba.jp/20140702-539/)
であったり、
鬱屈した青春のアンセム
(RO69「COUNTDOWNJAPAN14/15クイックレポート」より引用 http://ro69.jp/quick/cdj1415/116040)
であったりというコメントが随所に寄せられているのです。
これらを見ると、世間にムカついて鬱屈とした気分を歌詞に載せてdisりまくっている連中という印象を受けます。実際に歌詞の一部を紹介すると、
チャラいだけで無能な
あのクソDJしばきたい
ミュージシャン気取りで調子こく
あのDJを黙らせたい
※キュウソネコカミ『良いDJ』歌詞より引用
電車に飛び込む自殺志願者、
そして落ちまくるくそ酔っぱらい共
お前らいったい何回
JR遅延さすんじゃ!!
※キュウソネコカミ『お願いシェンロン』歌詞より引用
こんな感じ。
これを書いた奴は毎日どれだけ溜まってるんだと言わざるを得ない痛快な文句言いっぷりです。
確かに、誰かがどこかで若干イラッとしながら思ってるだろうなという日常的な怒りをババンと歌詞に乗っけたともいえるかもしれません。
実際にこれを、うら若き青年が楽曲に乗せて歌っているんですから、初めて聴くときはぎょっとしなくもないです。
ただし、キュウソネコカミがすごいのは、この歌詞世界だけではないのです。
ここからは筆者個人の感想となるため、「それは違うんちゃう?」と思った方やエゴサーチでたどり着いたご本人たちおよび関係者各位にはご了承いただきたいと思います。
この強烈な歌詞の印象に引っ張られてあまり気付く人がいないのですが、キュウソネコカミがこのさまざまな文句を楽曲に乗せることができるのは、周りを固める音が確実に地に足のついた安定感を放っているからなのです。
キュウソネコカミの曲を聴くと、印象的に残る音の1つがキーボードです。
いわゆるおしゃれな音として鳴らされるわけではなく、ここにある音はどこかピコピコしていてみょーんとしていて、何と言うかいい意味でチープなカラフルさを持っています。
Key.ヨコタ シンノスケがインタビューや自身のTwitterなどで、80年代90年代の歌謡曲が好きといった旨のコメントをしていますが、まさにその系譜を汲んだポップさが彼のキーボードの音によってもたらされます。
また、軽くなりすぎない重厚さを生むのが心地よいうねりを生むベースの音。Ba.カワクボ タクロウが奏でるベースラインは楽曲に厚みを出し、攻撃性の中にもどっしりと構えた音に仕上げています。
ベースの音でも自然と体が動きだし、勝手に踊ることができるラインの豊かさは、他のバンドと比べてベース音がよりクローズアップされていることから聴き取ることができます。
パンク色が強いのかと思えばどこかポップで耳に残るフレーズが随所にあるのは、ギターが奏でるラインの印象でもあります。
キュウソネコカミはその編成上、Gt.オカザワ カズマがメインのラインを弾き、Gt.&Vo.ヤマサキ セイヤがサブもしくはアクセントとしてギターラインを入れるような形を採っているようです。この2人のツインギター、またメインギターが腹の内臓をがっしりと掴むようなラインを奏で、そこにサブが加わることでギターの音をより印象づけています。
そして特筆したいのが、キュウソネコカミにおけるドラムの緻密さです。
Dr.ソゴウ タイスケが叩くドラムの音とは、豊かな表情を持っているというよりはわりと淡々とクールに響いています。しかしとにかく正確。緻密。スローなリズムも速いビートも、おそらく難しいであろうミドルテンポも寸分の狂いなく叩いていきます。このクールな緻密さはときに高揚感を生みだし、ときに走りがちな曲調を落ち着かせる役割も持っているのです。表情としての抑揚はそうないのに重厚にも響き、軽快にもさせる不思議なリズムを刻むドラムだと感じます。
また、やはり魅力なのはVo.ヤマサキ セイヤの声でしょう。
本人は「がなりスタイル」と自らの歌唱方を称しているようですが、声質として若干硬質である意味くせのない声は、単純に音として入りやすくなっているはずです。がなってもクリアに聴こえてきれい、と思わせる声質は、実はそう誰もが持っているものではないのではないでしょうか。
ときどき音楽ファンで「歌詞が聞きとれなかったらだめでしょ」って人がいますが、ボーカルも音として聴いたらもっと音楽が楽しくなるよって言ってあげたいです。
つまり、キュウソネコカミはまず5人が奏でる音として全てが安定し、それぞれに鳴っているという土台があり、だからこそ好き勝手なことを言っている歌詞もすっと聴けるような楽曲に仕上がっていると言えるのです。
もちろん彼らの音のよさを感じ取っている方がたくさんいるために、注目度も高まっていると思われます。
「ただのdisりバンドでしょ?中二っぽくね?」とかイメージだけで思ってしまっている方、一度彼らのハードでポップな音を聴いてみてほしいと思います。
話は音を聴いてからなんだぜ。
ってことで、キュウソネコカミの音の魅力がよくわかるMVを最後に貼っておきます。
キュウソネコカミ-「良いDJ」PV
と思ったけどやっぱり最後の最後に、こいつらの魅力全般がわかるMVも貼っておきましょうね。
キュウソネコカミ – ビビった MUSIC VIDEO
やっぱりもう1つ、日曜朝9時フジテレビ系『ドラゴンボール改』の2015年1月期EDのこちらも。
「GALAXY」MUSIC VIDEO – キュウソネコカミ
※画像はビクターエンタテインメント公式サイト・アーティスト紹介ページのスクリーンショット