華やかな大衆演劇への招待!ヒット中のコミックエッセイ「わたしの舞台は舞台裏」作者インタビュー

近年活況の大衆演劇業界で今、ファンのみならず役者や舞台関係者からも熱い支持を集めている本がある。

木丸みさきさん著のコミックエッセイ『わたしの舞台は舞台裏』(メディアファクトリー刊)だ。

裏方の仕事を通して見つめてきた大衆演劇界の人間模様を若い女性ならではのみずみずしい感性で、かつわかりやすく描いており、ヒューマンドラマとしても大衆演劇ビギナー向けの入門書としてもこの上ない作品に仕上がっている。

これまで大衆演劇を題材とした書籍はほぼ固定ファン向け定期誌や研究書に限られており、『わたしの舞台は舞台裏』のようにオリジナル作品のコミックとして昇華された例はきわめて特殊。

『わたしの舞台は舞台裏』はどのような背景で執筆されたのだろうか。

著者の木丸みさきさんにインタビューした。

・『わたしの舞台は舞台裏』を書かれたきっかけを教えてください。

木丸:元々マンガを読むことが好きでしたが、いろんなテーマのマンガがあるのに大衆演劇のマンガがなくて、
「誰か描いてくれへんかなあ、面白いと思うんやけどなあ」と思ってたんです。

小さいときに漠然と「マンガ家になりたい」と思ってたことがあって、大人になってからも落書きみたいな絵を描いていたので「ほな自分で描いたらええんや」と考えました。
なんとなく描いていても、なかなか進まないので、本にして出版することを目標にしました。
で、いろいろ調べてみたらKADOKAWAメディアファクトリーの『コミックエッセイプチ大賞』というのを見つけたんです。
その時点で応募の締め切りまで2ヶ月ぐらいだったのですが、ダメもとで投稿しました。

・そこで『書店員賞』に入賞されたんですね。

そのプチ大賞で幸運なことに『書店員賞』をいただいて、出版社の方から「大衆演劇のコミックエッセイを作りましょう」と電話をいただきました。
最初は信じられませんでしたが、あわてて東京の出版社まで行きました。
立派なビルの会議室で、担当編集者さんと打ち合わせをして初めて受賞した実感がわきました。

・今回、初めて本格的にマンガを執筆されたわけですが作業はスムーズに進みましたか?

担当編集者さんから「出版までの道のりは長くて険しいです」と最初に言われたのですが、ほんとに長くて険しかったです。
マンガの原稿用紙の使い方も、画材のこともわからなくて、一から教えてもらいました。

大衆演劇の世界ではあたりまえの事を、まったく知らない読者の方に解ってもらうのが難しくて、何度も何度もボツになりました。
編集者さんから「大衆演劇のマンガは大衆演劇と同じぐらい解りやすくて面白いものにしましょう」とアドバイスをいただいて一生懸命描き上げました。

・執筆と舞台のお仕事、ご家庭との両立でご苦労もあったことだろうと思いますが。

困ったのは裏方の仕事は勤務時間が長いので、なかなか執筆の時間がとれなかったことです。
寝る時間を削って、少しずつ作業を進めました。
役者さんのお踊りのポーズや着物は、毎日生きた資料を見ることができたので、それはやりやすかったです。

賞をいただいてから原稿が完成するまでの1年の間に、私自身の結婚、妊娠、出産が重なったので、ほんとにもうバタバタでしたが、編集者さんに支えてもらって無事に形にすることができました。

・『わたしの舞台は舞台裏』出版の反響はいかがでしたか?

作品にも出てくる劇場のオーナーには完成した本をプレゼントしたのですが、すごく喜んでくださって「劇場に置いとくから」と本屋さんで何冊も買ってくれました。
母は私が子供の頃にマンガ家になりた いと言っていたのを知っていたので、原稿を描いている時から応援してくれてました。

・役者さんやファンの方からも応援の声が大きいようですね。
この作品を読んだことがきっかけで初めて大衆演劇を観に行ったという人も大勢いるようです。

大衆演劇ファンの方がツイッターや口コミで本の紹介をしてくださったり、役者さんや他の劇場の裏方さんがブログで本のことを書いてくださったり、思わぬ反響があって驚いています。

大衆演劇を知らなかった方から「まったく知らない世界の話だけど共感できて面白かった」とか「一度劇場に行ってみたい」という感想をいただくと、描いてよかったなあと感じます。

・今後、続編や違う題材でマンガを描かれるご希望、ご予定はありますか?

『わたしの舞台は舞台裏』の続編を描く気は満々なのですが、本が売れないことには描かせてもらえないので、どうか応援、よろしくお願いします(笑)。

コミックエッセイというジャンルではいろんなアプローチができるので”健康ランドめぐり”とか”商店街めぐり”というテーマで描くのも面白いかなと思っています。
劇場だけでなく、どんな業種にも裏方さんはいると思うので”裏方”というテーマでコミックエッセイを描くのもいいですね。

今は劇場の仕事とマンガと子育てで三足の草鞋なのですが、需要があればなんでも挑戦したいと思ってます。

・木丸さんがマンガを描かれる上で影響を受けた方、作品などはありますか?

裏方の仕事柄、普段から浮世絵を見たりはしていました。

あと、佐々木マキさんなど70年代の雑誌『ガロ 』で活躍されたマンガ家さんの絵に惹かれます。
白黒のモノトーンだけど、色が見えてくるような絵が好きです。

・大衆演劇に関わる中で「自分も役者をしてみたい」と思ったことはありませんか?

役者になりたいと 思ったことは一度もありません。
自分は裏方が合ってると思います。

・最近、個人的に大衆演劇のお芝居を観に行かれることはありますか?
木丸さん個人的にはどんな演目や芸風がお好きなのでしょうか?

休みの日は他の劇場へ芝居を観に行くこともあります。
毎日仕事で芝居を観ていますが、舞台袖からなので、たまに客席から観たくなります。

『弁天小僧』『ヘチマの花』『花街の母』『質屋の娘』など、座長が女形でお芝居をする外題が好きです。
あとは侠客ものは全部好きです。

踊りは演歌・白塗り・日本髪の渋いスタイルが好きです。

・今後の大衆演劇業界に期待すること、もしくは不安に思うことはありますか?

いろんなものを取り込んで、形を変えていくのが大衆演劇だと思います。
いい時期もあれば悪い時期もあって、それでもしぶとく生き残ってきました。
30年後、大衆演劇がどんな形になっているかは誰にもわかりませんが、その時に生き残っていた形が大衆演劇なんだと思います。

とはいえ、きっと股旅姿や白塗りの化粧、そして義理人情の精神は残っていることと思います。
役者さん達は決してそれをやめないと思いますし、私自身それを願っています。

 

 

今回のインタビュー記事を掲載するにあたって大衆演劇業界を牽引するスター俳優達からも数々の応援コメントが寄せられている。

 

姫京之助(劇団花車 座長)

私たち役者にとって裏方さんは同じ舞台をつくる仲間です。
木丸さんのように若く才能あふれる方が大衆演劇業界に参加し、このような作品を描かれたことを仲間として大変嬉しく思っています。

木丸さんがお勤めの大阪・千鳥劇場には私の劇団も10月に公演させていただくことが決定しています。
みんなで協力してより良いお芝居をお客様にお届けできる一ヶ月にしたいですね。

小林真(小林劇団 座長)

心を込めて描かれたんだろうなぁ、裏方のお仕事にも真面目に取り組まれているんだろうなぁっていうのが読んだ第一印象でした。

僕は、役者も裏方さんも仕事をする上では”いかに心を込めてお客さんに向き合えるか”っていうことが大切だと思うので、木丸さんのような方がいることを知って本当に嬉しかったですね。
これからも続編を描かれて、より多くの人に大衆演劇の魅力を伝えていって欲しいです。

橘大五郎(橘劇団 座長)

お客さんから「とってもいい大衆演劇のマンガが出てるのよ」と言われて読みました。
僕は感情移入しやすいほうなので、読みながらクスッとなったりウルウルしたり……マンガとしても面白かったし、裏方さんの視点を通して自分の仕事を見つめなおすきっかけにもなりましたね。

大衆演劇を知ってる方にはもちろん、知らない方にもぜひ読んでほしいイチオシの一冊です。

笑いと涙、さまざまな人間模様をお芝居や舞踊で表現する大衆演劇の世界。

興味はあるのに、観劇のきっかけがないという人は多いはずだ。
今回ご紹介した『わたしの舞台は舞台裏』はそんな人にはうってつけ。
ぜひ手にとってそのきらびやかな世界に足を踏み入れていただきたい。

※画像は『メディアファクトリー』からご提供いただきました
http://mediafactory.jp/

中将タカノリ

■シンガーソングライター、音楽・芸能評論家 ■奈良県奈良市出身 ■1984年3月8日生まれ ■関西学院大学文学部日本文学科中退 2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。 歌謡曲をフィーチャーした音楽性が注目され数々の楽曲提供、音楽プロデュースを手がける。代表曲に「雨にうたれて」、「女ごころ」(小林真に提供)など。 2012年からは音楽評論家としても活動。さまざまなメディアを通じて音楽、芸能について紹介、解説している。

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