相次いでこの世を去った詩人と俳優、二人をつなげる映画と詩

  by 香椎みるめ  Tags :  

『祝婚歌』などで知られる詩人の吉野弘さんが1月15日、演出家としても活躍された俳優の高橋昌也さんが1月16日、それぞれ亡くなりました。相次いでこの世を去った二人は、2009年公開の日本映画『空気人形』で“共演”を果たしています。

『そして父になる』などで有名な是枝裕和監督の映画『空気人形』は、主演のペ・ドゥナさんが空気人形(ラブドール)役を演じ、空気人形が心を持ち、葛藤しながらも生身の人間を愛していくストーリーが話題となり、第62回カンヌ国際映画祭でも上映された作品です。

高橋さんは空気人形の心に大きな影響を与える老人役として、映画の中盤で、空気人形と出会います。人気のない公園のベンチに並んで座り、「空っぽ」という共通点で意気投合し、吉野さんの詩『生命は』を教えることになります。

「君、こんな詩を知っているかな?」
「し…?」
「詩を知らないか…まぁいい。いのちは…」

その後、ペ・ドゥナによる詩の朗読とworld’s end girlfriendの音楽からなる『水の線路』(空気人形オリジナルサウンドトラックに収録)が流れ、性別も年齢もさまざまな、劇中の登場人物たちの様子がしばらく描かれます。映画の世界観にマッチした『生命は』の全文は、(積極的に薦められませんが)インターネットで検索するとヒットします。

映画の終盤、老人は自宅で寝たきりの状態で空気人形と再会し、最後にこう語りかけました。「昔からね、手の冷たい人は、心があたたかいって言うのだよ…」。吉野さんと、偶然にも吉野さんの誕生日に亡くなった高橋さん、お二人のご冥福を心よりお祈りいたします。

画像: 映画『空気人形』公式サイト(キャッシュ)のキャプチャ
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香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

Twitter: GigaMirumeK