これぞ人間の将棋? トッププロがテレビ対局で信じられないミス

  by アライコウ  Tags :  

今春に行われたプロ対コンピューターの将棋棋戦『電王戦』は、コンピューターが勝ち越したことで話題となった。もはやコンピューターがプロと同等以上の実力を身につけていることは多くの人が認めているが、一番面白いのはやはり人間同士の対局だということも、異論はないだろう。

11月17日、将棋ファンにはおなじみのテレビ棋戦『NHK杯テレビ将棋トーナメント』が放映された。対局者は大石直嗣(おおいし・ただし)六段と行方尚史(なめかた・ひさし)八段。大石六段はデビューしてまだ数年ながら有望な若手として注目を集めており、行方八段は将棋界最高峰のリーグ戦『順位戦A級』に在籍するトッププロ。熱戦が予想される対決だったが、いよいよこれからという局面でその事件は起こった。

将棋の駒でもっとも強力なのは、飛車が成った『龍』、そして角が成った『馬』だが、行方八段はその馬をタダ同然で取られてしまう手を指したのだ。トッププロが指した手なのだから、何か深い狙いがあるのだと期待した視聴者もいたかもしれないが……結局それは単なるポカだった。それまでの優勢模様が一気に劣勢となった行方八段、その後挽回することはできず、大石六段の勝ちとなった。

全国放送のテレビ対局での出来事ということもあり、直後から将棋ファンはTwitterなどで大騒ぎ。行方八段も「こんなことやったのはじめて」と、やりきれない表情だった。しかしそうした苦悩や後悔という『人間の姿』を見ることができるのも、コンピューター将棋にはない対人戦の魅力ではないだろうか。そして「次はぜひ勝利を!」とファンたちも応援するのである。

この一局の棋譜はNHK杯のサイトで見ることができる。
http://cgi2.nhk.or.jp/goshogi/shogitou/

作家/シナリオライター/ゲームクリエイター。 得意ジャンルはフリー・同人ゲーム(特にノベル・アドベンチャー)、将棋、セルフパブリッシング。 ニコニコチャンネルで小説を連載したりもしています。

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