誰が言ったか知らないが、言われてみると、なるほど・納得。
時に的確に、時に面白おかしく物事を相手に伝える表現技法が日本にはある。
それが日本の言語文化「ことわざ」。
過去も現在もテレビや雑誌などの企画題材として活用されることも多いことわざですが、最近では大阪大学大学院人間科学研究科の研究グループが『情けは人の為ならず』をテーマに、そのことわざが科学的な視点から、真実だということを実証してみせたことがメディアを賑わしました。庶民が育んだことわざは、今やメディアのネタから科学実験のテーマまでと、幅広く活用されています。
同じ大阪の地にある大学院がことわざの実証実験を行っているというのに、ことわざ検定を運営する立場でもあることわざ能力検定協会が「実験しない訳には行かないだろぉ!」ということで早速実験して来ました。
第1回のテーマ「急がば回れ」
今回、数あることわざの中からテーマに選んだのは『急がば回れ』。急いでいる時は、焦って危ない方法を選ぶより、遠回りでも安全で確実な方法をとった方が結果的に良いという意味をもつことわざですが、これは元々室町時代に歌われた「もののふの矢橋の船は速けれど、急がば回れ瀬田の唐橋」という歌の一部が広まったものだとされています。『矢橋』というのは、現在の滋賀県草津市矢橋町のこと。草津市というのは琵琶湖の東側に位置する街なのですが、この草津市矢橋町は、東海道を旅して京都(琵琶湖の西側)に向かう人々を矢橋町から対岸の大津方面へと船に乗せて運ぶ『矢橋の渡し』という渡し船業が盛んでした。これが歌にある「矢橋の船は速けれど」の部分のこと。ではなぜ「急がば回れ瀬田の唐橋」と続けて歌われたのでしょうか。
船でほぼ一直線に琵琶湖を横断する事で距離や時間を短縮できると重宝された渡し船でしたが、この船は帆を立て風を受けて進む「帆船」だったため、琵琶湖近くにそびえ立つ比叡山から吹き下ろす風、通称『比叡下ろし』が強く吹き下ろす事で場合によっては転覆、運が悪ければそのまま遭難というリスクをはらんでいたのです。つまり「近道だからといって安易にその方法を選んでしまうと、死んでしまうかもしれないよ」という実際の教えを含ませ「急がば回れ瀬田の唐橋」となったということのようです。
今回の実験はそれらを踏まえて「急がば回れ」を徒歩組と舟組の2班に分かれて同じゴールを目指し、実際にどちらが安全かつ確実にゴールが出来るのかを競うことで、ことわざを実証しようということになりました。
コースを確認、いよいよスタート
矢橋の交差点近くにある「善光寺」より徒歩組2名と舟組3名に分かれて矢橋の交差点を同時に出発し、大津方面にある貸し船屋「小林貸船釣具店」さんを目指します。
実際のコースを確認すると、船の4倍近い距離を徒歩組は進む事になるようで、予想していたよりも大変な実験になりそうです。今回はジョギングなどのスポーツの時間や距離、運動量などを記録するのに便利なアプリ『Runtastic』を利用することに、結果の部分で実際のインターフェースをご覧いただきます。
さてここでコースをおさらいしましょう。スタートは草津市矢橋町にある善光寺、徒歩組はここから湖岸に沿って南下し『瀬田の唐橋』を渡って折り返し、対岸の小林釣具店に向かう約8kmの行程、対する舟組は善光寺を同じくスタートし、矢橋港跡にて船に乗り込み近江大橋を潜って小林貸船釣具店を目指す約3kmほどのコース
数字だけを見る限り、舟組の圧勝を感じさせますが、そこは「急がば回れ瀬田の唐橋」何が起こるのか予想もつきません。実験内容から見れば、これぐらい差がある方が好都合というもの。
それでは実験スタートです。
実験報告・徒歩組編
徒歩組は文字通り、歩きます。とにかく歩いて、確実にゴール地点までの移動を終えるのがその使命です。もちろん最短距離を狙う為に湖岸を歩きます。
生い茂る草をかき分け湖岸の道へ、湖から吹く風が心地よく順調な滑り出し。アップダウンも少なく、平坦な道のりなので、単純にウォーキングコースとしてもおすすめです。少し進むと大津市に入ります。意外と知られていないようなのですが、大津市というのは琵琶湖の東側まで広がっています。
「琵琶湖は、本当に日本一大きいんだなぁ」そう思わせてくれる期待通りのスケール感を肌に感じながら先を急ぎます。道の途中で鴨の家族に遭遇、鴨が葱をしょって来るとは行きませんが、こういう発見や出会いがあるのも徒歩ならでは。
次に出てきたのは琵琶湖と石が永遠の母であることを教えてくれる石碑。滋賀県石材組合連合会の青年部創部10周年の記念碑のようです。琵琶湖の湖岸沿いにはこうした記念碑などが多く見受けられます。滋賀県は、さざれ石の産地としても有名で、石材店も多いとのこと。石と湖に支えられている滋賀県、スケールが違います。
そうこうしているうちに、今回の実験の要でもある中間地点『瀬田の唐橋』が見えてきました。東海道を歩いてきた旅人にとっては、希望の光のように見えたのではないでしょうか。ちなみに瀬田の唐橋の手前には国道1号線、今の東海道の橋が架かっています。ですが近道せずにしっかりと瀬田の唐橋を渡ります。
この時点で30分程が経過しています。舟組のことも気になりますが、やっと出会えた唐橋です。その姿や周りの景色も写真に収めるべくカメラマンの指にも力が入ります。
中間地点を越え、あまりにも順調な行程をどう受け止めれば良いのか、徒歩組は少し浮き足立っている模様。しかし、この時点で舟組がゴールしている可能性も多いにあり得る状況なだけに油断は禁物です。
このまま湖岸を北上し、ゴールは目前です。舟組は既に到着しているのでしょうか!?
実験報告・舟組編
舟組は船に乗らなければならない為、まずは矢橋港跡まで向かいます。港に向かう途中、婦人消防隊発祥の地という石碑を発見。婦人消防隊という形態の消防団が全国的にあるようで、総務省消防庁のホームページには女性消防隊のページもあります。
港に向かう途中の矢橋公園。港の向こうには矢橋帰帆島公園という大きな公園もあります。ここの公園は小さく特に何もなさそうでした。
港に着くと、まず目に入るのは水草の多さ。準備の際も、この水草にモーターがやられてしまい、全く進まないというアクシデントがありました。
いよいよ乗船。もちろん帆船を用意できる訳も無く、モーター付きのこじんまりとした釣り船となりました。もちろんモーターは使いません。これから港を出て、ほぼ一直線に3km先のゴールを目指します。船のサイズは、1人で漕ぐには幅が広すぎ、2人で漕ぐには狭すぎるという、そもそも漕ぐ為には開発されていない感が否めません。
いざ出港。早速水草の妨害を受けます。その重さ4〜5キロほど。片腕でこれらを持ち上げつつ進まなければなりません。当然左右の力のバランスも狂い、真っすぐ進むどころか、その場で回転してしまう始末。近道だと思われた舟での移動に暗雲が立ちこめます。
少し進んでは方向を修正、少し進んでは修正というように、まともに前進する事もままならず苦戦を強いられる舟組ですが、ここに来て本日2つ目のアクシデントが発生。舟のどこかに穴が開いているらしくまさかの浸水。鞄や靴が知らぬ間に濡れてしまうという予定外の被害に見舞われることに。
まだまだ舟組の苦難は続きます。真っすぐ進まないせいで、葦でしょうか、植物が生い茂るアマゾン地帯に突入してしまいました。「そっち、あぶない!あぶない!」と船頭のアドバイスもむなしくどんどん密林地帯に船が進行、一時脱出不能の事態に陥ります。この辺りから既に舟組の間には「急がば回れは本当だな」という空気が漂い始め、漕ぎ手のテクニックを疑問視するあまり「違う違う!おれにやらせろ!」と漕ぎ手の交代を重ね、全メンバー腕を痛める事態に。『急がば回れ』というよりも『船頭多くして船山に上る』の実験になりつつあります。
なんとか密林地帯を脱出し、中間地点となる近江大橋を目視できる距離まできました。この辺りまで来ると水草も少なく、大きな障害も見受けられません。しかし、ここに来るまでに酷使し続けてきた握力や腕力が限界を迎え、単に真っすぐ進めないというよりも、漕ぐ事すらできない状態になってしまいました。
やっと近江大橋を潜りきります。そうすると遠く前方にゴール地点付近の港が見えます。着実に進んでいる。舟組の心に一筋の光が射し込みます。
さぁゴールは目前です。数々のアクシデントを乗り越え、舟組の苦しい戦いは遂にフィナーレを迎えます。
気になる実験結果というと
「急がば回れ」このことわざの「急いでいるときこそ近道を選ぶより、遠回りでも安全確実な方法を選ぶ方が良い」という意味が本当であるかどうかを、陸地を進む徒歩組、湖を横断する舟組に分かれて実証実験を行った今回。上のレポートを見る限り、近道の方が危険が多いという意味では既に実証されているようにも思えますが、先にゴールに到着しているのはどちらの組なのか。これも非常に重要です。
その答えは徒歩組が撮影した写真によって明らかになります。
続いて舟組が撮影したゴール付近。
結果、ゴールに早く到着したのは徒歩組でした。所要時間は約1時間。対する舟組はゴールに到着するまで2時間もかかってしまいました。という訳で今回の実験結果から導かれる答えは「急がば回れ」ということわざは本当だったということです。舟組は徒歩組の半分以下の距離だったにも関わらず、たくさんのアクシデント、妨害を受け、やっとのことでゴールしました。対する徒歩組は、終止平坦な道のりを着実に進む事によって、結果的には1時間という短時間で8kmを歩ききることに成功したのです。一見近道だと感じる方法や道のりも、結果を確実に手にしたいのであれば、時間と手間ひまを掛け、遠回りだとしても着実にゴールに辿り着ける方法を選んだ方が良いということが、この実験結果から言えるのではないでしょうか。
ことわざに真実は有るのか実験の第1回。
ことわざに真実はありました。
次に何を実験するのか、今はまだ未定。
リクエスト有れば[email protected]まで、メールください。
今年のことわざ検定は・・・
試験日 | 第6回 平成26年 7月27日(日)第7回 平成26年11月30日(日) |
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申込期間 | 第6回 平成26年3月3日(月)〜 6月30日(月)第7回 平成26年7月1日(月)〜10月27日(月) |
会場 | 北海道 北海道立職業能力開発支援センター 宮城県 仙台市情報・産業プラザ ネ!ットU 石川県 茨城県 つくばクレオスクエア 東京都 明治大学駿河台キャンパス 静岡県 静岡リビングカルチャーセンター 愛知県 ウインク愛知 京都府 大阪府 DFE経理会計カレッジ梅田校 兵庫県 神戸・神戸カレッジ・オブ・ファッション専門学校 姫路・リビングカルチャー倶楽部・イオンタウン姫路教室 奈良県 やまと会議室 滋賀県 株式会社シゲタ 福岡県 リファレンス 駅東ビル 沖縄県 名桜大学※平成26年2月末時点での実施地域。会場に関してのみ変更の可能性あり |
後援 | 北海道教育委員会、北海道私立中学高等学校協会、 宮城県教育委員会、仙台市教育委員会、宮城県私立中学高等学校連合会、 石川県教育委員会、金沢市教育委員会、石川県私立中学高等学校協会、 茨城県教育委員会、つくば市教育委員会、茨城県私学協会、 静岡県教育委員会、静岡市教育委員会、静岡県私学協会、 愛知県教育委員会、名古屋市教育委員会、愛知県私学協会、 京都府教育委員会、京都市教育委員会、京都府私立中学高等学校連合会、 大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、大阪私立中学高等学校連合会、大阪府私立小学校連合会、 兵庫県教育委員会、神戸市教育委員会、姫路市教育委員会、兵庫県私立中学高等学校連合会 奈良県教育委員会、奈良市教育委員会、奈良県私立中学高等学校連合会、 滋賀県教育委員会、 福岡市教育委員会、福岡県私学協会、 沖縄県教育委員会、名護市教育委員会 |
実施級 | 2・準2・3・4・5・6・7・8・9・10級※併願受検はできません。 |
受検料 | 詳しくは『級・合格基準』のページをご覧ください。 |
時間 | 開場 10:00 着席 10:20 開始 10:30 |
詳しくはことわざ検定ホームページまで
お申し込みお待ちしております。
Runtasticの結果