
写真の図書館は天井絵にまで届く程の蔵書に囲まれたモルガン・ライブラリー&ミュージアムである。これほどまでに荘厳な図書館を見たことはない。この図書館は金融王と言われたジョン・ピアポント・モルガン邸の一室であり、緑の布の上に乗せられた本の後ろ側には、有名音楽家の楽譜が並べられている。モルガンは楽譜のコレクターでもあるので、音楽の教科書に載っている作曲家の楽譜は定期的にローテーションで並び替えられる。因みに現在は、イタリアの作曲家、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』の楽譜にイラストがついたものが飾られてる。
モルガンとは聞き馴染みのある名前かも知れない。アメリカのモルガン財閥の創始者で、同じ大富豪でも成り上がりのカーネギーやロックフェラーとは違い、裕福な銀行家の父と、教会の牧師の娘だった母の下に生まれた。父の代より更に資産を増やす銀行家となり、19世紀末には世界最大の銀行家となり、金融のみならず、鉄道を経営し、また統合し、今、日米間で論争を巻き起こしているUSスチールも設立した。他、海運・電力・通信事業にも進出した剛腕な実業家であった。
本人は自分の顔を嫌い、写真を撮らせたくなかったそうだ。肖像画はモルガン・ライブラリー&ミュージアムの書斎に飾られてあるが、本人が嫌悪した大きな鼻が、少し小さく描かれている。因みに配偶者のフランシス・ルイーズ・トレイシーは目の覚めるような美女で、二人の子供である跡継ぎのジャックは、母親に似て実にハンサムな後継者だった。

さて、この美術館はジョン・ピアポント・モルガン邸が図書館&美術館へのモルガン・ライブラリー&ミュージアムと化した。地下と1階、2階の3フロアーのみの小さな美術館なので、ゆっくり美術鑑賞しても1時間もかからない。大人の入館料が$25と3,500円程するので、1時間以上は滞在したいところ。
1階のレストランは吹き抜けで開放感があり、いつも満席である。当然、料金は高い。混みあう感じでテーブルと椅子が並べられており、また、美術鑑賞の人が周りにいるため、ゆったり食事気分ではないような印象を受ける。1階の床は白木で清潔感に溢れ、2階にはガラス張りのエレベーターが使える。階段もあるが、こちらのエレベーターの方が面白みがある。
こちらの美術館はエンパイアステイトビルディング近くにあり、美術館周辺は落ち着いた住宅街である。ニューヨークの美術館と言えば巨大なメトロポリタン美術館や、近代美術館(通称:MоMA)の印象が強いが、このような美しい美術館は一見の価値ありである。アメリカの財閥の金持ちぶりが大邸宅からうかがえる。趣味の良い調度品に、見る目確かな芸術品の数々。
入館料
$25 大人
$17 シニア (65歳以上)
$13 学生証 (学生証提示のこと)・火曜、水曜、木曜、土曜 & 日曜は10時半から17時まで
・金曜のみは20時まで営業で、17時から入館すると無料。但し予約必要
先述のとおり、美術館面積の割に入館料は高い。ただ、毎週金曜日は20時迄営業しており、17時以降の入館であれば無料で入館できる。無料入館は嬉しいが芋の子を洗うような混雑ぶりである。
ギフトショップもお洒落で品があり見ていて楽しい。ステキなアクセサリーがガラスケースに並べられているが、値札が裏返っているため、買いたい方は店員に値段を確認しなくてはいけないのが難点。そのせいかアクセサリーを手にしている人を見たことがない。異空間を感じる美術館は一度訪れる価値はありだ。
The Morgan Library & Museum
225 Madison Avenue
New York, NY 10016
(212) 685-0008