
エドワード・ホッパーというニューヨーク生まれの画家が好きだ。上記の絵は『夜更かしの人々』、原題は『Nighthawks』。ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジの風景である。ただ、写生ではなく実物からイメージして描かれたものである。
エドワード・ホッパー(英語: Edward Hopper、1882年7月22日 -1967年5月15日)は、20世紀のアメリカの画家。油彩画で広く知られているが、水彩画家および版画家としてエッチングにも精通していた。都会と田舎の風景の両方で細かく計算された表現は、現代のアメリカ生活のビジョンを反映している
ニューヨークの美術館のホイットニー美術館がおそらく一番作品を所蔵していると思う。ホッパーの死後、未亡人が作品をホイットニー美術館に寄贈したのである。ですから良い作品がホイットニー美術館には常設されており、出し惜しみではないだろうが全作品を展示することはなく、『エドワード・ホッパー展』が開催されると満を持したように、作品が蔵出しされるようだ。
上記の印象的な『夜更かしの人々』、原題は『Nighthawks』は、シカゴ美術館所蔵なのでそちらに足を運ぶしかないが、十数年前、ホイットニー美術館に一定期間貸出されていたので、足繁く美術館に通った。
ホッパの絵には寂しさが溢れんばかりである。美術に造詣の深い友人は『寂寥感』と表現し、それがあまりにピッタシだったので唸ったことがあった。日本ではそれほど認知度は高くないかもしれないが、アメリカでは巨匠である。60年前には生きていたので比較的現代の人とも言える。
今週の頭、久しぶりにホイットニー美術館に行った。ホイットニー美術館は2015年5月1日にウエスト・ヴィレッジのミートパッキング・ディストリクトと呼ばれるお洒落な地域にミッドタウンから移転して、今年で満十周年になる。有名な作品として『Early Sunday Morning』、こちらも実在した建物であるが、今はもうこの姿を残さず新しい建物になっている。この絵の左側の消火栓を見て頂きたいのだが、影に青の絵の具を用いているのだ。わかりにくいかもしれないが実物でその ”青” を見つけた時、静かに感動した。

『Soir Bleu』という作品は1914年に描かれた作品で、画家の初期に訪れたパリの街とされており日本のタイトルは『青い夕べ』。中ほどの道化師の姿がいたたまれない。左側にいる化粧の濃い女は売春婦であるとも言われている。作品を前にすると圧倒される迫力だ。

ホッパーの作品はどれひとつとっても寂しのである。しかもたまらなく寂しいのである。心がえぐられるような気持になる。
未亡人で同じく画家であったジョーが、先述のとおりホッパー作品の油彩・水彩・エッチングなど三千点以上をホイットニー美術館に寄贈したので、こちらの美術館が一番ホッパー作品の所蔵数が多いと思われる。
ニューヨークの美術館と言えばミュージアムマイルと呼ばれる五番街に密集するが、ホッパー作品を多く所蔵するホイットニー美術館にも機会があれば訪れて欲しいと思う。ニューヨークは碁盤の目をしたような街で、地図をみれば行先はわかりやすい。ただ、このホイットニー美術館は、ハドソン川近くのちょっとだけわかりにくい場所にある。
ニューヨーク生まれのエドワード・ホッパーの絵はきっと心に残る名画と出会えると思う。