イトメンの『チャンポンめん』というインスタントラーメンを御存知だろうか。播州たつの市の製麺メーカーであるイトメン社が50年にも渡って製造販売しているロングセラー商品だ。たつの市というのは兵庫県の西に位置する。昔は揖保(いぼ)郡と呼ばれた地域。そうめんのブランドである『揖保乃糸』もこの地域の発生だ。つまりそうめん作りが盛んなのだ。イトメンも元々はそうめんを作っていた会社である。そうめんメーカーがそうめんで培った技術で作ったラーメンがヒット商品になってしまった。
『チャンポンめん』は兵庫県内のソウルフードのひとつに数えられている。兵庫だけではなく、大阪など関西全域でもある程度の知名度がある。長崎チャンポンとはまた違った、独自の薄味スープがイトメンのオリジナル。ダシ用の干しエビと干しシイタケの小袋が入った商品構成も他には無い面白さだが、何よりも目を引くのは鮮烈な黄色のパッケージ。そして左上の描かれた何やら得体のしれないグシャグシャしたキャラクター。このキャラクターの得体のしれない吸引力は相当なものだ。『チャンポンめん』が支持を集めた何割かの功績がこの妙なキャラクターにあるのではないか。ヒット商品の影には名物キャラクターがつきものだ。
だがこいつは一体何者なんだ?このグシャグシャしたラクガキのようなこいつに名前があるのか?忘れられない奴ではあるけど理解するのも難しい。答えはイトメンの公式ホームページにあった。
『とびっこ』それがこのキャラクターの名前だった。この生き物は赤とんぼだったのだ。しかも誰しもが知っている『赤とんぼ』の童謡に由来しているという。そう言われてから見直すと、なるほどトンボに見えてくる……だろうか?いやいやいや、そう説明を受けた後でも、僕には赤いカエルかカメレオンに見えてしまう。「グシャグシャの何か」と比べれば何歩か前進したとは思うけれど。当時のイラストレイターは、赤とんぼになかなか前衛的なアレンジを施したものである。当たり前のトンボのイラストだったら、ここまで気になる存在には育っていなかったには違いない。
そんな『とびっこ』さんであるが(さん付けをしてしまう)現在はTwitterやFacebookにおいて大活躍しているのだ。まさかあの『とびっこ』がと、『チャンポンめん』を知っている界隈では騒然となった。商品やイベントの案内などもそつなつこなしつつ、呟きや書き込みにもよくわからないものがたまに見うけられる。見た目そのままのミステリアス。
さらに激震が走る。イトメン社のホームページ上でまさかの2代目とびっこのキャラクター募集。
この募集は6月30日で締め切られている。とびっこTwitterやFacebookによると多数の応募があったようだ。2代目が決まったら、このアバンギャルドな初代『とびっこ』さんはどうなってしまうのか。そして選ばれる2代目はどんな奴なのか。もっと分かりやすく可愛い『とびっこ』になってしまうのか。それともより前衛的なものになるのか。発表はもう少し先になりそうだが、兵庫県を中心とした関西(の一部地域)では、この結果を固唾を飲んで見守っている筈だ。
2代目キャラクター募集が締め切られてからの『とびっこ』さんのTwitterの発言もなんだか寂しいものになってきた。ありがとうの言葉の余韻があまりに切ない。
@itomen_official7月7日
2代目の「イトメン新とびっこキャラクター」募集。たっくさんの応募があったんだって。みんなありがとう!ありがとう、ありがとう。。。 http://fb.me/2qF7UbaBD
@itomen_official7月7日
そろそろなのかしら、うん。そろそろなんだよね。。。
@itomen_official7月8日
あずさ2号はもうないけれど、旅にでます。あなたの知らないとこへ1人で。。。いつかあなたと楽しむはずだったイトメンの未来は、新キャラと築いてくださることを願い。。。 http://fb.me/VBGYKBBM
そういえば、かの日本を代表する『チキンラーメン』のキャラクターも歴代変わってきたのである。世界的なキャラクターであるミッキーマウスだって初代から何代目になるのだろう。彼らも次代にバトンを渡して表舞台からひっそりと消えて行く時には同様の寂しさを味わったのだろうか。ローカルラーメンのキャラクターの交代劇でそんなことを考えさせられるとは思わなかった。
何はともあれイトメンの『チャンポンめん』には新しい半世紀に挑んでもらいたい。『チャンポンめん』を知らなかった人はこの機会にどうぞ。関西だったらスーパーに置いているかも。通販でも良い。出来れば初代『とびっこ』さんが健在なうちに。
※イトメン公式ページよりいくつかの画像を引用しました
http://www.itomen.com/character/chanpon.html