スクエニブランド崩壊の序曲!?

スクエニ3月期は初の営業赤字 今期は「ソーシャル」軸に巻き返し
2013.5.13 16:27
ゲーム大手のスクウェア・エニックス・ホールディングスが13日発表した2013年3月期の連結決算は、営業損益が60億円の赤字(前期は107億円の黒字)となった。03年に旧スクウェアと旧エニックスが合併して以来、初の営業赤字。競争の激化で北米市場のゲームソフト販売が不振だった。

一部ゲームソフトの開発中止に伴う費用を損失処理したため、最終損益はさらに多い137億円の赤字(前期は60億円の黒字)と、過去最悪の決算になった。

今期(14年3月期)については、「環境変化が激しい」(佐々木通博グループ経営推進部長)として、業績予想に幅を持たせた。営業利益は50億~90億円、最終利益は35億~60億円の確保をめざす。市場が拡大する交流型のソーシャルゲームの開発と販売に力を入れ、黒字転換を目指す。売上高は1400億円(前期比5.4%減)~1500億円(同1.4%増)の見通し。

同社の収益の柱は家庭用ゲーム機向けパッケージソフトとゲームセンター向けのアミューズメント機器で、ソーシャルゲームやオンラインゲームへの対応の遅れが、業績悪化につながった。会見した佐々木通博グループ経営推進部長は、今期について「ドライバー(推進装置)はソーシャルゲームだ」と強調した。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130513/biz13051316280008-n1.htm

産経ニュースからの引用

大手ゲーム会社スクエア・エニックス初の営業赤字、というニュースが世間を賑わせたのは今年2013年5月だった。ニュースによると巻き返しの鍵はソーシャルゲームの展開にあるという。しかし熱心な顧客であるゲームファンが、スクエア・エニックスいわゆるスクエニの凋落を予感していたのはこのニュースが発表されるずっと前の2012年内のことだったし、2013年に入ってからはそれは確信に変わっていた。そしてこのニュースによって、スクエア・エニックスの再浮上に対しては絶望的な気持ちになった。ゲームファンが嗅ぎ取っていたスクエニの危ない匂いとは何だったのか?

『拡散性ミリオンアーサー』というソーシャルゲーム

『ファイナルファンタジー』シリーズや『ドラゴンクエスト』シリーズを擁するスクエア・エニックスが満を持して放つiPhone用大型ソーシャルゲーム。脚本には『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬、音楽にはアニメ『日常』のオープニング曲で有名なヒャダインを起用。声優やイラストレイターも人気どころを取り揃え、スクエア・エニックスの培ったノウハウも結集。次のソーシャルゲーム界のスタンダードとなるべくして登場したのが『拡散性ミリオンアーサー』というソーシャルゲームだった。
実際このゲームはゲームファンやアニメファンの注目度も高く、サービスがスタートして数ヶ月のあいだは、後にソーシャルゲーム界の本当のスタンダードとなったガンホーの『パズル&ドラゴンズ』と売上を競うくらいの位置にいたのだ。

当然スクエニのモバイルゲーム担当である安藤博プロデューサーの鼻息も荒く、

それにしても『ミリオンアーサー』はよくぞ、あれだけのキャストを集めたなという豪華布陣です。ゲーム内容とあわせて、そちらもお楽しみください。サービス開始後、もしゲームがつまらなかったら、バンバン要望を言って下さいね。良いところがあったら“たまには”褒めてやってください。
http://app.famitsu.com/20120402_50423/
より引用

また、パズドラを抜いて1位を獲得した時などは、

「『パズドラ』を抜いて、1位が獲れるなんて思っていなかった」 1位獲得の記事がファミ通Appに掲載された先週木曜日(2012年4月12日)。『パズル&ドラゴンズ』はサービス開始以来、最長の緊急メンテナンスに突入していました。『パズドラ』を愛する1プレイヤーとしても、何よりネットワークゲームを運営するサービス提供者としても、これは人ごとでは無い。「明日は我が身か」、「がんばれ『パズドラ』」、という感情の方が大きかったです。リリース直後に山本さんからは、「『パズドラ』も抜かれると思うけど、『ミリオンアーサー』のクオリティーだったら全然いいです」、というありがたい言葉をいただきました。「仮にそうなっても今の『ミリオンアーサー』であれば、本当の意味で『パズドラ』を抜いたことには、ならないですよ」、というやりとりをしました。先週の1位は『パズドラ』のメンテがあってのことですし、『パズドラ』が無事復活した今日(2012年4月17日)現在の1位も、まだまだ。だと思っています。

http://app.famitsu.com/20120417_54778/

より引用

などとライバルを気遣う余裕すらあった。

そして2012年8月にはパズドラを抑えApple Storeランキングで4週連続売上1位という快挙を達成する。しかし2013年現在まででこれが最後の売上1位になる。2012年9月に再び首位をパズドラに明け渡すと、年末までにズルズルと売上を後退させ、ランキング10位以内をキープするのがやっとという有様になる。パズドラのその後の躍進は御存知の通り。一時はパズドラとソーシャルゲーム業界のトップ争いまで演じていた『拡散性ミリオンアーサー』に一体何があったのか。あまりにも急な脱落である。

ユーザーが不信を募らせた理由

ソーシャルゲームの基本原理は、ある程度までユーザーに無料でゲームを提供し、その中からヘビーユーザーに課金を促し、その売上の一部をゲームのアップデートに還元し、新たなサービスの充実で新規の顧客を開拓していくというものだ。すそ野である無料ユーザーの拡大がそのままヘビーユーザーの課金を支えているので、無料で遊べる部分を充実させて新規開拓を狙う。それと並行して、課金ユーザーにはそれ相応の見返りを用意する必要がある。この両輪のバランスがソーシャルゲームの肝であって、それを現在までで最も上手くやってのけたのが、例えばパズドラということになるのだろう。

端的に言えば『拡散性ミリオンアーサー』ではこのあたりのバランスを崩壊させてしまったのだ。サービスが続くにつれて無料で遊べる範囲を切り詰めていき、課金ユーザーに対する見返りも最初の頃よりも減らしていく。経営としては理想的といえるが、あまりにも銭ゲバすぎてユーザーの信頼関係を失っていけば、そもそもゲームをプレイして貰えないのである。利益率を追求したあげく売上そのものを失ってしまうという典型をやらかしてしまったのだ。それが9月以降の失速だ。スクエニがユーザーの信頼関係を崩壊させるに至った経緯を大まかにみていこう。

限界突破問題

『拡散性ミリオンアーサー』(以下ミリアサ)はカードを集めるゲームである。なかなか手に入らないレアカードを手に入れ、戦力を増強していくのが基本的なゲーム進行であり楽しみの中心である。ミリアサにおいては、なかなか出ないR(レア)カードの上に、R+、SR(スーパーレア)、SR+まで細かく上位カードが存在し、最上位のSR+カードともなると滅多に手に入らないのである。無料ユーザーが手に入れる可能性は極めて低く、これを手に入れるために課金ガチャを繰り返して何万円も使ったユーザーも少なくない。それだけにSR+カードはゲーム中でもかなり強力で、ヘビーユーザーにとっても大金を費やした見返りとしての価値は確保されていた。

ところがスクエニは課金ユーザーへのサービスを一部反故にするかのようなゲームルールの変更を行う。それが限界突破というものだ。これは同じカード同士を合成すると能力の上限が解除されて、さらに強力なカードになるというもの。ただでさえ滅多に手に入らないSR+カードが、このルール変更後には複数枚必要になるというわけだ。SRカードなど下位のカードでも合成すれば強くなるため、無理にSR+カードを合成するよりも、手に入りやすいカードを使うほうが有利にもなった。これは課金者と無課金者とのレベルの溝を埋めるという側面もあったとはいえ、課金ユーザーにとってはあまりにもバカにした処置ではなかっただろうか。また、これによってムキになって、SR+を複数枚手に入れるために有料ガチャを回すユーザーも現れたために、2012年夏のミリアサの売上1位の原動力にもなった。スクエニは気をよくしたかもしれないが、ユーザーの不信感は確実に募っていた。

特効カード問題

限界突破の次に打ち出したスクエニの売上増加作戦が特効カードである。月に2回程度の割合で新たに有料ガチャで登場する新規カードはその月限定で攻撃力が2倍もしくは3倍に設定されているという仕掛けだ。簡単にいうとそれまでにいくら強いカードを取り揃えていても、新たに登場する攻撃力が3倍ものカードには到底及ばない。そういうわけで課金してガチャを回して新しいカードを入手し続けないかぎり、他のユーザーに全く太刀打ちが出来なくなる。そうして苦労して手に入れたカードであっても、次の月には特攻効果が切れて役立たずになる。露骨な課金煽りである。こうしたゲームは、自分のお気に入りのカードを育てて遊ぶという側面もあるし、過去に大金をかけて手に入れたカードであれば大切にしたいというのがユーザー心理であろうが、特攻カードというシステムは、そうしたものを一切否定してしまう。気に入ろうが気に入るまいが、常に新しいカードを使わなければゲームにならないのだ。この強攻策によって一時的には売上を伸ばすものの、秋口に突き放されたパズドラの影を踏むことすら出来なくなる。そしてユーザーの不信感はさらに増大させることになった。

不正ユーザー問題

ミリアサは他ユーザーと様々なランキングを競い、その上位者には新たに強力カードが賞品として与えられ、次回のランキングが有利になるというサイクルでゲームが進行していく。そのランキングで上位に入るためには、様々なテクニックがあるにはあるが、とどのつまり課金をたくさんした方が勝つという露骨なシステムになっているのだ。つまり順位も課金次第という面が非常に強い。そういうわけで、ランキングで課金したユーザーはその順位と賞品を対価としてみなしているわけだが、ここで不正ユーザー問題が持ち上がる。不正なプログラムによってゲームを有利に進めているユーザーが、ランキングの上位のかなりの部分を占有しているという疑惑だ。金で順位を買ったつもりのユーザーが、これによってランキングの価値が減じられるとしたらたまらない。多くのユーザーが運営側に不正ユーザーを排除する対応を求めたが、結局運営側から満足のいく返事は帰って来なかった。不正ユーザーの存在がランク争いを熾烈なものにするお陰で、正規ユーザーの課金を煽る結果になるので、運営側はある程度は黙認しているのではないか?そんな憶測すら囁かれるようになった。実際のところこうした内部事情は外部から確認する事は出来ないのだが、今までの運営の不誠実な対応がそんなユーザー側の憶測を呼ぶ原因になったのは間違いのないところだろう。

ミリオンアーサー大暴落

前述の通り、様々な問題を抱えながら運営されてきたミリアサだったが、それでも2013年1月まではパズドラには及ばないとはいえ、売上10位以内のキープはしていたし、ユーザーの多くも不信感を抱えつつも、まだまだ活発な交流がみられた。あのスクエニが満を持して…という意気込みに見合うものかはさておき、それなりのソシャゲーとしては成功の部類であったはずだ。そのミリアサの完全凋落は2月に訪れた。

騎士団問題

新たに導入された騎士団というゲームシステムがユーザー離れを決定づける。これは従来までのランキングシステムの発展形なのだが、週ごとに編成されたチーム同士でランキングを争って順位を決定付けるというもの。チーム戦というのが致命的で、自分の意思で編成されたチームであるならともかく、どういうわけかほぼランダムに近い形で結成されたチームで戦うというシステムになっていた。これの問題点は最初から指摘されていた。つまり運悪く弱いメンバーばかりのチームに放り込まれた週は何もしないうちから負けが決定してしまう。つまり週初めの面子次第で一週間のモチベーションが左右される。運営側の意図としては、より過酷になったランキングで、今まで以上に課金を促して売上を確保しようという、そんなつもりだったのだろうが、さすがにユーザーの財布も魔法の壷ではないのだ。既存のユーザーから絞れる限界もこのあたりだった。これをきっかけにゲームを起動しなくなるユーザーが続出。Apple Storeのレビューも悪評に溢れて、ゲーム内でも目に見えて過疎化が進行していくことになる。

MR問題

特効カード商法は相変わらず継続していたが、ここでさらなる課金を促す(まだやるのか!)システムが導入された。SR+カードのさらなる上位レアであるMR(ミリオンレア)の登場である。SR+カードよりさらに手に入りにくく、当然のことながら今までにない強力な能力なので、これが無いとまともにゲーム中で争うことが出来ないのはこれまでのお約束通り。もちろん特効カードでもあるので、期間が過ぎれば極端にパワーダウンする。新しいMRカードを手に入れる必要があるのは今まと同じだ。売上の確保に困ったスクエニがSR+の上位カードを出すのではないかとは、年が明ける前からユーザー間では予測されていたことだが、ここまで露骨に予想通りだともはや失笑しかもれなかった。MR+カードの登場も時間の問題にしか思えない。

これらのユーザーを失望させるルール変更の数々により、ミリアサの売上順位は順調に陥落していくことになる。売上が落ちれば落ちるほどさらなる過酷な課金策を導入するスクエニ。重税を課して国の経済が崩壊し、税収を落ちたのを補うためにさらなる重税を課すことによって、完全に泥沼に落ちていくどこかの政府のようである。

もうひとつの悪い兆候

かようにひとつのゲームがユーザーの支持を失っていく経緯をおおまかに紹介していったが、有名ゲーム会社のブランドとしてもうひとつ良くない傾向がみられた。これは課金を促して銭ゲバ運営をする以上に、スクエニブランドとして信仰していたユーザーに失望を与える要素だったかもしれない。

ゲームにやたら半裸の女ばかり登場するようになった

ちょっとセクシーな美少女が登場するというのは現代のアニメ・ゲームにおいては常套句でもあるし、そういう要素がスパイスになってユーザーが増えるというのは否定しない。ただしミリアサに関しては、最初に説明した通り、スクエニブランドがRPGのノウハウを投入して作った正統派ゲームという側面もあったはずだ。そのうえで原作に有名ラノベ作家を起用して、アーサー王物語をベースに、様々な登場人物が活躍するオリジナルストーリーを楽しめる、という事にも力を入れてきたのでは無かったか。つまり当初目指していたものは単純なお色気ゲームではなかった筈だ。

ゲーム内のカードにして、最初は男や女や様々なキャラクターが存在したし、なかには爺のカードまであった。ところがいつの時期からか、新たに登場するカードは半裸の女の子ばかり。とにかく世界観や設定はそっちのけで、セクシーな絵を提供し続けるという趣旨に変わってしまった。爺のカードよりは女の子のカードが受けが良いのは間違いないが、そういう方法論でいえば最初から美少女ゲームで良かったではないか。つまり目先の売上にたいして見境がなくなったということを表していた。事実、ちょっとエッチなカードが出た週だけは、売上がちょこんと伸びたりもしたものだ。そういうスクエニの足元の定まらない姿勢をみて、多くのユーザーは「こりゃもうスクエニのブランドはダメだ」と考えるのも無理はない。

エロゲーメーカーもかくや

スクエニブランドの凋落を危惧していたゲームファンの悪夢がついに現実になった。

【拡散性ニュース】各メディアが公開を見送った“添寝型ニムエ”が全(裸)解禁! – ファミ通App.

http://app.famitsu.com/20130615_177940/

からの引用

とうとうゲーム中のキャラクターを脱がせて商品化するという所まで堕したスクエニ。かつて正統派ゲームの大御所だった面影は見る影もない。しかもこの商品にも限定カードのシリアルをつけて購買を煽ろうとしている。しかもこのカードも限定突破が必要なので、1人で何枚もこの抱き枕カバーを購入して欲しいということだ。これが今のスクエニの正確な姿ということなのだろう。バブルにも陰りが見え始めてきたとも言われるソーシャルゲームでも決して王道の位置を占めることは出来ないという認識も間違っていないことがお分かりだろう。こういう現状をつぶさに見守ってきたユーザーからすれば最初に引用した記事における、

今期について「ドライバー(推進装置)はソーシャルゲームだ」と強調した。

というコメントがどれだけ虚しものか。ソーシャルゲーム頼りで売上の回復を願うスクエニは、ソーシャルゲーム分野でも既に敗北していたのである。

 

かつてのスクエニブランド全盛期を見てきた人間としては、このブランド崩壊は見るに耐えないものがある。いつかスクエニが本当に面白いゲームを開発して、王者として復活してくれることに期待したいものではあるが、その道は険しいかもしれない。

大阪よりインターネットラジオBS@もてもてラジ袋を毎週配信。 http://www.moteradi.com/ 市民生活の専門家。易者。自由律俳句を詠む。 旅と読書と麺類(特にうどん)とファストフードとアルコールをこよなく愛している。 日本各地の大衆居酒屋や立ち飲み屋めぐりも趣味。 JR天満駅周辺の格安飲み屋に常駐している。

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