【ブラジル戦プレビュー】英仏から「一瞬の判断の誤りが命取りになること」「ゴールへの迫り方」「ゴールの奪い方」を学ぶ。

  by 香椎みるめ  Tags :  

 FIFAコンフェデレーションズカップがまもなく開幕。コンフェデ杯に出場できるのは、世界209の国・地域の各大陸王者と開催国の8カ国のみ。その一角に名を連ねる日本代表は15日にブラジル代表、19日にイタリア代表、22日にメキシコ代表と1次リーグで対戦し、準決勝進出を目指します(日付は現地時間)。

 初戦のブラジルとは2012年10月に0対4で敗れて以来の対戦。その間、サッカー王国は監督交代を発表し、経験豊富なルイス・フェリペ・スコラーリが監督に就任しました。8カ月前の面々に加え、バイエルン・ミュンヘンの欧州制覇に貢献したダンチやグスタヴォ、国内組の有力選手のジャジソンやベルナルヂもメンバー入りを果たしています。

 ブラジルは9日、国際親善試合・フランス代表戦を3対0で快勝しています。フランス戦のスタメンは、ジュリオ・セーザル、ダニ・アウベス、チアゴ・シウヴァ、ダヴィド・ルイス、マルセロ、パウリーニョ、グスタヴォ、フッキ、オスカル、ネイマール、フレッヂという顔ぶれで、おそらく日本戦も同じメンバーが先発する見込みです。
 
 英仏から「一瞬の判断の誤りが命取りになること」を学ぶ。

 スケールダウンした印象があるとはいえ、ブラジルの攻撃陣には注意すべき選手が大勢います。彼らはチャンスを確実にゴールへつなげる力があるだけに、一瞬の判断の誤りが命取りになります。9日に戦ったフランス、4カ月前に対戦したイングランド代表の失点シーンを振り返りましょう。

 フランスが54分に喫した失点はアンラッキーな形のショートカウンターから。左サイドでフレッヂがドリブルを仕掛け、ゴール前は3対2でブラジル有利の情勢。右CBのラミは、ゴール前のオスカルを見ながら、フレッヂのミドルを警戒していました。DMFのギラボギが下がってフレッヂのチェックに行って助かったと思いきや、ラミは中のオスカルから目を離してしまいます。フレッチにラストパスを通され、呆気なくゴールを割られました。

 イングランドの失点シーンは、CBのケイヒルが不用意にボールを運んだ挙句、カットされて同点ゴールを献上するというものでした。しかもその直後、今度はCBのジャギエルカとGKのハートがプレッシャーに根負けし、危険な位置でボールを失っていました。今野泰幸や吉田麻也は「プレッシャーの中で攻撃を組み立てられるか」「つなぐか、蹴り出すかのメリハリが付けられるか」が求められます。

 より対応が難しいのは、中盤の選手が放つミドルシュートでしょう。特にカウンターを食らう際、どうしても注意は「ボールを運んでいる」「ラストパスを引き出そうとする」前線の選手に向きます。もし攻撃を一度跳ね返しても、そのボールが後方に転がれば、少し遠い距離からでも枠を狙える選手がブラジルにはいます。パウリーニョやエルナネスは必ず決定的なプレーをやってのけます。

 仏流「ゴールへの迫り方」と英流「ゴールの奪い方」。

 10月の対戦時、日本の選手は一定の手ごたえを掴んではいましたが、結局無得点に終わっています。セットプレーも含め、ブラジルの守備を攻略するには「相当の工夫」が求められそうです。フランスはGKとDFラインの間に「速く、パワフルで、ゴールに向かう」ボールを蹴り込み、何度かゴールに迫っていました。そうしたボールが蹴れそうなのは本田圭佑でしょうか。

 世界屈指のCBであるチアゴ・シウヴァとダヴィド・ルイス。彼らとの力勝負は避け、スペースに飛び込むことで活路を見出したいところです。2月にブラジルと対戦したイングランドは、チアゴ・シウヴァと左SBのフェリペ・ルイスの間にスルーパスを出し、右からウォルコットが拾い、ルーニーの先制点に繋げています。ゴールへ向かう動きに優れる岡崎は、遠藤保仁らにラストパスさえ出してもらえば、ウォルコットの役割をこなせるはずです。

 前回対戦時、香川真司は後半からトップ下でプレーしたものの、効果的なプレーを見せられませんでした。イラク戦も「本田や前田遼一の不在」「チーム全体の出来が低調」だったことを考慮しても、トップ下で満足行く仕事は出来ず。ただ、裏を返せば「ベストメンバーでの左サイド」なら、オーストラリア戦のように、攻撃にアクセントを付けながらゴールに近付けています。コンフェデ杯は「左の香川」としてインパクトを残して欲しいです。

 日本人がほっこりし、ニヤニヤする動画。

 2勝5分け2敗。過去9試合のブラジル代表の勝率は.222に過ぎません。現地メディアは代表への批判を強めているそうです。2011年の南米選手権、2012年の北京オリンピックでタイトル獲得に失敗し、W杯も2大会連続でベスト8止まりですから、当然と言えば当然かもしれません。「代表の最終調整は緊張感が漂っていた」という報道もありました。日本にはサッカー王国が苛立つような粘り強い戦いを期待したいです。

 最後に「ほっこりする」話題を一つ。2011年のクラブワールドカップで来日したサントスは12日、日本代表のW杯出場を歓迎する動画をYoutubeにアップしています。ブラジル人選手が日本語で「日本最高」と連呼した直後、サントスのYoutubeチャンネルへの登録も呼び掛けています。日本人としてはちょっとニヤニヤしたくなるアピールですが、こうした取り組みはJクラブも応用できるはずです。

香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

Twitter: GigaMirumeK