『CYGNI All Guns Blazing(シグニ)』レビュー:既存の常識に挑んだコナミの新作シューティングゲーム! 賛否両論なその内容とは

「グラディウス」シリーズや「ツインビー」シリーズなど、ゲーム史に名を残す傑作シューティングゲームを多数開発してきたコナミ。しかし、ゲームが進化した現代では新作シューティングゲームの発売自体が多くなく、コナミからシューティングゲームが発売されることも、復刻版的なものを除けばゼロといっていい状況。しかしそんな中、新作縦スクロールシューティングゲームが発売された!

タイトルは『CYGNI All Guns Blazing(シグニ)』! 『グラディウス』『沙羅曼蛇』『ツインビー』『アクスレイ』『ゼクセクス』……コナミの傑作シューティングとともに育った筆者としては、見逃すわけにいかない! 早速自腹購入したので、その内容を紹介したい。

賛否両論! 『CYGNI All Guns Blazing(シグニ)』の内容とは

『CYGNI All Guns Blazing(シグニ)』は、コナミからリリースされた新作縦スクロールシューティングゲーム。FPS(一人称シューティングゲーム)やTPS(三人称シューティングゲーム)ではなく、見下ろし型視点で縦方向へスクロールする……つまり、めちゃくちゃ大雑把にいうと「東方」シリーズ的なシューティングゲームだ。

ただ本作、コナミが開発しているのではない。開発したのは、スコットランドのデベロッパー・KeelWorks。

コナミが行っているのはゲームの販売、パブリッシャー業務だ。このため、コナミの過去のシューティングゲームと比較することには、あまり意味がない。もちろん、そうはいってもコナミシューティングで育った筆者は、本作発売前、「コナミから新作シューティングが出るのか!」と大興奮した。

しかしながらこの記事では、その興奮とともにコナミの過去作とは切り離し、純粋に本作の内容についてレビューしたい。

では、筆者のプレイした感想はどんなものか……というと、「斬新なおもしろさは持っているが、斬新だからこそおもしろさが伝わりにくい」というもの。現在、PC版を配信しているSteamではレビューの総合結果が「賛否両論」になっているが、そうなってしまうのもよくわかる。本作は、確実に人を選ぶ作品だ。

本作の基本的なゲーム内容は、縦スクロールシューティングゲームのシステムをストレートに踏襲している。敵弾を避けつつ、出現する敵をショットで破壊。上方向へとスクロールして進んでいくとやがてボスが出現し、ボスを倒せばステージクリア……というものだ。

ストーリーも、生体兵器を操る異星人が襲ってきたから立ち向かう……というシンプルなもので、とてもわかりやすい。人間ドラマや物語展開の起伏など詳しく描くわけではなく、あくまで状況説明のみ。だが、シューティングゲームのメインはストーリーではないのでこれで十分だろう。

では、どこが斬新なのかというと、パワーアップシステム。敵を倒すことでエネルギーアイテムが出現。取得すると、ショット、もしくはシールドの強化に使うことができる。

ショットにエネルギーを割り当てれば攻撃力が増加し、シールドに割り当てればHPが増加する。ただ特徴的なのが、いつでも振り分け直すことができること。シールドへ割り当てたエネルギーを、即座にショットへ戻す……といったことがボタン一発で行える。

このシステムこそが、本作の中心だ。

本作のパワーアップは、一見、攻撃力と防御力のどちらを重視するか、プレイヤーに選ばせるだけのものに思える。しかし、そうではない。シューティングゲームのゲーム性を変えるほどのインパクトを持っている。

シューティングゲームのゲーム性とは、「避けて、撃つ」。これはシューティングゲームの元祖・インベーダーゲームのころからの伝統であり、「常識」と表現しても過言ではないだろう。

仮にこの常識に従って考えるのであれば、エネルギーをシールドに割り当てる戦略的な意味は薄い。「敵の攻撃は避ける」という前提に立つなら、エネルギーを攻撃力に割り振って敵を倒すための時間を減らし、「敵や敵弾を避けなければならない時間」を短縮する方が合理的だろう。つまり、エネルギーをショットに割り振るのがデフォルト。

だが、本作のパワーアップシステムは、こうしたシューティングの常識とは異なる性質を持っている。

何が違うのかというと、敵の攻撃の激しさ! 本作は敵の数、敵の弾数ともに圧倒的。しかも、スピードが速い。

敵の数や敵の弾数が多いというだけなら、たとえば「怒首領蜂」シリーズや「東方」シリーズなどの弾幕シューティングも同様だ。しかし、弾幕シューティングの弾は、基本的に速度が遅い。プレイヤーが回避することを前提としているため、どんなに大量であっても回避できるよう、速度を調整しているのだ。

(▲画像は『怒首領蜂大復活』Steam版)

これに対し本作の弾は、量、速度ともに、プレイヤーに避けさせる気がない。大量に出現し、その上ハイスピード。しかも同時に追尾型のレーザー攻撃などが放たれることもあるため、絶対に被弾を回避できないというシチュエーションも存在している。

では、どうすればいいのか? その答えこそが、本作のパワーアップ要素。つまり、被弾した上で、エネルギーをショットからシールドに割り当てればいい。

つまり本作のパワーアップ要素は、言葉通りの「パワーアップ」ではなく、本質的には「リソースマネジメント」といえる。「リソースマネジメント」とは、RPGやトレーディングカードゲームなどで、HPやマナ、ゴールドやアイテムといった資源=リソースを管理するという要素。本作では、ショットのパワーアップ、シールドのパワーアップというリソースを管理していくことになる。

この仕組みによって、伝統的なシューティングゲームの「避けて、撃つ」というゲーム性の比重が軽くなっている。本作は、「撃ってエネルギーを入手し、ダメージに応じてシールドとショットをやりくりする」ゲーム性の作品なのだ。

筆者は本作を楽しむ上で、こうした「シューティングゲームからのゲーム性の変化」を受け入れられるかどうかが最初のハードルだと考えている。

もし、シューティングゲームが持っていた「避けて、撃つ」という部分にこだわるなら、ぶっちゃけ、あまりおもしろくないと感じるだろう。というのも本作は回避を前提としていないので、「いかに、弾を回避しつつ敵を撃つか」という立ち回りのパターンを作ることが困難なのだ。シューティングといったらパターン作り……なんて考えていると、本作についておもしろさを感じるのは難しい。

一方で、本作のゲーム性を受け入れられるなら、リソースマネジメントを前提とした爽快な楽しさが味わえるだろう。まず、被弾を前提とした作りになっているからこそ、敵を撃つことに集中できる。これはつまり、破壊の爽快感を強く味わえるということ。

しかも、本作はUnreal Engineによる美麗ビジュアルも特徴としているため、破壊描写が美麗。ある程度の被弾をものともせずガンガン敵を倒していく体験は、とても爽快だ。

ただ、本作のゲーム性を受け入れる……というのは、なかなかに難しい。というのも、美麗で現代的になっているとはいえ、本作の見た目は明らかに伝統的な縦スクロールシューティングゲームを継承している。このため、伝統的なシューティングゲームの楽しさを期待するなという方が難しい。

さらに、本作は2つの点で課題も抱えている。

チュートリアルと大味なプレイ感が課題! でも今後の作品には期待したい

2つの課題のうちの1つが、チュートリアル。本作のチュートリアルは、戦闘機のパイロットがレトロなコンピューターで訓練をしている……というシチュエーションを再現していて、とても演出に力が入っている。だが、チュートリアルの構成としては肝心な部分を説明できていないと、筆者は思う。

本作のチュートリアルで説明できていないのは、本作がショット・シールドというリソースをマネジメントするゲームであるという点。もちろん、ショットからシールド、シールドからショットといたエネルギーの振り直し操作についてはしっかり説明されている。しかし、ゲーム中のどのようなシチュエーションでエネルギー振り直しをすべきか? という説明はされていない。

このためプレイヤーは、「被弾が大前提」という、シューティングゲームとして異質な要素を理解しないまま、ゲームをプレイしてしまう。それはつまり、一般的なシューティングゲームのように「被弾しない」ようにプレイするということ。

しかし本作で、「被弾しない」ための立ち回りは通用しない。絶対に被弾する。これは、一般的なシューティングという前提でプレイしている人間にとってはストレス以外の何物でもない。

結果として、「おもしろくなかった」という感想を抱く可能性は少なくないだろう。

次に、2つめの課題は、被弾すべきタイミングがわかりにくいこと。本作は被弾を大前提としたゲームだが、弾を回避しなくていいわけではない。片っ端から被弾していてはシールド不足でゲームオーバーになってしまうので、回避すべき弾と、被弾すべき弾を見分けることがポイントとなる。

だが、どの弾が被弾すべきものなのか、瞬間的に判断のつかないことがほとんど。追跡型のレーザーであっても、回避し続ければ逃げ切ることが可能なのか、逃げ続けてみないとわからない。このため「逃げようとあがいた末に、被弾してしまう」……というかたちになる。

この結果、「有利な位置取りを狙って、あえて被弾」という戦略的判断を行っているというより、「回避に失敗して被弾しちゃったけど、エネルギーが余っていたから回復できた」という印象を持ってしまう。リソースマネジメントを使って、えんえん失敗のリカバリーをしているような感覚だ。

もちろん、ゲームを繰り返しプレイするうちに、回避すべき弾と、被弾すべき弾がだんだん分かるようになる。ただこうなってくると今度は、エネルギーに余裕が生まれ、「回避すべき弾」であっても、ある程度当たって問題ないと感じてしまう。この「ある程度当たって問題ない」という心の余裕は攻撃の爽快感に繋がる部分でもあるのだが、同時に「だったら、回避は適当でOK」という大味さにも繋がっているように感じた。

(▲画像は『斑鳩』Steam版)

2点の課題のうち、回避タイミングという点では回避可能な弾と回避不可能な弾を視認しやすくしてくれれば、大味な印象は緩和されるのではないだろうか。たとえば、トレジャーのシューティングゲーム『斑鳩』のようなイメージだ。

『斑鳩』は、敵と敵弾が白/黒どちらかの属性を持っており、自機も白・黒どちらかの属性へボタン一発で切り替えられる。そして、同じ属性であれば被弾してもダメージを受けない。色によって明確に「被弾OKの弾」と「被弾NGな弾」が把握できるため、プレイヤーは戦略的に属性を変更できる。

本作も、「今このタイミングで被弾し、シールドへエネルギーを割り振ろう」という立ち回り上のキモがもう少しわかりやすかったら、より戦略的に立ち回れるようになるだろう。すると、「被弾してしまった」から「戦略的に、あえて被弾した」という具合に印象の変化が起こるため、大味さが緩和されるのではないかと思うのだ。

(▲画像は『斑鳩』Steam版)

なお、最終的に筆者は、本作を好意的に受け止めている。シューティングゲームというジャンルに新しい風を呼び込もうという志は尊い。

これから先もシューティングゲームという歴史的なジャンルが現役で生き残るためには、本作のように挑戦的なシステムを持つ作品が必要だろう。結果的にプレイヤーの感想が賛否両論になったり、場合によってはビジネス的に失敗したりすることもあるだろうが、新しいものを生み出す際のチャレンジとその結果としての失敗はどうしても避けられない。

そう考えているからこそ筆者は本作を自腹で買ったし、是非次回作も作って欲しいと思っている。もちろん次回作が出たらそれも自腹で買う。

……ただ、PC版を発売日に購入して、その数日後にEpic Storeで無料キャンペーンを行ったのは残念だった。数カ月後ならまだしも、数日後……。こういうことが続くとさすがに、発売日に自腹で買うモチベーションが萎えてしまうので、もし次回作が出るのであれば、もう少しキャンペーン内容や時期を検討してほしい。

文/田中一広

ガジェット通信ゲーム班

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