5月31日から開催されるモーターサイクル競技『マン島TTレース』に参戦していたレーサーの松下ヨシナリ氏(43)が27日、予選のレース中に事故を起こし死亡した。
松下氏の参戦マシンは、ボディにボーカロイドの「初音ミク」が描かれた電動レーサーバイク『TT零13』で、このバイクは以前に東京ビックサイトにて開催された『東京国際アニメフェア2013(TAF)』に出展され、その目を引くようなデザインから来場者の注目を集めていた。
松下氏は同レースに2009年より参戦しており、昨年のレースでは、途中リタイヤで終わってしまった反省を踏まえてマシンの改良を徹底し、さらなる進化を遂げさせていた。松下氏自身も今回のレースに対して「十分表彰台は狙える。日本人として表彰台に日の丸を挙げたい」と強い意気込みを語っていた。
今回松下氏が参戦した『マン島TTレース』は、イギリス王室属国のマン島で開催されているツーリスト・トロフィーのことで、1907年から続けられている世界最古の公道バイクレースである。そんな伝統的なレースであるが、安全面から常に将来が危ぶまれているレースでもある。
『マン島TTレース』はレース専用のサーキットではなく、封鎖した公道にてレースが行われる。コース全長は約60kmでコーナー数は約230。周回数は4〜6ラップ(クラスによって異なる)となっている。民家や街路樹が立ち並ぶ市街地を平均速度200km以上、直線路では300kmを超える速度で走り抜けるため、転倒やコースアウトをすればライダーは重症あるいは死亡に至る例が多い。
実際に1907年から2009年まで239人のライダーが死亡している。
日本人の参加者では1962年に高橋国光氏がスタート直後激しく転倒し、意識不明の重体に陥った。1966年には元スズキワークスライダーの藤井敏夫氏が公式練習中に、2006年には前田淳氏が練習中後続車に追突され死亡している。
2006年には東京都が三宅島にモーターサイクルレースの開催を目指し、当時の都知事であった石原慎太郎氏が『マン島TTレース』を視察するも、安全面での懸念などから開催を断念した。
バイク乗りからは「こんな道でレースなど、正気の沙汰ではない」と言われており、2012年のレースではライダー・観客共に死者0人で済んだことが”奇跡”と語られている事から『マン島TTレース』がどれほど過酷なレースであるかが伺える。
Photo by Goodsmileracing.com。http://www.manx.jp/ttcourse/
参考サイト:松下氏が所属していたTeamMIRA公式HP【リンク】