「シャーロック・ホームズ」「東京リベンジャーズ」…物語の当時者になり本物の感動を体験できます 「イマーシブ・フォート東京」クリエイティブ・ディレクター津野庄一郎インタビュー

  by ときたたかし  Tags :  

東京・お台場にイマーシブ・テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」が、2024年3月1日(金)に開業します。

この「イマーシブ・フォート東京」は、完全没入体験(イマーシブ体験)が特色の新テーマパークで、ミステリー、アクション、ホラー、食体験など多様な完全没入体験が揃い、「シャーロック・ホームズ」「【推しの子】」「東京リベンジャーズ」「Identity V 第五人格」など超人気コンテンツの世界観も体験できることでも注目されています。

その開業を前に「イマーシブ・フォート東京」全体の監修、そして個々のアトラクションを現場に入って制作も行っている株式会社刀 シニア・クリエイティブ・ディレクターの津野庄一郎さんにお話をうかがいました。

■津野庄一郎 (つの・しょういちろう)
株式会社刀 シニア・クリエイティブ・ディレクター

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのV字回復の契機となった「ハロウィン・ホラーナイト」では、総合プロデューサーとしてイベントを成功に導く。また、日本における本格的なイマーシブシアターの先駆けとなった、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン「ホテル・アルバート」シリーズ(2018年、2019年)の製作を担当。株式会社刀に参画後は、西武園ゆうえんち「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」、「ウルトラマン・ザ・ライド 世紀の決闘」やハウステンボス「HAUNTED HALLOWEEN」などの制作を担当した。

●3月1日(金)に東京・お台場にイマーシブ・テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」がいよいよ開業しますが、ここで改めて簡単な説明をお願いいたします。

「イマーシブ・フォート東京」では完全没入体験をテーマとしていて、約12個のアトラクションを用意しています。簡単に言うと実際に自分が物語の中に入って行って、その登場人物と会話をしたり、時には自分自身がその物語の登場人物の一端を担う体験なので、今まで本当になかったエンターテインメント体験だと思っています。

私やチームメンバーがユニバーサル・スタジオ・ジャパンに在籍していた当時、エンターテインメントを制作していた時はイマーシブという言葉をそれほど使っていなかったのですが、ゲストをいかに当事者にしていくかということには大いに力を注いでいました。ゲストは絶対に傍観者であってはならなくて、必ず当事者になってもらわなければいけない。自分自身がその空間の中で当事者になって自分自身がその物語を体験することで、本当の感動が生まれていくと思っています。

●「ホテル・アルバート」シリーズはコロナ禍前でしたが、世の中が戻り、いよいよ始動の時という感じもしますよね。

コロナ禍の時期に巣ごもり期間があってVODに代表されるような、お家で快適にエンターテインメントを体験できる設備が、あの期間に非常に世の中に広まったと思っているのですが、コロナが落ち着いて、いよいよみなさんが外に出て行けるという時、やっぱり僕たちはライブ・エンターテイメントにこだわりたかった。生の感動、生の体験を思いっきり楽しんでいただくことが、僕たちが作っていくエンターテインメントのあり方だと思っていて、この「イマーシブ・フォート東京」はその集大成だと思っているんです。

今はまだイマーシブシアターそのものは世の中で全然広まっていってないのですが、めちゃくちゃ感動、感情を揺さぶられるエンターテインメント体験なので、これをぜひたくさんの方々に体験していただきたいという思いで、今回「イマーシブ・フォート東京」をスタートさせていただくことになりました。

●そして「シャーロック・ホームズ」「【推しの子】」「東京リベンジャーズ」「Identity V 第五人格」など超人気コンテンツの発表も話題になりました。

「イマーシブ・フォート東京」では、たとえば連続殺人事件が起きたりするほか、「【推しの子】」「東京リベンジャーズ」など作品、キャラクターとコラボさせていただくコンテンツもあるのですが、普段であればテレビの中、画面の中でしか観ることがなかった世界に、自分自身が飛び込み、その世界の登場人物と会話ができたり、その登場人物たちと力を合わせて何かを解決していくみたいな体験もあります。あの大好きな登場人物と会話できたらどんな気持ちになるんだろうって、普段みなさんが頭の中で想像しているようなことが実際に叶っていけるのが、この「イマーシブ・フォート東京」の体験かなと思っています。

ゲストのみなさんが受け身の状態であっても、どんどん物語に引き込まれていく構造を作りたいと思っているんです。そういう意味では日本人向けに、ではないのですが、よりイマーシブシアターというハードルをグッと下げていくことが、この「イマーシブ・フォート東京」の体験の大きなところかなと思っています。シャイな日本人の方々でも十分に楽しんでいただける体験を作っていきたい、気軽に楽しめるエンターテインメントにしていくことが、僕たちが作るイマーシブシアターの目指すべきところかなと思っています。

●ちなみにひとりで行っても楽しめるものでしょうか?

おひとりで来ていただいても十分楽しめると思います。というのも、たとえばグループで来ていただいても、どうしても常に一緒に行動するというものではないんですよね。イマーシブシアターというものは、同じ時間軸のなか、いろいろなところでいろいろなことが起きているんです。

たとえばひとりの登場人物を追っかけていったとしても、別のところではまた別のことが起きていて、もっと具体的に言うと、たとえば殺人事件が起きている時、シャーロック・ホームズたちが他の事件の推理をしていたり、別のところでは他の登場人物が他のことを起こしていたりするんです。今回の「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」というイマーシブシアターに関しては、約3000平米とめちゃくちゃ広い中で行うので、一か所で何か起こっているわけではないんです。

●一演目で約3000平米を使うのですか!?

そのとおりです。19世紀末の、シャーロック・ホームズの物語に登場するたくさんの登場人物たちが、いろいろなことを起こしていくので、仮にゲストの方が一緒に行動されようとしても、おそらく中でバラバラになってしまうんですね。なので、体験はおひとりで来ていただいてもグループで来ていただいても楽しめると思っています。

●今はSNSがあるのでひとりでもグループでも、体験を共有したりすることで後から話が盛り上がりそうですね。

そうなんです。イマーシブシアターってもちろん施設を体験している時間もめちゃくちゃ楽しいのですが、実は終わった後にも体験がずっと続いていくことが、イマーシブシアターの魅力かなと思っています。僕自身も「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」時代に「ホテル・アルバート」という演目を作ったのですが、あれを作りたいと思ったのも、特に後半の体験を終わった後にゲストにみなさんが考察していく時間として楽しんでーいただきたいと思ったからなんです。基本的にはひとつのストーリーを体験するのですが、いろいろな角度から見ているので、「わたしは実はこんなことを見ていた!」とか、後からどんどん出て来るんです。

●実際、筆者も2018年の初年度に「ホテル・アルバート」を体験したのですが、確かに物語はひとつですが、ゲストによって異なるシーンがあったことを記憶しています。

たとえば優しそうな登場人物がいるとして、あるゲストはこの登場人物の裏の顔を見てたいりすると、人って必ずそのことを人に伝えたくなるんですよね。「わたし、実はあの人が誰誰と話している場面を見た!」「実はこんなことを言っていた!」「あの人は実は裏側ではこんな悪いことをしていた!」みたいなことですね。

物語の裏側の真実みたいなものをどんどんエンターテイメントの中に入れていくことで、ゲストによって自分だけが見てしまった、自分だけが知っている出来事みたいなのが出てくるので、それをいろいろな方々と共感したくなるんですね。今はSNSも発達していますので、ひとつの演目なのですが、その外側でたくさんの考察が広がっていくっていう展開は、イマーシブシアターの面白いところのひとつだなと思っています。

●「【推しの子】」や「東京リベンジャーズ」などIP系のコンテンツと、イマーシブシアターの親和性は、どのような感じでしょうか?

「【推しの子】」に関しては、あのアニメの物語の世界観の中で、自分自身も入り込んでいきながら、特に「【推しの子】」はパークの全体を使って体験するイマーシブ体験にしたいと思ってるんです。なので、さまざまなところで自分が動き回りながら、物語を体験していくとうことが、「【推しの子】」体験の非常にコアな部分かなと思っています。

また、ファミリーの方々にもぜひ体験していただきたいなと思っていて、もともとイマーシブシアターって、ややもすると非常にアダルトで、大人のエンターテイメントに慣れた方々しか体験して楽しんでいただけないみたいなジャンルに海外ではちょっとなりつつあるんですが、この素晴らしいエンターテイメント体験をより多くの方々に楽しんでいただきたいなと思っているんです。

その意味では、【推しの子】のアトラクションや、「ヘンゼルとグレーテル」というオリジナルのイマーシブストーリーズがあり、それもイマーシブ体験としてご用意しているので、ぜひご家族で、お子さんとお母さんと一緒に来ていただいて体験してほしいですね。「わたしはこんなものを見た!」とか「お母さんはこんな体験をした!」みたいな、親子の会話も生まれていくんじゃないかなと思っているので、さまざまなゲストの方々に楽しんでほしいです。

●ちなみにIPは、今後変わっていくのでしょうか?

そうですね。変えていきたいと思っています。僕たちが作るライブ・エンターテイメントのひとつの構造なのですが、どれだけ素晴らしいエンターテインメントを作っても、必ず飽きられていってしまうんですよね。たとえばテーマパークによくある、非常にたくさんのお金かけたライド・アトラクションは1回作ってしまうと、10年、15年、内容はなかなか変更しにくいと思うのですが、僕たちが手掛けるこのライブエンターテインメントは、本当に短期間でいろいろとコンテンツを変えていけるので、IPに関しても同じIPなのですが、続編や別のバージョンみたいなものも作っていけますし、また新たに別のIPとコラボさせていただいたり、いろいろな可変性を持ってパークを運営していけるので、そういう強みもあると思っています。

●今日はありがとうございました。最後になりますが、開業に向けて今一度、意気込みをお願いいたします。

目下、刀の全勢力を注いで作っていっているのですが、本当に今まで体験したことがなかったようなエンターテイメント体験を、ゲストのみなさんへ提供したいと思っております。日常生活の中では絶対に体験することのできないような出来事、事件、感動など、生の興奮を体験していただける場所になっているので、ぜひたくさんの方々に来ていただいたいです。おひとりでもグループでもファミリーでもぜひ来ていただいて、イマーシブ体験というものを、実際に体感してください。テーマパークを超える完全没入体験とは、どういうものなのかということを、ぜひ体感していただけたらなと思っております。

<イマーシブ・フォート東京 施設概要>

開業時期: 2024年3月1日 (予定)
総面積:約3万平米 (旧 ヴィーナスフォート 2F/3F部分に相当)
アトラクション数:12
店舗数:6 (飲食4店舗、物販2店舗。1店舗はレストランとアトラクションを兼ねる)
Webサイト:https://immersivefort.com/

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©和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会
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ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo