初のビジネス書『余白思考』山﨑晴太郎インタビュー「毎日心も余裕がなくなっている今の時代だからこそ『余白』の力を活用していただければ」

  by ときたたかし  Tags :  

TBS「情報7daysニュースキャスター」、日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」に出演するクリエイティブディレクターの山﨑 晴太郎さんが、自身初となるビジネス書『余白思考 アートとデザインのプロがビジネスで大事にしている「ロジカル」を超える技術』を日経BPより発売しました

山﨑さんは、ロジカルシンキングばかりが肯定されている「従来の仕事のあり方」や「価値の生み出し方」に疑問を投げかけ、論理的思考・データ分析だけでは戦えない時代の「直感」と「感性」の鍛え方として、「アート思考」「デザイン思考」「デザイン経営」を横断する非言語思考の根本として『余白思考』を提案します。

生産性・業績・処理能力を下げずにクリエイティビティを爆上げする思考法には、「人生を楽しんでほしい」という思いが込められているそうです。山﨑さんにお話をうかがいました。

●今回の著書、「余白思考」ですが、どのような経緯で書かれたのでしょうか?

本は以前から書く書かないみたいなお話はありましたが、なかなか前に進んでいなかったんです。ずっと書けていなかった理由には、やっぱり僕たちはデザインと言う視覚表現を日々扱っているので、どちらかと言うというと非言語領域の世界に生きているんですよね。何かを言語化するということ自体が概念の周辺にある曖昧さを奪い、何らかの輪郭を与えてしまうのではないかと。そこにはちょっと恐怖感みたいなものがあったんです。

ただ今回、テーマ自体もそれこそ余白ということで、その曖昧性みたいなもの自体がテーマに出来るということもあり、こうして形になった、ということだと思います。

●元々何かしら書きたいお気持ちは、ちょっとはおありだったわけですね。

そうですね。書きたい気持ちはありました。思想やデザイン、アートの思想みたいなものを、作品じゃない形で世の中に伝えていきたい気持ちは、いつもあるんです。

ただ、そのデザイン系やアート系のアカデミズムな書籍は、言葉が難解で概念が少し難しくなりがちなんですよね。たぶん一般の方がビジネス書として読むようなものではないのですが、そういうものこそ残さなきゃとは思っているんです。

今回幸運にもビジネス書という形式で、比較的短いセンテンスでいろいろなテーマについて、本質だけをポンと突くような体裁なので、そういう意味ではまとめやすかったですし、書きやすかったです。

●内容の詳細は本書に譲るとしまして、この“余白思考”のアイデアは、デザイン界を越え、確かに日々の生活をポジティブにする効果を期待出来そうですよね。

もともと余白は、僕のクリエイション自体の軸と言うか、そもそも余白というものを内包していたりするんです。日本の文化的特徴みたいなところもあると思います。僕はアート活動を普段海外で展開をしているんですが、西洋には余白という概念がそもそもないんです。

●そうなんですね。初めて知りました。

そうなんです。ブランクスペースとかネガティブスペースって訳されるんですよ。

●マイナスな捉え方ですね。

ヴォイドって空洞みたいな意味で言われたり、ブランクスペースって何もない場所って言われたりもするのですが、我々が日頃使っている余白という言葉って、もうちょっと色々な意味を内包しているというか、何も見えないけれども、そこにきちんと意味がある、みたいな感覚で使っているじゃないですか。僕は日本人の表現者として、その余白を武器にして世界に作品を発表しているということが、ベースにはあるんです。それをビジネス書という体裁にしたのが、今回の書籍ですね。

●普段からそのような思考でいつつ、ご自身は経営者でもあるのでビジネス寄りの視点でも書籍を手がけられていますよね。

今思えば、そうですね。余白を軸にすることは決まっていたので、いわゆる壁打ちをしてもらいながら書いていったのですが、そのプロセスでは、たとえば余白だと思ってやっていない僕の行動やコミュニケーションなども、実は余白だったのかも、と僕自身が思うこともありました。執筆する作業は、いろいろ自分にとっても発見が多かったです。

●今こうして発売を迎え、書籍化して良かったなと思うことは何ですか?

今思うと、書いてよかったなと本当に思います。頭で考えているだけではなく、要は伝え方だけなんだな、と思ったんですよね。本当に考えてること、やっていることを難しくアカデミックに書くことも出来るんでしょうし、分かりやすくビジネス書のように書くことも出来るということを、めちゃくちゃ当たり前なんですけど改めて発見したっていう感じです。

デザイン事務所だけではなく、製造業やスタートアップなど、会社をいくつか経営しているのですが、デザインに携わっていない社員にもぜひ読んでほしいと思いました。本にも書いたのかも知れないですが、世の中はやっぱり相対的な価値観で動くことが多くなりすぎてる気がするんですよね。

●ルールや目標みたいな縛りってありますよね。

そういうものと自分とのバランスが崩れている人が多いなって思う時があるんです。自分を大事にとか、そういう言葉でもいいと思うのですが、そういう風潮の中で僕が思うことは、やっぱり余白を持っていきましょうということ。社会と自分との間に、緩衝体のような余白を持って向き合うと、もう少しみんなが生きやすくなるのかなとは思ったりするんです。そのことは、僕が自分で経営をしている会社のメンバーを見ていても思うので。

●今日はありがとうございました。最後にメッセージをお願いいたします。

この「余白」という言葉に、もしかしたらマイナスの印象を持つ方もいらっしゃるかも知れません。でも本来は、非常に豊かで、多様な意味を内包する概念です。「余白」は埋めるべきものではなく、活かすものだと思います。デザインやアートの制作において、当たり前のように存在している「余白」の力。情報が飽和して、タスクが細分化され、毎日心も余裕がなくなっている今の時代だからこそ、少しでも多くの方に活用していただければうれしく思います。

■書籍概要
余白思考 アートとデザインのプロがビジネスで大事にしている「ロジカル」を超える技術
■著者:山﨑 晴太郎
■価格:1,760円(税込)
■発行元:日経BP
■ページ数:272ページ
■判型:四六版並製
■ISBN:978-4-296-00177-4

■内容紹介
論理的思考・データ分析だけでは戦えない時代の「直感」と「感性」の鍛え方

・KPI・PDCA…ガチガチなのに業績はいまいち
・資料作成や会議でいつも「ただただ忙しい」
・結論や根拠のない話ができる場がない
・予算・計画…「決めたこと」に縛られ自由がない
・メールにチャット…「すぐの返事」が当たり前に
・数字・データ一辺倒で、人の心を軽視している
……ビジネスの行き詰まりを突破するには?

「余白=埋めるもの・まだ何も書かれていないスペース」だと思っていませんか?
その発想をやめ、「いかに“いい余白”をつくるか」に考え方を変えること。
それだけで、物事の捉え方・見え方が変わり、思考の幅が広がります。

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo