先日、イベントがあって大阪に何日か滞在してきました。
せっかくなので大阪でしか食べられないものをいろいろ食べて回ったのですが、そのうちのひとつが大阪うどん屋の「いなの路」。大阪・難波の相生橋筋にあるお店です。
松本人志や多くの吉本芸人が愛したうどん
「いなの路」はかつて「なんばグランド花月」の近くにあり、2017年に惜しまれながら閉店した「信濃そば」の味を受け継いだ店。劇場の近くだったということもあって多くの吉本芸人が足を運び、その味がソウルフードとして心に刻まれているのだといいます。
特にダウンタウンの松本人志さんは「地球一うまい」「家の蛇口からここのつゆが出てきたら口をつけてなんぼでも飲める」などと絶賛しているというエピソードもあるそう。
そんな「信濃そば」の味を継承したのは、「信濃そば」の社長の姪っ子さんのご主人。4年かけて味を再現し、2022年に「いなの路」をオープンさせたのです。
店内に入ってメニューを見ると、松本さんが好んでいたという「きざみうどん・そば」や名物の「肉うどん・そば」のほかにもたくさんのメニューが。「炙りチーズカレーうどん・そば」なんていうハイカラなものもあったりします。
肉うどんとおにぎりを食べるぞ
食べたいものがありすぎるけど、胃袋はひとつ。悩みに悩みましたが、今回は肉うどんとおにぎりを注文してみました。
するとたまたまカウンター席に座っていたこともあって、すぐ目の前でおにぎりが握られ始めました。力感のないフォームでやさしく成形され、パラパラッと塩を振りかけるだけのシンプルなおにぎり。中身はありません。
見るからにウマそう。しっかりとおにぎりの形を保っているのに、食べたらパラパラとご飯粒がほぐれていきそうな繊細さ。絶対にウマいやつだ。
すぐに食いたい。でもせっかくだからうどんと一緒に写真を撮りたい。だけどこんなウマそうなおにぎりだから直ちに食べたい。だがしかしせっかくだからうどんと一緒に写真を撮りたい。やっぱりうどんとおにぎりを並べた写真は撮りたい。でもこんなウマそうなおにぎりだから直ちに食べなきゃ失礼にあたるかもしれない。おにぎりに失礼。ご飯粒に失礼。だけどやっぱりうどんと一緒に写真を撮りたい。せやけどウマそうなおにぎりだからこそ今すぐ食べたい。
なんて悩んでいたら肉うどんも運ばれてきました。おにぎりを食べてしまわずに済んだ。
やさしい味わいのつゆが骨身にしみる
うはあああ。なんて幸せなビジュアルの肉うどんなんでしょう。透明度の高いおつゆに柔らかそうな牛肉。散らされているネギも魅惑的。べらぼうにウマそう!!
まずはおつゆからズズズッといただいてみましたが……これはやさしい味ですね。温かくて、甘くて、鰹と昆布のだしに牛肉の旨味が溶け込んでいる、心の底からやさしい味。
芸人さんが劇場でドンズべりしても、それをすべて許すように包み込んでくれるようなやさしい味。骨身にしみわたります。
うどんは柔らかく、大阪うどんならではの食感。茹ですぎているわけでもなく、コシがないわけでもない。甘くて旨味たっぷりのおつゆをしっかり吸収してそっと口まで運び、そっと噛むとじゅわっと味が広がる麺。
味だけじゃなくて食感までもがやさしい。これはいろいろな人の心の支えになるのがよくわかる。ウマいというか、ほっこりと美味しい。
そんなおつゆをお供にいただく塩おにぎり。これがまた美味。絶妙な塩加減と握り加減なのは予想通り。口の中でパラリとほぐれて、じわりと広がる塩気。噛むたびに追いかけるご飯の甘味。最高の美味しさ。
ところがそこにやさしいおつゆが汁物として横にいるとその美味しさがさらに爆上がり。おにぎりの塩加減が強すぎないから旨味たっぷりのおつゆと完全に一体化。最高のコンビネーション。おにぎりを先に食べちゃわなくてよかった……!
こうなると最後はおつゆを完飲したら体に悪いなと思いつつ、最後にもう一口だけが止まらないムーブに突入。一口ごとにしみる。まるで自分もうどんになってしまうんじゃないかってくらいにおつゆをいただいてしまった……!
食べる人を温かく包んでくれるような、やさしいやさしい大阪うどん。その味を体験してみると厳しい舞台に立ち続ける芸人さんから愛される理由がわかった気がしました。完全に納得。美味しかった。ごちそうさまでした~!