人気ラーメン店『AFURI』を運営するAFURI株式会社が、日本酒『あふり』(雨降)の吉川醸造を提訴した件が、インターネット上で注目を集めている。
吉川醸造「商品を全て廃棄処分すること等を要求するものでした」
今回の出来事に関して、吉川醸造の合頭義理さんがインターネット上に「当社商品である日本酒「雨降(あふり)」に付された商標がAFURI社の商標権を侵害している旨の文書を受け取りました」「商品を全て廃棄処分すること等を要求するものでした」と掲載。
AFURI「本当にやむなくですが裁判所の判断を仰ぐ事にした」
多くの人たちがラーメン屋『AFURI』に対してネガティブな感情を持ち、数多く批判の声が出て、ある意味、炎上状態となっている。その後、AFURI株式会社代表取締役の中村比呂人さんが自身の公式Facebookに「本当にやむなくですが裁判所の判断を仰ぐ事にした」とコメントを掲載。現在、双方の視点から、双方の考えが書き綴られている。
<吉川醸造側の言い分>
「昨年8月、ラーメンチェーン店 AFURI株式会社(以下「AFURI社」といいます)から、当社商品である日本酒「雨降(あふり)」に付された商標(以下「当社商標」といいます)がAFURI社の商標権を侵害している旨の文書を受け取りました。文書の大意としては、”AFURI”と記載した当社商標の使用はAFURI社の著名性にフリーライドしその商標権を侵害するものであり、商品を全て廃棄処分すること等を要求するものでした。これにつき、双方弁護士を交えた協議を重ねて参りましたが、最終的に不調に終わったことから、AFURI社は、当社商標の使用差止や損害賠償等を求めて東京地方裁判所に提訴しました。当サイトにも記載の通り、「雨降(あふり)」銘柄は、丹沢大山の古名「あめふり(あふり)山」と、酒造の神を祀る近隣の大山阿夫利神社(以下「阿夫利神社」といいます)にちなんで命名したものであり、ラベル「雨降」の文字も阿夫利神社の神職に揮毫していただいたものです。また、当社は「雨降」の読み方としてローマ字のAFURIと記載していること、またそもそも「阿夫利」「あふり」は地域・歴史・文化に根差した名称であることから、当社商標の使用はAFURI社の商標権を侵害するものではないと考えております。AFURI社にご理解を求めてきましたが、訴訟に至ったことは誠に残念です。AFURI社では現在「阿夫利」「AFURI」で構成される商標を、「ラーメン」以外に150種類以上の物品・役務について取得しております。伊勢原市の施設にAFURI社に対する商標関連の苦情文が届いたと聞いたこと、また最近では「あふり」に関する名称を持つ事業を営む地元企業の代表からも不安を打ち明けられたことなどから、当社としても一定の情報開示をする責任があるのではないかと考えるに至りました。当社としては今回の最終判断を司法の場に委ねることとし、今後何らかの形で情報発信していく所存です。阿夫利神社の皆様をはじめ、地域の方々やお取引先の皆様には大変ご心配をおかけし申し訳ございません。引き続きご支援、ご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。吉川醸造株式会社 代表取締役 合頭義理」
ラーメンチェーン店『AFURI株式会社』より提訴されました。https://t.co/UxlAXhsmxN
— 雨降(あふり)のエヌ (@N_Jomu) August 23, 2023
<AFURI側の言い分>
「お騒がせして申し訳ございません。我々、AFURI株式会社は、2001年にラーメン店を神奈川県厚木市の山奥にオープンして以来、22年間、厚木市伊勢原市秦野市に跨がってそびえる丹沢山系、大山(通称 阿夫利山)から湧き出る美味しい天然水を使用して、ラーメンを作って参りました。私達なりに真面目に誠実に、ラーメンに、お客様に、世間さまに向き合ってきたつもりです。AFURIの屋号を冠する様になったのは、2003年から。その20年の間に国内に16店舗を数えるまでに成長出来ました。そして今から7年前、2016年にアメリカのオレゴン州、ポートランドにラーメンを食べられる和食レストランとしてAFURI IZAKAYAを開店し、その料理に合う日本酒やクラフトビールを協力企業さんにお願いしAFURIオリジナルラベルの商品として販売してきました。(現在、海外は11店舗になりました) そして、以前から構想していた「阿夫利山の麓で自分たちでオリジナルの日本酒やビールをつくれる様になる」というプロジェクトの為に「お酒」としての「AFURI」の商標を取得し、そのプロジェクトを進めてきました。そんな中、不動産業を大きくやられているシマダグループさんという企業が、コロナ禍に、伊勢原市の吉川醸造さんという酒蔵を買収し、リブランディングして「雨降AFURI」という日本酒を販売し始めたんですね。それはそれで、後継者問題など、様々な課題のある日本酒業界への他業種からの参入と言う事だし、地元の発展に取っても、とても意義深いものであると個人的には思うのですが。問題は、その新しい商品名が「雨降AFURI」という事で、それは我々が取得した「AFURI」というお酒の商標を完全に侵害していると言う点です。更に、海外に行くと、全く同じ「AFURI」になってしまうんですよね。私としては、こちらが商標侵害されてる側ではありますが、愛すべき阿夫利の名を少しでも汚す事の無き様、法廷ではなく、なるべく話し合いで解決したいなと思って、自分からも「お互いに取っても地域にとっても、なるべくみんながハッピーになれるかも」と思うアイディアを沢山出して何度か吉川醸造の合頭社長さまとじっくり話し合ったんですね。例えば、「雨降」と書いて、「UKOU」と読ませるのはいかがですかと。そうすれば、阿夫利山は、元々は「雨降り山」から転じていると我々と同じルーツである事を伝えられるし、海外のAFURIの店舗でも吉川醸造さんの日本酒を同じ水源の仕込み水を使っている同郷の日本酒として全面的に推せますし。共にタッグを組んで世界に打って出ましょう!などなど、様々な提案をしましたが、結局受け入れては頂けず平行線で終わってしまって。商標侵害されているという何ともネガティブなスタートのご縁ですが、私としては、「雨降り山、転じて阿夫利山」だけに、なんとか「雨降って地固まる」となれないものかなと散々可能性を探ったつもりでした。という経緯があり、対話を尽くした上で、本当にやむなくですが裁判所の判断を仰ぐ事にしたのです。ざっくり言うとそう言う事です。ちなみに、我々がAFURI名義で進めていたり準備しているプロジェクトは他にもあります。それはコーヒーだったり、クラフトビールだったり、それ以外にも幾つかあって、その為に必要な商標を必要な分だけ登録しています。コロナ禍の3年は、大きな負債を背負う事になり、中々プロジェクトを進める事は出来なかったけど、それぞれ順々に再始動してます。先方と話をさせていただいてから一年近く、毎日、家の窓から阿夫利山を仰ぎ見ては、自分は傲慢なのだろうかと自問自答を繰り返しました。でも、何度考えても、我々はビジネスのルールに則った正当な手続きを踏んでるだけなんですよね。毎朝、お水を変えてご挨拶をしている阿夫利神社の神様のお札の前でも、「おれ胸張って居られるな」と思うんですけどね。どうなんでしょう? 私、間違ってるでしょうか? そもそも、名称や言葉は、全ての人が日常生活においては制限なく使えるものであるのが原則ですね。ただし商取引の際に、消費者が商品やサービスを誤認しない様になど、例外として名称の独占排他権が認められています。それがこの商標権ですね。ネットでは、地域の名称である「あふり」を独占するなんてとんでもない! と言う事になってますが。我々は、新しいビジネスを始める際に、為すべきプロセスとして必要な分だけ商標を取得している訳で、網羅的に独占する意図がある訳では無いです。商標を取るのにはそれなりにお金も掛かりますし。何より、商標ゴロみたいな無粋なことはしたくないですし。それに「八海山」とか「高千穂」とか、地域の名前だけど、商標として登録されてますよね。小さい頃から阿夫利山を仰ぎ見て育ち、小中高と、「阿夫利」という名が、全て歌詞の1番の冒頭部分にある校歌を誇らしげに歌い、嬉しい時も悲しい時も、晴れの日も雨の日も、幼少期も思春期も青春期も、いつも静かに、しかし力強く、目の前に鎮座している阿夫利山。20年前、東京の恵比寿の地でAFURIをラーメン店の屋号にした時は、我々地元の人以外にはほとんど知られていなかった阿夫利山を、「おれの育った街には、こんなにも威風堂々とした世界にも誇れる、美しくて格好良くて最高に美味しい天然水の湧き出る山があるんだぜ」って、みんなにもっと知って欲しくて、ラーメン店AFURIとして微力ながら一生懸命アピールしてきた自負はあって。今回の件は、全くポジティブなカタチではないけれど、皮肉にも阿夫利山がメジャーになってきたことの証左であると、阿夫利山を愛してきた一人の男として、なんとも複雑な気持ちです。ホームページなどへの掲載文は、今日明日で弁護士、弁理士さんとしっかり打ち合わせして、早急に声明を出したいと思います。AFURI株式会社 代表取締役 中村比呂人」
話し合いは平行線に?
当初、AFURIは吉川醸造と対話を進めていた。たとえば「雨降」と書いて「AFURI」ではなく「UKOU」にしてはどうかと提案するなどしていた。しかしそれを吉川醸造は受け入れず、話し合いは平行線に。いろいろ手を尽くしたものの「本当にやむなくですが裁判所の判断を仰ぐ事にした」ということだろうか。
阿夫利の名を世界に広める展開ができれば
今回の一見、すでに歩み寄りを進め、お互いを高めるための提案をしてきたというAFURI。どのような結末を迎えるかは現時点でわかせないが、結果として両社が痛むことなく、阿夫利の名を世界に広める展開ができればと心から願う。
※記事画像はAFURI株式会社代表取締役中村比呂人さんの公式Facebookより