東京の中心でアルパカのモフモフまみれヒーリング(辛酸なめ子)

  by 辛酸なめ子  Tags :  

アルパカというのは、どこか遠くの動物園か牧場にいるイメージがあります。会いたいと思っても会えない、ましてや触れることなんてそんなにできないだろうと……。でも、そんなある日、知人のインスタに、神楽坂でアルパカと触れ合っている写真がアップされているのを発見。「アルパカふれあいランド」という素敵な施設があることを知り、さっそく向かいました。

運営しているのは「八ヶ岳アルパカ牧場」。アルパカニットや雑貨を扱う「アルパカワールド」の隣に「アルパカふれあいランド」をオープンしたようです。東京の真ん中、神楽坂に、八ヶ岳からはるばるアルパカたちが来てくれたのでしょうか。

まず、ネットで予約して、予約時間に現地へ。チケットは「アルパカワールド」で購入。モフモフのニットやアルバカのぬいぐるみが並んでいます。冬だったら買いたいところでした。アルパカグッズに囲まれて、全身アルパカ受け入れ体勢に。チケットは大人30分1000円(平日)~1200円(土日祝)です。

「アルパカワールド」店内で、注意事項の動画を拝見。「大きい声を出したり走ったりしない」「エサをあげる時はなるべく平等に」などの注意をインプットして、手を洗ってからいよいよアルパカと対面です。

中にいたのは、薄い茶色のアルパカと、毛の一部がハートにトリミングされた濃い茶色のアルパカの2頭。薄い茶色の子はさつきちゃん、ハートのトリミングはあかねちゃん。両方2018年生まれの女の子です。顔はラクダっぽいのですが、平和な微笑みを浮かべています。そして期待以上のモフモフ感が。店内にはドリンクコーナーもありますが、30分はあっという間。制限時間内、できるだけアルパカとふれあいたいです。

「2頭は毛質が違うので、なでて比べてみてください」とスタッフの方に言われて触わってみると、さつきちゃんはさらさらしていて、あかねちゃんはモワモワした手触り。触っても穏やかに受け入れてくれますが、背後に立つと蹴られることがあるので要注意だそうです。ちなみに、おとなしくてふれあい体験ができるのはメスだからで、オス同士の場合は荒ぶって喧嘩して流血沙汰になることもあるとか。

アルパカのボディランゲージについての説明も貼られていました。喜びモードはスキップや、しっぽを立てる。危険モードは頭を上げる、つばを吐く。リラックスモードは座る、前足を出す、横になる。ケンカの時は下唇が垂れる、など。滞在中、つばを吐かれなくて良かったです。

エサやり体験もできました。手に乗せるとかなりの勢いで吸引し、口に入れていました。吸盤のような感触が病み付きになりそうです。

そのあとは、ロープをフロスのように使う様子も。さつきちゃんの趣味は「ロープはむはむ」とプロフィールに書かれていましたが、実際に歯の間にロープをひっかけてこすっていて、健康意識が高いです。ブラシでブラッシングもさせていただきました。毛の厚みがあって、保温効果が高そうです。

そうしているうちに、あかねちゃんが部屋のすみに行って、立ったままフリーズ。もしかして……と思ったら、大と小を排泄していました。気持ち良さそうな表情だったのが印象的です。生き物にとって本能的な快楽なのでしょうか。

30分の体験時間が残り少なくなってきましたが、アルパカたちは誰かエサを隠し持っていないか目を光らさせていました。手をパーにして持っていないことを教えないとあきらめません。後ろ手にしているとエサがあると思って寄ってきます。

「人間に懐いているんじゃなくて、エサが好きなんです」

というスタッフの方の説明に、現実に戻りました。いっぽうで、何度も来る人を覚えるとも聞いたので、今はただのエサ目当てかもしれませんが、いつかアルパカを振り向かせたい……そんな夢が芽生えました。

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。