怒りを通り越して、思わず笑ってしまった中国高速鉄道事故。

  by 坂井・ボーノ・哲也  Tags :  

国家の威信を賭けた中国の高速鉄道。しかし、追突事故を起こし、多数の死傷者を出してしまったことは皆さんご承知の通りだ。この事故で亡くなられた方々には心からご冥福申し上げるが、その一方で、中国当局のあまりにいい加減な言動には怒りを通り越して、不謹慎ながら思わず笑ってしまうものも多い。今回の記事では、日本人の常識ではおよそ考えも及ばない中国当局の”名言”にスポットを当ててみたいと思う。それでは早速。

救援活動を打ち切った後に幼児を発見、救助したことに対して「奇跡」と一言で済ませた王勇平報道官に対して批判が集中。「責任者が作った奇跡はいらない」「追突したことが奇跡」「この国は奇跡だらけだ」といった書き込みが相次いだ。

何が「奇跡」だ! 鉄道部記者会見に批判コメント2万件―中国 (サーチナ) – Yahoo!ニュースより
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110725-00000034-scn-cn

「追突したことが奇跡」というコメントに優秀賞を授けたい。

王勇平報道官は、車両を埋めた原因については以下のように説明を受けているという。「当時の現場の状況は複雑で、足元は泥沼だったため、救援作業が非常に困難をきたし、またほかの車両にも処理を行わねばならず、列車先頭部分を土に埋め、救援作業をしやすくした。」
 王勇平報道官は、「私が受けた説明はこれだ。あなた方が信じるか否かは自由だが、私自身は信じる」と述べた。

中国、車両の埋立は証拠隠滅ではない 愚かな質問と切り捨て(サーチナ) – livedoor ニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5732936/

なんと、先頭車両は足下の補強する為に使用されていた! (もっともこの後、引き上げられるのだが・・・)
そして、最後の方の王勇平報道官の「私は信じる」とのコメントを聞いて、思わず「あーあーあー、聞こえない、聞こえない」と耳をふさいでいる子供の姿を想像してしまうのは筆者だけであろうか?

 

さて、ここからは少し笑えない話。事故が起こって一番最初に報道された死亡者数が、35人以下であったことを皆さん覚えておられるであろうか? 実はこの”35人”という数字には意味があるらしい。

事故後、「35人は訳あり数字だ」と書き込むユーザーがいた。「今回の高速鉄道は35人死亡。河南省平頂山の炭鉱事故も35人死亡。重慶市の暴雨による死者も35人。雲南省の暴雨被害も死者35人。『35』のカラクリを教えよう。実は、死者36人以上の事故が起きた場合、市の共産党委員会の書記が更迭されることになっている。そのため、事故が起きた当初から死亡人数は35人以下と決まっていた」

<高速鉄道事故>「死者は35人どころではない」 中国政府、情報操作体質あらわに – (大紀元)
http://www.epochtimes.jp/jp/2011/07/html/d31775.html

今回の高速鉄道の事件は全容を隠しきれないと諦めたのか、死者の発表数が増えてきているが、それにしてもどうだろう?実にもっともらしい話で、流石にこの話は笑えない。

 

中央集権の国家体制、成果を急ぎすぎた故の起こるべくして起こった事故、など、今回の高速鉄道事故に対しては、色々な批判があるが、ウェブの住人を自認する筆者が強く感じたのは、ネットが中国当局を大きく動かした、ということ。中国でのネット検閲は非常に厳しいことで知られているが、それでも今回の事故に関しては、ウェブ上で中国の著名なキャスターや作家が非難の声明を発表したらしい。厳しい検閲によって得られる情報に偏りがあっても、それでも中国内でしっかりネット文化が根付きつつあることだけは間違いない。

インターネットの功罪は色々あろうが、今回は、どんなことでもネットの前ではもはや隠し立ては出来ない、というインターネットの特性が、事態を明らかにするのに、とても役に立ったと思う。事故のわずか1日半後に運転再開、というやはり日本では考えられない中国でのニュースが伝わってくる。それでも、中国当局は、今回の事故を通じて、今後、世界の目のみならず、中国内においても重大な事件や情報を隠蔽するのは事実上不可能である、ということを痛感したのではなかろうか。今回の事故の教訓が、情報公開という正しい方向に向かうべく、中国当局にとって苦い教訓とされることを切に願う。

※冒頭の写真はイメージです。
鉄道フリー写真~新幹線~
http://www.railstation.net/sozai/kabegami.html

ウェブ・トレンドをやぶにらみしながらも、ほぼ脊髄反射的にリブログを繰り返すタンブリスト。現在、ウェブライターにありがちなオタクなイメージを払拭すべく、足繁くバッティングセンター、市民プールに通う。肉体的な成果はまだなし。

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